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  アメリカ合衆国学会旅行記 

-VPD国際シンポジウムとNationwide children’s hospital-手塚征宏


 2016年9月16日、17日とアメリカ合衆国オハイオ州コロンバスで開催された、第1回鼻咽腔閉鎖機能不全の国際シンポジウムに中村教授とともに参加させていただいた。自分にとって、非常に新鮮で、有意義な体験になった。
 2016年4月、年度が替わりあわただしく日々の生活に追われているある日に、中村教授から「アメリカへ行こう」と声を掛けられた。以前から中村教授とは本場の治療をみるためにアメリカへ行きたいという話はしていたので、今回も「そうですね〜」と軽い返事で終わるかと思ったが、手には国際シンポジウムのお知らせがあった。ポスター発表でいこうとなり、急いで抄録を作り、締切ギリギリで提出。その日から、楽しみと不安とが混じったソワソワした気分で9月の本番まで過ごさなければならなかった。
 今回訪れたのは、アメリカ合衆国オハイオ州、コロンバス。コロンバスはアメリカの中西部、五大湖のエリー湖に接するオハイオ州の州都で、整備されており、非常に住みやすい印象の街だった。中心部のダウンタウンは、きれいな建物が多く、レストランもおしゃれでご飯も非常においしかった。アメリカ合衆国には初めて行ったのだが、とにかく広かった。島国の日本では感じることのできない広大な土地が広がる感覚を実感することが出来た。ちょうど大統領選の直前で、空港にはトランプとクリントンの等身大パネルが至る所に飾られていて、いかにもアメリカらしいなあと感じた。
 今回参加したシンポジウムは、Nationwide children’s hospitalの形成外科の医師、言語聴覚士が中心となって、開催しているシンポジウムであった。アメリカの病院や研究施設は、お金持ちの企業や事業家たちが出資して、その企業の名前を病院の名前にしているところが多いのだが、このNationwide children’s hospitalも同様であった。コロンバスの中心地にあるThe Westin Columbusという歴史あるとても立派なホテルでシンポジウムは開催された。参加者は、アメリカはもちろんのこと、ヨーロッパ、アジアなど世界からの参加者がおり、総勢200名ほどであった。

 
立派な会場で                   シンポジウム会場にて


 私は、ポスター発表をさせていただいた。今回のテーマは鼻咽腔閉鎖機能不全であったので、鼻咽腔閉鎖機能不全の新たな評価法の試みとしての音声可視化についての発表を行った。ポスターは全部で8題あり、質疑応答の時間がしっかりとられており、ポスターの前に立って、質疑応答を受けるというスタイルであった。当たり前であるが、英語で質問されるので、英語で返事をしなければならない。ここでは、自分の英語のつたなさを改めて実感した。質問の内容を理解して、返事をするときに頭に回答は浮かぶのに、それをしっかり英語に翻訳して話すことが、こんなに難しいとは。。。とてももどかしい場面もあったが、同じテーマで研究をしている方々からの質問は、とてもうれしかったし、これからの自信につながった。

  
 
質問に必死に答える・・・                ご飯もおいしかった


 鼻咽腔閉鎖機能不全についてのシンポジウムであり、主に口蓋裂術後の鼻咽腔閉鎖機能不全の治療についての講演が多かった。また、先天性の鼻咽腔閉鎖機能不全を呈する22q11.2欠失症候群についても講演があった。参加者は形成外科医、口腔外科医、言語聴覚士、看護師など様々な職種が集まっていた。日本において、口蓋裂術後に鼻咽腔閉鎖機能不全を呈する症例があれば、その場合スピーチエイドなどの補綴物を作製したり、再口蓋形成術や咽頭弁形成術などの外科的処置を行うという流れがスタンダードであるが、今回のシンポジウムに参加して印象に残ったことは、アメリカにおいて口蓋裂術後の鼻咽腔閉鎖機能不全がある場合は、第一選択で咽頭弁形成術を行うということである。そして、咽頭弁形成術を行ったあとの合併症として、鼻呼吸が出来なくなることが挙げられるが、いかにその合併症を少なくするか、その合併症が出たらどうするかの議論が繰り広げられており、咽頭弁形成術を行うという事がゴールデンスタンダードであった。  
 鼻咽腔閉鎖機能不全に対する治療法については、日本でも様々な意見があるところではあるが、このシンポジウムで得た知見も参考に今後の臨床に役立てていきたいと思う。  

 また、今回のアメリカ滞在の期間中に、シンポジウムを主催されたNationwide children’s hospitalも見学する機会を幸運にもいただけた。企業が出資して、設立された子ども病院であり、州外からも患者さんが集まるとのことであった。50以上の専門外来が存在し、非常に大きな病院であった。 こども病院であるので、病院のいたる所に子どもが喜びそうな工夫がなされ、子どもたちが病院に来ることが嫌がらないようにされていた。

 
病院のロゴ、蝶がおしゃれ                至る所にオブジェがあり、楽しい

 
 今回我々は形成外科の口唇口蓋裂クリニックを1日見学させていただいた。一番驚いた点は、仕事が完全に分業されており、各専門職種が自分の臨床業務だけに集中できるという点であった。受付、患者導入、予約などは専門スタッフが行ってくれ、それぞれの個室があり、その部屋で診察、治療を行う。診察の様子を見学させていただいたが、診察の個室も非常に広く、患者さんも緊張することが少なく診察を受けられるだろうなと感じた。臨床については、大きく日本と変わる点はなかったような気がするが、職員同士のコミュニケーションが非常に密であるなと感じた。大学での臨床だと、会議など別の用事があり、なかなか臨床そのものに集中できない場面もあるが、今回の見学では、それぞれの職種が落ち着いて仕事をしており、常に患者中心であり、コミュニケーションを密に取ることで、一番ベターな治療方針をチームみんなで考えているという印象であった。もちろん、1日の最後にはカンファレンスが行われ、その日に受診した患者を再度、チーム全員で考える。非常に素晴らしい流れだと思った。

 
コミュニケーションが大事!!               形成外科のKirschner先生と

 
 今回、初めてアメリカ合衆国で開催されるシンポジウムに参加し、さらに病院も見学させていただいた。改めて痛感したのは英語の大切さと普段我々が行っている臨床も負けていないぞという気持ちであった。日本を飛び出して、他の国に来ると、毎回いろいろな出会いがあり、そして様々なことをたくさん考えさせてくれる。今後も常に世界に目を向けて、幅の広い考えで物事を見れるようになりたいと思う。このような機会を与えてくださった教授を始め、医局員の先生方に感謝して、今後の大学生活に役立てていきたいと思う。

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