Science 344 (6188):1154-1156, 2014
http://www.sciencemag.org/content/344/6188/1154.abstract
Marine teleost locates live prey through pH sensing.(海産硬骨魚はpH変化を感じて生きた餌を探す)
John Caprio1, Mami Shimohara2, Takayuki Marui3, Shuitsu Harada4, Sadao Kiyohara2
1Department of Biological Sciences, Louisiana State University, Baton Rouge, LA 70803, USA.2Graduate School of Science and Engineering, Department of Chemistry and BioScience, Kagoshima University, Kagoshima 890-0065, Japan.3409 Koyocho, Sukagawa, Fukushima, 962-0401, Japan.4Department of Oral Physiology, Graduate School of Medical and Dental Sciences, Kagoshima University, Kagoshima 890-8544, Japan.
底棲の海産硬骨魚であるゴンズイのヒゲや胴体に分布する神経線維が、pH8.2~8.4の環境海水中で、0.1というごく僅かなpHの低下に鋭敏に応答 することを発見した(図1B)。一方、ゴンズイの餌となるゴカイの呼吸によって海水のpHは僅かに低下した(図2A)。これらの知見に基づいて行動実験を 行い、ゴンズイがpH変化を感知してゴカイを捕食することを証明した(図2B)。他の海産底棲魚も、このpHによる捕食方法を用いている可能性がある。
環境海水がpH8.2~8.4のときに観察されたpH変化に対する鋭敏な神経応答は、pH7.9以下の海水中では見られなかった。産業革命以来、海洋の pHは8.2から8.1程度まで低下したと推定されている(IPCC, 2013)が、地球規模で進行している海水の酸性化が更に進めば、海産底棲魚のpH感受性を利用した捕食システムを阻害する可能性がある。
図1 A: ゴンズイ。B: ゴンズイの触髭をpH8.23の海水に順応させて、pH8.17, pH8.30, pH8.17で刺激した時(図中のopen box)に、pH感受性を示す単一神経線維から得られた応答。(Science Fig.1から)
図2 A: 生きたゴカイ(worm)の入ったU字管(U-tube)排出口の海水のpH変化(青), 排出口から1.5 cm離れた位置のpH変化(赤)。B: 実験セットアップ, U-tube ゴカイの生息穴に見立てたガラスU字管, U-tubeの片方から環境水よりごく僅かpHの低い海水 (TSWa)をポンプで注入すると、ゴンズイは生きたゴンズイの入ったU-tube排出口と同様に捕食行動を示した。(Science Fig.2から)