グラム陽性菌の抗菌性因子耐性獲得機構に関する研究

松尾 美樹 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 発生発達成育学講座 口腔微生物学分野・講師

概要

 グラム陽性菌であるう蝕原性菌と黄色ブドウ球菌について、細菌特有の情報伝達システムである二成分制御系因子 (TCS) に着目し、本システムがヒト由来抗菌性因子(先天免疫機構であるディフェンシン等)やヒト常在細菌由来抗菌性因子(バクテリオシン)に対する耐性獲得機構における TCS の役割を検証したものです。

 本研究から、う蝕原性菌と黄色ブドウ球菌はTCSを介して先天性免疫機構や常在細菌の産生するバクテリオシンに対する耐性を獲得することで生体への感染を果たすこと、う蝕原性菌と黄色ブドウ球菌の間で、TCSの役割が異なること等を明らかにした。これまでの病原性細菌の研究は、個々の病原性因子の解明を目的とした研究が多い一方、ヒト-病原性細菌とのinteractionについての知見は多くなかった。そこで、私たちが着目した点としては、各細菌が生体中で病原性を発揮するためには、その前段階で病原細菌が直面するであろう、ヒト免疫機構や常在細菌による抗菌性物質に対する耐性を獲得することで初めて感染を果たすことができるのではないかと考えた。

【本研究の意義・重要性】病原性細菌の病原因子の解明がなされている中、生体中での病原性を発揮するまでに病原性細菌が持つ生体定着メカニズムを理解することで、病原細菌による感染症の予防が可能になることである。また、本研究にはもう一つ大きな目標があり、一般的にヒトの生体中には多くの常在細菌が定着しているが、それらの細菌がなぜ、どのように生体への定着をはたしたのか、そしてその意義を解明できると考えている。


gakkai20150413

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