骨増生に向けた顎骨骨髄液採取と間質細胞培養法

西村 正宏 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 顎顔面機能再建学講座 口腔顎顔面補綴学分野・教授

概要

 インプラント埋入において、骨欠損が著しい場合、多くのケースで歯槽堤の増生が必要になる。腸骨骨髄間葉系幹細胞は近年様々な組織再生医療に用いられているが、顎骨の増生に必ずしも適した細胞ソースであるとは考えにくい。顎骨骨髄から採取・培養される骨形成能をもつ間質細胞は、歯科医師が口腔外から細胞を採取しなくて済むことから、顎骨を再生するための有力な細胞ソースとなり得る。しかし、顎骨内の骨髄量は極めて少なく、その採取法と培養法については不確実な点が多い。また、個人差や採取する部位によって培養される細胞の質は多様と考えられる。

 そこで著者らは、インプラント埋入時に、新たな侵襲なしに、ごく少量の顎骨骨髄液を採取する方法を考案し、2例の骨髄液から顎骨骨髄間質細胞を増殖させ、増殖した細胞の表面抗原と石灰化能を調べ、in vivoでの骨形成能を調べた。

 その結果、著者らはインプラント埋入時の僅かな骨髄液から、73~77日間の培養で1.6~6.3 x 1011個の細胞を得ることに成功した。2例の骨髄液の採取部位のHounsfield値ならびにin vitroでの石灰化の早さは異なり、また細胞表面抗原の発現解析ではHLA-DR発現率が若干異なるたが、両細胞とも免疫不全マウスの頭頂骨上に骨増生を認めた。
【本研究の意義・重要性】本論文では、超低侵襲に得られた顎骨骨髄液由来間質細胞がin vitroでの石灰化能に関わらず、in vivoでは旺盛に骨を形成する可能性を示した、という点で意義深く、今後の顎骨再生医療の発展に寄与するものと期待される。


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図:ラット間葉系幹細胞とアパタイト顆粒を用いて、ラット頭頂骨に増生させた骨の組織像。下方の赤い一層が本来の頭頂骨の部分。常に5mm程度の骨を増生させることに成功している。

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