各年度の自己評価・点検書ウェブ公開版
はじめに
鹿児島大学歯学部は、2022年(事業開始初年度)に歯学教育評価を受審しまして、公益財団法人 大学基準協会(JUAA)から基準適合していることを認定されました。認定後も毎年度の点検・評価報告書を取りまとめて公開することとしておりますので、この度、2023年度分を公開いたします。
本学歯学部の自己点検・評価書の外部公開により、国立大学歯学部としての本学歯学部の教育活動の水準について国民への説明責任を果たし、ひいては本学の歯学教育の質の保証とさらなる向上、管理運営の効率化等に繋がることを期待しております。
鹿児島大学歯学部長(2024~2025年度) 後藤 哲哉
鹿児島大学歯学部 自己評価委員会 委員長 田松 裕一
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1 使命・目的
●項目: 使命・目的
評価の視点 | 評価のポイント | |
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1-1 | 歯学教育(学士課程)が担う基本的使命及び当該歯学教育(学士課程)を設置する大学の理念・目的を踏まえ、養成すべき人材像を明らかにした歯学教育(学士課程)の目的を設定していること。 |
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1-2 | 歯学教育(学士課程)の目的を教職員及び学生に周知し、かつ広く社会一般に公表していること。 |
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<現状の説明>
【1-1】歯学教育(学士課程)が担う基本的使命及び当該歯学教育(学士課程)を設置する大学の理念・目的を踏まえ、養成すべき人材像を明らかにした歯学教育(学士課程)の目的を設定していること。
本学では、学校教育法第83条に規定された大学一般に求められる目的に則し、学則第2条第1項に「本学は、広く知識を授けるとともに深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させ、もって学術文化の向上に寄与する有為な人材を育成することを目的とする。」と目的を明示している。南九州の地理的特性と歴史的伝統を鑑みて2007年11月に制定した「鹿児島大学憲章」では、「鹿児島大学は、日本列島の南に位置し、アジアの諸地域に開かれ、海と火山と島々からなる豊かな自然環境に恵まれた地にある。この地は、我が国の変革と近代化を推進する過程で、多くの困難に果敢に挑戦する人材を育成してきた。このような地理的特性と教育的伝統を踏まえ、鹿児島大学は、学問の自由と多様性を堅持しつつ、自主自律と進取の精神を尊重し、地域とともに社会の発展に貢献する総合大学をめざす。」としている。また、学則第2条第3項では「本学は、学部、学科又は課程ごとに、人材の養成に関する目的その他の教育研究上の目的を各学部等の規則において定める」としている。
本学部は、1977年の学部開設以来、全人的歯科医療を実践できる豊かな人間性を身に付けた歯科医師育成を目標に、「歯科医療人である前に良識豊かな人間であれ」を学部の理念に掲げている。これら「鹿児島大学憲章」および「学部の理念」に基づき、国民の求める歯科医師養成を行うために、歯学部の教育目標として、以下の3つの柱を定めた。
- 1)全人的歯科医療を実践しうる歯学分野における幅広い知識と創造性に富む歯科医師および歯科医学教育者・研究者の育成
- 2)地域医療に貢献しうる幅広い識見と人間性豊かな使命感にあふれる歯科医師および歯科医学教育者・研究者の育成
- 3)国際社会においても卓越した貢献をなしうる歯科医師および歯科医学教育者・研究者の育成
この3つの柱の教育目標に基づき、全人的歯科医療を身に付け、地域医療および国際社会に貢献できる歯科医師および歯科医学教育者・研究者の育成に取り組んでいる。よって、本学部の教育目標は、本学の目的および「鹿児島大学憲章」と連関した明確なものであり、また、国民の求める歯科医師養成を行うという観点からも適切なものといえる。
【1-2】歯学教育(学士課程)の目的を教職員及び学生に周知し、かつ広く社会一般に公表していること。
上述の「鹿児島大学憲章」、「鹿児島大学歯学部の教育目標」等は、医歯学総合研究棟1(歯学系)および講義実習棟等の学内各所に掲示し、広く学生、教職員および来訪者等の目に留まるようにしている。
また、「鹿児島大学憲章」、「鹿児島大学歯学部の教育目標」、「歯学部のミッションの再定義」については、本学および本学部のホームページ上に公開し、教職員、学生および広く社会一般に公表している。
これらの教育目標を実際のカリキュラム編成に結び付けるために、学部では6年間の学部教育終了時の学修成果をコンピテンス、コンピテンシーとして制定しており、教育目標と各授業科目の関連性をパフォーマンスレベルマトリックスとして紐づけを行っている。これらについては本学教員および学生全員に配布される「歯学部修学の手引き」に掲載するとともに、ホームページのURLを記載することによって周知を図っている。さらに、学生には年度初めのオリエンテーションにおいて、歯学部教育委員会からの指示に従い学年担任から説明と周知を行っている。
上述の周知および公表による効果を把握するため、教職員および学生に対して学部教育に関する理解度調査を実施した。理念・教育目標に関する項目等を含む調査結果における平均正答率は、教員95%、学生95%(2023年)に達しており、理念・教育目標は構成員におおむね周知されていることが判明した。これらの調査結果は歯学部教育委員会および歯学部自己評価委員会において分析・検討が進められ、今後の理解度の向上に向けた対応に活かされている。また、この理解度調査は今後定期的に実施していく予定である。
●項目: 目的の検証
評価の視点 | 評価のポイント | |
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1-3 | 歯学教育(学士課程)の目的の適切性について定期的に検証を行っていること。 |
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<現状の説明>
【1-3】歯学教育(学士課程)の目的の適切性について定期的に検証を行っていること。
1)ミッションの再定義
国立大学法人第2期中期目標期間の2014年に、国立大学改革プランの一環として文部科学省と本学が協議を行い、教育成果、研究水準、産学連携等の客観的データに基づいた「歯学部のミッションの再定義」を策定した際、本学部の教育目標の検証を行い、その適切性を確認した。再定義されたミッションにおいては、歯学部の教育目標の3つの柱に基づいた以下の条文を掲載した。
「鹿児島大学の大学憲章等に基づき、自主自律と進取の精神を有し、さらに「歯科医療人である前に良識豊かな人間であれ」との学部理念を基盤として、全人的歯科医療実践能力、地域社会に対する貢献の使命感、更には国際社会でも活躍しうる素養を有する歯科医師および歯学教育者・研究者の養成を積極的に推進する。」
2)歯学教育評価
本学部は、大学基準協会が実施する歯学教育課程(学士課程)を対象とした第三者評価「歯学教育評価」を2022年10月に受審し、「適合」の評価を受けた。教育目的についての評価概評として、①「鹿児島大学憲章」に基づいた、個性化と多様性を持った目的と連関した 適切な教育目標が設定されている、②目的の周知については、「修学の手引き」への記載や学内掲示を通して学生への十分な周知が行われており、学部HP等を通じて一般へも公開されている、③周知活動の効果については、学生と教員を対象とする理解度調査を通じて検証しており、教員および学生の正答率は良好な結果を得ている、との評価を得た。一方、今後の提言として、社会一般への周知効果の十分な検証を望まれた。
3)学部教育活動の定期的検証
学部の教育目標の適切性は、教育目標に沿って行われる学部教育活動の定期的な検証によって確認されている。
学内のPDCAサイクルを回す制度として部局等ごとに行う自己点検・評価である「部局等評価」に加えて、歯学部では、教育研究活動等に関する自己点検・評価を行うことを目的として自己評価委員会を置き、定期的に教育活動の自己評価を行っている。自己評価委員会には外部有識者も構成員として参画しており、実質的な機能強化が図られている。自己評価においては、教育の評価項目として、「教育目標に関する事項、教育の実施体制等に関する事項、学修成果に関する事項、学生支援に関する事項」等について自己点検を行い、教育委員会、FD委員会等の各種委員会にフィードバックして、改善を行っている。また、検討を進める上での支援組織として2018年に歯学部IR室が設置され、必要な情報の収集・提供を行うことで、入試改革に有効利用されている。
また、歯学部の教育研究活動については、全学で開催されている経営協議会で検討・評価されている。本協議会は、学長、大学理事、外部有識者を含むもので、大学内外の広い立場からの意見を聴取することができる。2021年6月24日開催の経営協議会、および8月3日の意見交換会において歯学部についての経営と今後の活動についての検討が行われたが、外部委員からを含め特段の指摘事項は挙げられなかった。
教育目標の適切性の検証に基づく具体的な改善事例としては、次のようなものが挙げられる。
①アウトカム基盤型教育の導入
本学部において2006年度に実施されたカリキュラム改革では、他大学歯学部に比較して過剰気味であった単位数や教育内容を見直し、適正と考えられる体制を構築、運用していたが、教育目標を達成しうる授業科目が一部配置されていないこと、また6年間の教育カリキュラムに対する修正の必要性、特に統合系科目の実施時期の変更の必要性等が指摘されていた。
そこで、2013年度に学生および教員を対象とした学部教育に関するアンケート調査を行い、その結果、さらなるカリキュラム改革の必要性が明らかとなった。
この調査結果を踏まえて、歯学部では2015年度にアウトカム基盤型教育のコンセプトを柱とした新たなカリキュラムを導入し、最終到達目標としての学修成果を明確に示し、一貫した体系的な教育カリキュラムを構築し、多様な歯科医療に対応できる教育プログラムを組んでいる。
②全学3ポリシーと歯学部3ポリシーの一体化の検証
第3期(2016~2021年度)中期計画に盛り込まれた教育に関する目標を達成するための措置として、「全学一体的に地域活性化の中核的拠点としての社会的役割を明確にした入学者受入方針(以下、アドミッション・ポリシー)、教育課程編成方針(以下、カリキュラム・ポリシー)、学位授与方針(以下、ディプロマ・ポリシー)を2017年度までに再構築し、育成する能力が可視化されるようカリキュラムを見直し、カリキュラムマップを完成させる。」という計画が掲げられた。
3つのポリシーの再構築に当たり、国のガイドラインを踏まえて、それらを一貫性のある評価可能な表現に改める等の観点から、全学の教育等企画会議、教務委員会と連携し、全学と歯学部のディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシーおよびアドミッション・ポリシーとの対応関係を精査した。
この結果に基づき、歯学部の3ポリシーの内容を見直し、新たに策定したものを2017年3月に公表した。
③歯学部タレントディベロップメントプログラムWGの新設
教育目標における個性化と多様性を達成する目的で、学生のリサーチマインドの滋養、研究者の育成を目的としたワーキンググループである「歯学部タレントディベロップメントプログラムWG」を2021年に新設し、教育カリキュラム、入試制度の見直しも含めた検討を開始している。
【大項目1の現状に対する点検・評価】
(1)検討及び改善が必要な点
- ①歯学部の自己評価体制による定期的な教育活動の点検において、教育目標における個性化と多様性の視点からは、研究者の育成、大学院進学率等の成果は十分とは言えない。
- ②近年の社会環境の急激な変化に伴い国民から求められる歯科医師像が変化していくことを考えると、外部からの意見も含めての歯学教育の目的の適切性についての定期的な検証は特に重要である。上述のように、2022年度に受審した第三者評価「歯学教育評価」でも社会一般からのフィードバックの充実についての提言を受けた。学部の自己評価委員会に複数の外部有識者を加えることで対応しているが、より広い範囲(年齢層、性別等)からの意見聴取が必要と考えられる。さらには、学生から更なる意見聴取と、それらに基づく改善プランが必要である。
(2)改善のためのプラン
- ①歯科医学研究者の育成を目的として新設された「歯学部タレントディベロップメントプログラムWG」において、学生のリサーチマインドの滋養、大学院進学率の向上へ向けた対策案を、教育カリキュラムと入試制度の見直し、教育目標の適切性の検証も含めて協議中である。
- ②学生、教員、学外の有識者、卒業生がメンバーとなり、歯学部の教育理念、目標、カリキュラム体系等について議論する場を設け、持続的かつ発展的な改善の検討を行っていく必要がある。対策として、教育目的の点検評価を目的として、本学部卒業生を対象とした学部の歯学教育の目的の適切性に関するアンケートを2021年度より開始している。より組織的な実施に向けて、歯学部同窓会への協力を依頼しており、今後仕組みの構築を同窓会との共同作業として行っていく予定である。また、地域連携の観点から歯科医師会との意見交換会も行う。
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2 教育の内容・方法・成果
●項目: 学位授与方針及び教育課程の編成・実施方針
評価の視点 | 評価のポイント | |
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2-1 | 歯学教育(学士課程)の目的に基づき、修得すべき知識・技能・態度など期待する学習成果を明示した学位授与方針を策定していること。また、これを踏まえて教育課程の編成・実施方針を策定していること。 |
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2-2 | 学位授与方針及び教育課程の編成・実施方針を教職員及び学生に周知し、かつ広く社会一般に公表していること。 |
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<現状の説明>
【2-1】歯学教育(学士課程)の目的に基づき、修得すべき知識・技能・態度など期待する学習成果を明示した学位授与方針を策定していること。また、これを踏まえて教育課程の編成・実施方針を策定していること。
本学部では、鹿児島大学憲章、鹿児島大学学生憲章、鹿児島大学教育目標、鹿児島大学生涯教育憲章および鹿児島大学の基本目標(中期目標)に基づき、「歯科医療人である前に良識豊かな人間であれ」という理念のもとに、本学部の教育目標を定め、学位授与方針(ディプロマ・ポリシー)を策定している。
本学部は、次の3項目の教育目標を掲げている。
- (1) 全人的歯科医療を実践しうる歯学分野における幅広い知識と創造性に富む歯科医師および歯科医学教育者・研究者の育成
- (2) 地域医療に貢献しうる幅広い識見と人間性豊かな使命感にあふれる歯科医師および歯科医学教育者・研究者の育成
- (3) 国際社会においても卓越した貢献をなしうる歯科医師および歯科医学教育者・研究者の育成
学位授与方針は上記教育目標に鑑みて次の6項目を掲げており、歯学教育(学士課程)の目的との整合性をとっている。
- 1. 良識豊かな人間性を身につけ、患者、患者家族、医療チーム構成員を尊重し、適切なコミュニケーション能力を持って医療を実践するとともに、歯科医師としての職責を認識することができる能力
- 2. 歯科を中心とした医療の基盤を構成する基礎、臨床の各領域とともに、自然科学、人文社会学分野を含めた幅広い知識を有し、必要に応じて応用することができる能力
- 3. 全身的、精神的、社会的状況に配慮した、安全で効果的かつ合理的な患者中心の歯科医療を実践することができる能力
- 4. 離島を含めた地域および国際社会における歯科医療の多様性を理解し、地域、国際社会において幅広く活動する素養を身につけるとともに、歯科医学、医療の社会的役割を理解することができる能力
- 5. 生涯にわたって自己研鑽に取り組むための基礎となる、自らの行動を論理的、批判的に振り返ることができる能力
- 6. 歯科医学における研究の重要性を認識し、各種情報を正しく評価するとともに、創造性に富む素養を身につけて、新たな情報を生み出すことができる能力
これらに基づいて期待する学修成果(アウトカム)を5つのコンピテンス(Ⅰ.歯科医師の職責とコミュニケーション、Ⅱ.歯科医学および関連領域の知識、Ⅲ.医療の実践、Ⅳ.地域医療とヘルスプロモーション、Ⅴ.生涯学習と科学的探究心)として設定し、さらにそれぞれのコンピテンスに対して合計29のコンピテンシーを関連付け、より具体的な学修成果を明示している。
本学部では、2015年度より「アウトカム基盤型教育」を導入し、上記5つのコンピテンスで示された学修成果を、6年間の学部教育の最終到達目標としている。この目標に向かって大学入学時から能力の修得レベルに合わせて段階的に学修できるような一貫した教育カリキュラムを構築するべく、教育課程の編成・実施方針(カリキュラム・ポリシー)を策定し、学位授与方針との整合性をとっている。
教育課程の編成・実施方針は、「1.初年次から卒業まで系統性のある教育課程の編成」、「2.目的・目標に応じた方法による教育の実施」、「3.厳格な成績評価の実現」の3項目を柱とし、学位授与方針で定める学修成果へ到達する方略やプロセスを明示している。
【2-2】学位授与方針及び教育課程の編成・実施方針を教職員及び学生に周知し、かつ広く社会一般に公表していること。
学位授与方針(ディプロマ・ポリシー)および教育課程の編成・実施方針(カリキュラム・ポリシー)は、大学全体と学部の両方のウェブサイトに掲載し、教職員や在学生のみならず、保護者および受験希望者等を含む一般社会に向けて周知・公表している。
教員に向けては、教育実施時に用いる「修学の手引き」に学位授与方針および教育課程の編成・実施方針を記載することにより周知している。さらに、教育に関するFD研修会・講演会を毎年3回以上実施し、教育カリキュラムへの理解を促している。
学生に向けては、各年度当初の学年オリエンテーションにおいて、学年担任・副担任が教育カリキュラムの概要と当該年度内に履修する科目内容および学年共通の伝達事項を説明するとともに、学位授与方針および教育課程の編成・実施方針を周知している。
また、教員と学生の両方に向けて、講義実習棟入口の壁に教育目標を記載した銘板を、各講義室の壁に卒業時に身に付けておくべき能力(5つのコンピテンスと29のコンピテンシー)を記載した額を掲示し、目に触れるようにしている。
さらに、新入生に向けて、入学時のオリエンテーションの際に歯学部の教育目標、学位授与方針および教育課程の編成・実施方針等を記載した「修学の手引き」を配布した上で、歯学部教育委員会委員がアウトカム基盤型教育と共に詳細に説明している。
本学部のカリキュラム等の教員と学生に対する周知活動の効果を把握するため、2021年度と2023年度に本学の学習管理システム(manaba)を利用して、理解度調査を行っている。
●項目: 教育課程の編成・実施
評価の視点 | 評価のポイント | |
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2-3 | 教育課程の編成・実施方針に基づき、次に掲げる事項を踏まえ、歯科医師として求められる基本的資質・能力を醸成するための教育課程を体系的に編成し実施していること。 (1)学士課程教育として、幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い、豊かな人間性を涵養するための科目を適切に配置していること。 (2)歯学教育モデル・コア・カリキュラムの内容を包含していること。 |
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2-4 | 教育課程を実施するにあたって、適切な授業形態や方法が用いられていること。 |
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2-5 | 授業の目的及び到達目標が明示されたシラバスを作成し、それに基づいた授業を行っていること。 |
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2-6 | 歯学教育の実施に必要な教育施設・設備、支援体制が適切に整備されていること。 |
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<現状の説明>
【2-3】教育課程の編成・実施方針に基づき、次に掲げる事項を踏まえ、歯科医師として求められる基本的資質・能力を醸成するための教育課程を体系的に編成し実施していること。
(1)社会の変化に対応できる知識・技能を養成し、学士課程教育として、幅広く深い知識・教養及び総合的な判断力を培い、豊かな人間性を涵養するための科目を適切に配置していること。
<授業科目の体系的配置と可視化>
本学部が定めるコンピテンスを修得し、教育目標を達成するために必要な授業科目を設置するとともに、それらを達成すべき学修成果を反映させた5つのコンピテンスに応じて分類し、教育課程の編成・実施方針に従って適切な授業科目を体系的に配置している。このことにより、全ての科目が、科目間の横のつながりと縦のつながりを密接に持ち、能力の発達段階に応じた順次性に配慮して開講される。教育カリキュラムの体系としては、1~2年次(1期~4期)では歯科医学と歯科医療を学ぶために必要な基盤形成を行い、3~4年次(5期~8期)に歯科医学と歯科医療の実践能力を身に付けるために必要な基盤的知識と技術の修得を、5~6年次(9期~12期)に歯学生としての基本的実践能力の修得を行うようになっている。以上の内容を可視化するため、カリキュラムマップを策定している。
<準備教育の充実>
準備教育は、1年次に共通教育および専門基礎教育で実施している。
共通教育は、総合大学の特徴を生かし、全学部共通の膨大な科目群の中から、必修科目として「初年次セミナーⅠ・Ⅱ」や「情報活用」等の初年次教育科目および「英語」や「異文化理解」等のグローバル教育科目が16単位、選択科目として「初修外国語」「理科実験科目」を含む人文・社会・自然科学分野の教養基礎科目が12単位の計28単位(外国人留学生は日本語科目の2単位が加わり計30単位)が卒業要件単位として定められている。
専門基礎教育は基礎教育科目(物理、化学、生物、統計学等6科目)10単位と歯学導入系科目(独自の4科目)7単位が卒業要件単位として定められている。
以上のとおり、教養系科目から歯科医学の導入まで非常に幅広い充実した準備教育となっている。
<独自の教育カリキュラムと特色ある多様な科目群>
教育目標に掲げている「全人的歯科医療の実践」、「地域医療への貢献」、「国際社会での活躍」の各能力を修得するには、モデル・コア・カリキュラムに基づいた科目や従来の講義型授業のみでは必ずしも十分とは言えない。そこで、歯学教育モデル・コア・カリキュラム(平成28年度改訂版)にないアドバンスト・カリキュラムとして、優れた医療人育成に向けた本学部独自の特色ある講義・実習を設けている。これらの特色ある多様な科目群は、本学部が定める5つのコンピテンスの中の「Ⅰ.歯科医師の職責とコミュニケーション」と「Ⅳ.地域医療とヘルスプロモーション」に関して重点的に設けられている。例えば、「コンピテンスⅠ.歯科医師の職責とコミュニケーション」に関わる科目としては、「プロフェッショナリズムⅠ、Ⅱ」や「コミュニケーション学」があり、ロールプレイやシミュレーションによって他者との関わりの中で学修する。「コンピテンスⅣ.地域医療とヘルスプロモーション」に関わる科目としては、「地域体験実習」、「地域医療学実習」、「離島巡回歯科診療同行実習」、「離島歯科医療学実習」があり、地域や離島に赴き、現場の歯科医療を見学することで地域医療を体験する。
<モデル・コア・カリキュラムとアドバンスト・カリキュラムのバランス>
歯学教育モデル・コア・カリキュラムにおける知識ベースの教育内容(授業科目)は、本学部が定める5つのコンピテンスの中の主に「コンピテンスⅡ.歯科医学および関連領域の知識」に含め、教養科目、専門基礎科目、臨床科目と低学年から高学年に向けてステップアップするように配置するとともに、アドバンスト・カリキュラムも並行して主に低学年から中学年にかけてモデル・コア・カリキュラムとのバランスに配慮して配置している。高学年では臨床実習の比重が高まり「コンピテンスⅢ.医療の実践」の占める割合が多くなるが、ここではモデル・コア・カリキュラムとアドバンスト・カリキュラムの両者を総合的に学修する。なお、「コンピテンスⅢ.医療の実践」は高学年のみではなく、「歯科臨床早期体験実習」として初年次から学修できるようにしている。
アドバンスト・カリキュラムには一連の独自科目に加え、非常勤講師による特別講義や科目担当者が触れる最先端の研究の話題等も含まれる。
<リサーチマインドの涵養、グローバル人材の育成>
リサーチマインドの涵養に配慮した教育課程の編成のため「コンピテンスⅤ.生涯学習と科学的探究心」科目群である「歯科医学入門」(1年次)、「研究実践概論」(2年次)、「研究実践」(3年次)を設けている。なお、「研究実践」では学生全員が研究室に配属され研究に携わる。さらに、学生が自主的に研究分野を選択して研究に携わる科目として、1~6年次に「歯学研究Ⅰ~Ⅵ(選択科目)」を配置している。また、グローバル人材の育成に配慮した教育課程の編成のため、2〜5年次に専門英語実践力の習熟や国際的医療活動を学ぶ「国際医療人育成学Ⅰ~Ⅳ」を配置している。歯科の専門用語や簡単な挨拶に始まりロールプレイによる患者への病状説明等英語によるコミュニケーション能力を段階的に身に付けていくことで、実践力のある国際性を身に付けた歯科医師の育成を図っている。これらの科目も「コンピテンスⅤ.生涯学習と科学的探究心」科目群に位置づけられる。
1~6年次に海外の大学で短期研修する「海外歯科研修プログラムⅠ~Ⅵ」を配置し、歯学部教育委員会の海外研修実施部会の指導下、希望する学生に1~2週間程度の海外留学(協定校への派遣)の機会を提供している。学生は、海外の協定校の学生や教員との事前交流(オンライン交流)、協定校での海外研修、事後学修(帰国後レポート作成・研修報告会)を通して国際的な歯科医療、価値観や文化、社会システムの多様性を学ぶ。2023年度は、海外歯科研修プログラムⅡで1名が、Ⅲで13名が、Ⅳで7名が、Ⅴで2名が、Ⅵで6名がインドネシア、マレーシア、韓国、台湾、カナダのいずれかへ渡航した。また、11月26日から12月2日までの7日間、科学技術振興機構の「さくら招へいプログラム」によって協定校であるタイのプリンスオブソンクラー大学の大学院生2名を受け入れた。
<キャリアパスに応じた教育課程>
本学部では編入学の制度を設定していない。他大学を卒業・中退した新入生については、共通教育における既得単位の読替えを行っている。
学生のキャリアパスに応じた教育課程の編成のため、歯学部入学直後に開講される「患者と医療」を設けている。同科目では、歯科医師臨床研修制度を始めとし、将来にわたる歯科医師のキャリアについて解説するとともに歯科医療の社会的な役割について理解を促し、キャリアパスを考える機会を提供している。また、専門科目が始まる時期には、研究者を目指す学生向けに希望する研究室で複数年にわたって研究を継続することができる「歯学研究」を、また、海外での活躍を目指す学生向けに「海外歯科研修プログラム」を用意している。さらに5年次には歯学部同窓会の協力を得て毎年「進路相談会」を開催している。同相談会では、海外で活躍する者や自衛隊に勤務する者、女性歯科医師等ロールモデルとなる本学の卒業生等を招聘し、様々なキャリアを歩んでいる先輩の話を聞く機会を提供している。このように個々の学生の志向に応じたキャリア選択に役立つ情報提供を行っている。
(2)歯学教育モデル・コア・カリキュラムの内容を包含していること。
専門教育科目のシラバスの学修目標には、授業内容に対応する歯学教育モデル・コア・カリキュラムの項目番号を記載し、対応関係を明示している。なお、同モデル・コア・カリキュラムの令和4年度改訂版が令和6年度入学者から導入されるため、今年度中に同版の内容を包含していることの確認作業を実施する。
【2-4】教育課程を実施するにあたって、適切な授業形態や方法が用いられていること。
医療人としての人格形成に必要な倫理観や価値観、コミュニケーション能力を高めるとともに地域医療に対する理解を深めるためには、通常の講義形式での教育だけでは不十分であり、能動的かつ体験に基づく教育が不可欠であると考えられる。そのため、6年間を通してこのような教育方略を多く取り入れている。また多くの科目では講義・実習・演習を混合して行う授業形態をとっており、学部全体および学年ごとの講義、実習等の授業形態の組合せとバランスを考慮した教育カリキュラムを実践している。さらに、社会に貢献する歯科医療人を育成するため、歯科医療における実践教育を重視し、学外実習を多く取り入れている。
アクティブ・ラーニング講義
多くの授業でアクティブ・ラーニングが取り入れられている。例えば、「口腔解剖学Ⅰ」では、課題授業として形態学的な知識が必要となる歯科疾患をテーマとして提示して基調講義を行った後、グループワークでテーマに関する形態学的知識や臨床との関連を調べて翌週に発表している。
各科目のシラバスにはアクティブ・ラーニングに関する項目を設定している。
少人数グループ教育
共通教育科目の「初年次セミナー」や専門教育科目の「歯科医学入門」等では、コミュニケーション能力や歯科医師としての素養を身に付けることを目的として、少人数グループによる能動的教育を実施している。また、「プロフェッショナリズムⅠ」や「プロフェッショナリズムⅡ」等ではワークショップ形式によるSmall Group Discussion (SGD)を実施している。
問題基盤型あるいは症例基盤型学修(臨床推論)
「初年次セミナー」「歯科医学入門」(1年次)および臨床実習における「総合症例検討会」等では、シナリオや実際の症例に基づいて調査・学修を行うとともに討論・発表する能動型学修が実施されている。
体験学修・地域実地経験
「地域体験実習」(2年次)では、鹿児島市内の老人保健施設、幼稚園に3日間ずつ滞在する体験型実習とともに、ワークショップ形式によるSGDを行う。「地域医療学実習」(3年次)では主に本学部の卒業生が開業する地域の歯科医院に学生2名が5日間訪問する体験型実習を実施し、シャドウイングにより歯科医療の現場を体験している。「臨床実習Ⅱ」(5~6年次)期間中の「地域歯科医療実習」では、地域の歯科診療所で見学を行う。希望者が参加する「離島巡回歯科診療同行実習」では、鹿児島県歯科医師会と鹿児島大学歯学部が協力して実施する離島巡回歯科診療に同行し、無歯科医離島に3~5日間滞在しながら離島歯科医療を見学・体験する。また、同様に希望者が参加する「離島歯科医療実習」では、県内の離島に5日間滞在しながら歯科医院を訪問し、離島における歯科医療を見学・体験する。これらの体験により、医療人としての人格形成や地域医療への理解を深めている。
上記の地域や離島における体験学修は本学歯学部の特色ある教育方法の一つであるが、2023年度も2022年度同様、各施設における感染防止対策のため、通常の実施ができず、学内でのグループワークや課題を決めての自己学修等の演習に振り替えざるを得なかった。島嶼部での実習も人流制限のため実施できなかったが、通常の学内での臨床実習が行われた。しかしながら、地域の歯科医院での実習は、十分な感染対策の指導を行ったうえで、従来どおりに実施された。
「海外歯科研修プログラムⅠ~Ⅵ(1年次~6年次)」では、希望する学生に協定校への短期留学による海外研修の場を提供しており、支援制度の説明や報告会を開催している2023年度は、海外歯科研修プログラムⅡで1名が、Ⅲで13名が、Ⅳで7名が、Ⅴで2名が、Ⅵで6名がインドネシア、マレーシア、韓国、台湾、カナダのいずれかへ渡航した。
臨床見学
「歯科臨床早期体験実習」(1年次)では全12回の診療科見学とともにワークショップ形式によるSmall Group Discussion (SGD)、コラージュ作成を実施している。また、「臨床予備実習」(5年次)では、6年間の学部教育の集大成として実施される「臨床実習」の準備として、基礎系全分野による臨床との関連を意識した振り返り講義とともに、各診療科を基盤としたローテーション方式の見学実習、演習等が行われている。
臨床技能教育(シミュレーション教育) 相互学修
「コミュニケーション学」(3年次)では、歯科医師役と患者役に分かれて指定されたシナリオを演じるロールプレイによって初診医療面接に関する教育を実施している。また、「国際医療人育成学Ⅲ・Ⅳ」においても同様のロールプレイを英語で実施し、国際化への対応を図っている。「臨床予備実習」(5年次)では、病状説明や患者指導に関する教育をシミュレーションの手法を用いて実施教育している。その他、様々な顎模型やマネキン(シミュレーター)を用いた教育を実施している。「臨床実習Ⅱ」(6年次)における高齢者歯科医療教育では、高齢者マネキンを使用し、種々の症例や状況を想定した技能の向上を目指した教育を実践している。
臨床実習
本学部では、「臨床実習Ⅰ」(5年次後期)および「臨床実習Ⅱ」(6年次前期)の二期に分けて実施している。臨床実習は、学生全体を4~6名の10グループに分け、8群(A:口腔保健科、B:小児歯科、D:顎顔面放射線科、E:口腔顎顔面外科、F:口腔外科、G:歯科麻酔科、H:成人系4科+矯正科、および歯科総合診療部(地域歯科医療実習))を5日間単位でローテイトしている。H週は、成人系4診療科(保存科、歯周病科、冠ブリッジ科および義歯インプラント科)と矯正科の5診療科により構成され、年間通じて原則隔週で配属される。
診療参加型臨床実習においては、臨床実習Ⅰでは「自験」への導入段階として、指導歯科医と行動をともにして「見学」や「介助」を中心に患者とのかかわりを経験している。続く臨床実習Ⅱでは、担当患者を基盤とした「自験」中心の臨床実習を行うこととしている。地域歯科医療実習や離島歯科医療実習および離島歯科巡回診療同行実習も並行して実施される。これらの実習においては、安全への配慮の観点から、見学や介助を中心としている。
地域歯科医療実習は、鹿児島市内および近郊の歯科診療所の歯科医師(臨床教授、臨床准教授、臨床講師)と5日間行動を共にし、多様な患者ニーズへの対応方法や、地域医療の役割、地域における多職種連携の重要性等について理解を深めることを目的とする。離島歯科医療実習は、鹿児島県の離島の歯科診療所の歯科医師(臨床教授、臨床准教授、臨床講師)のもとで歯科医療の現場見学を通じて、地域包括医療や、地域における多職種連携の重要性について理解することを目的として行われる。
実験・実習
基礎系では形態系科目の観察やスケッチ、機能系科目でのプロトコルに基づく種々の実験が行われている。「口腔解剖学Ⅱ」(2年次)では石膏棒やワックス棒を用いた歯形彫刻を実施し、立体的な歯の形を理解させている。「解剖学Ⅱ」(2年次)では人体解剖実習によりご遺体やご遺族への感謝や命の尊さを学び、医療人としての倫理観・使命感を醸成し、グループワークによる剖出部位の所見発表を通して人体構造への理解を深めている。
臨床系では各科目で習得すべき手技を顎模型やシミュレーターを用いた実習で体得し、共用試験OSCEに対応できる能力や歯科医師として身に付けておくべき基本的な技術等を学修している。
遠隔授業やWEBを活用した学修
従来、本学部では遠隔授業やWEBを活用した教育方略は採用してこなかったが、2020年4月のコロナ禍による登校禁止の事態に端を発して遠隔授業を開始した。5類感染症となった現在では、多くの授業が対面式に戻っているが、遠隔授業やWEBを活用した学修には対面式にはない利点もあることから、非常勤講師による授業等一部の授業では引き続きウェブ会議システムを用いたリアルタイム授業や本学の学習管理システム(manaba)を用いたオンデマンド授業が行われている。
研究室配属
「研究実践概論」(2年次)にて研究室配属での学修方法を学んだ後、「研究実践」(3年次)では学生が希望する分野の研究室に配属され、実験の実施や関連論文の抄読・輪読によりリサーチマインドを醸成している。なお、配属先は、従来、基礎系を中心とした11分野であったが、2023年度から全ての歯系分野(21分野)に拡大された。
選択科目の「歯学研究Ⅰ~Ⅵ」(1年次後期~6年次)では、学生が希望する分野の研究室にてマンツーマンで研究実践指導を受け、あるいは臨床技術等を学び、自ら研究・学修するリサーチマインドを醸成している。
学会等での研究発表
「研究実践」を受講した学生は学内研究発表会で発表する。「歯学研究Ⅰ~Ⅵ」を選択した学生の中には諸学会で発表を行う者もいる。また、スチューデント・クリニシャン・リサーチ・プログラム(Student Clinician Research Program / SCRP)において優秀な成績を収めた学生もいる。
その他(ICTを活用した学修支援)
授業形態とは異なるが、2015年から運用を開始しているe-ポートフォリオ・システムは、授業科目ごとに学生の学修の振り返りを電子的に記録できるシステムである。同システムは、学生の能動的学修を支えるツールとして独自に構築しており、現状では各授業科目における学生のコンピテンシー達成度のデータ蓄積等部分的に運用を開始している。また、臨床実習における経験ケース管理システムであるe-logbookシステム((株)ニッシン社製)を2014年度より段階的に導入し、2016年度には全面的に導入した。さらに、2018年度から、大学の学習管理システムmanabaを利用し、各種情報の提供、レポートの提出、小テストの実施、コロナ禍での健康管理状態の記録等に活用している。
【2-5】授業の目的及び到達目標が明示されたシラバスを作成し、それに基づいた授業を行っていること。
時間割は授業実施期間や場所等の情報も含めて前年度末までに確認作業を終了し、印刷物を学生に配布するとともに、教職員共有フォルダ(ナレッジフォーラム)に掲載することで明示している。
シラバスは、ウェブ上の「鹿児島大学シラバス検索」に掲載し、学生と教員に明示している。
シラバスは、全学統一の以下の項目が記載されており、適切な内容で構成されている。 開設年度*、学期*、学年*、曜日*、時限*、履修期、ナンバリングコード、科目名*、開設部局*、科目区分*、授業形態*、対面/遠隔*、授業方法、授業回数*、単位数*、担当教員*、共同担当教員、連絡先(TEL)、連絡先(MAIL)、授業概要(目的・内容・方法)*、学修目標*、授業計画*、準備学修に必要な学修時間の目安*、教科書*、参考書、成績評価方法・評価基準*、履修条件*、オフィスアワー、担当教員への連絡方法、実務経験のある教員による実践的授業*、SDGs*、予習・復習へのアドバイス、その他、アクティブ・ラーニング、アクティブ・ラーニング(授業回数)、アクティブ・ラーニング(「その他の内容」)、関連する学部・学科ディプロマ・ポリシー、関連する学部・学科のコンピテンシーと求められる達成レベル、変更履歴 (*は入力区分が必須となっている項目)。
学生は、シラバスを授業履修時および試験時に参考にするほか、選択科目の選択の際にも参考にし、活用している。また、教員は、各科目の授業開始時に学生とともにシラバスを確認し、授業内容や評価方法等について改めて周知を図っている。
2018年度からは、学生の授業評価アンケートを踏まえて、教員は授業改善シートを作成し、翌年度のシラバスに反映させている。この改訂過程を記録し、PDCAの軌跡を残すため、改訂内容を更新履歴(教員のみ閲覧可能)に記載している。
本学部で開講されている全ての授業科目について、毎年科目責任者に対してシラバスの確認・修正を依頼し、授業内容との整合性を確保している。さらに、歯学部教育委員会委員が記載内容の点検(記載漏れや誤記等の確認)を行い、必要に応じて修正を依頼することで正確性を担保している。
今年度は、授業形態(対面・遠隔)が急遽変更されたり、休業期間が設定されたりして授業計画の変更が余儀なくされる事態は台風等の天候理由以外ではほとんどなく、概ね当初の計画どおりに授業を実施することができたが、念のため既に終了した授業についても過去に遡って点検・修正を依頼し、記録の正確性を担保した。
開講されている全ての授業では、授業の終了時に学生に対して「授業評価アンケート」を実施している。その中に「シラバスには必要な情報がわかりやすく記載されていた」という質問事項があり、学生の意見を集計している。さらに、各授業科目の責任者は、このアンケート結果を踏まえて「授業改善シート」を作成することで、シラバスに沿った授業が行われているかを含む教育目標の達成度等、授業実施後の振り返りを行っている。
【2-6】歯学教育の実施に必要な教育施設・設備、支援体制が適切に整備されていること。
本学の校地等は、大学設置基準上、総合大学として本学が求められる面積(校地 118,138 m2、校舎 137,224 m2)に対して、校地 519,150 m2、校舎 208,888 m2を有し、基準を十分に満たしている。
歯学部講義実習棟および病院棟(歯科診療棟)は1977年に竣工した施設である。講義実習棟は講義室4室(うちコンピュータ設置室1)、実験実習室5(うちシミュレーション実習室1)を有している。授業等で学生が利用可能なパソコン(PC)として、講義室に70台が設置されている。講義室、実習室に情報コンセントが配備され、歯学部で14台の無線アクセスポイントが設置されている。学生、大学院生、教職員等の本学に所属する者には、統合認証のID、パスワードが配布されており、上記のPC、ネットワークを随時利用することができる。また、オンデマンド教材等は統合認証システムと連動し自宅等においても実習室と同等の教材が利用可能である。
また、医歯学総合研究科棟1には、講義等の実施が可能な諸室(総合示説室3、セミナー室4、カンファレンス室1、会議室1、ゼミ室6)が設けられている。医歯学総合研究科棟2には医学部・歯学部共同利用の解剖実習室があり、2020年8月~2021年3月に耐震改修工事が実施され、フォルマリン対策の強制換気装置が完備された新しい実習室に改装された。
講義実習棟の4つの講義室、5つの実習室、また医歯学総合研究科棟1の諸室(総合示説室2、セミナー室3、カンファレンス室1、会議室1、ゼミ室2)には液晶プロジェクター又は液晶ディスプレイが設置され、コンピュータによる画像および動画を利用した授業および実習が行われている。なお、5つある実習室は、主として2つが基礎系実習室、残りが臨床系実習室として利用されている。
通信設備については、全教室で無線LAN接続サービスeduroamが利用できる。
附属図書館桜ヶ丘分館は1977年に竣工し、2022年7月に全面改装し、バリアフリーや自習スペースの充実等を図った。蔵書161,555冊を擁する。また、購読雑誌(桜ヶ丘分館蔵書数)は5,339誌、購読電子ジャーナルは全学で7,685雑誌、利用可能データーベースは10種類である。所蔵図書の大部分は最新の医学書、歯学書、講義テキスト、歯科医師国家試験参考書等の学生用図書が占める。また、視聴覚資料ビデオ 174点、DVDおよびCDR 1,017点等:総計1,191点も利用可能である。図書館の開館時間は平日8:30~21:30、土・日曜10:00~18:00である。
学内の自主学修の場として、附属図書館が主に利用されているが、その他に講義室を平日16:10~21:00、ゼミ室を平日および土日に利用可能にしている。実習時間外での実習室の利用については、実習担当教員の指導の下、利用することができる。また、福利厚生施設の桜ヶ丘会館も平日8:00~21:00に開放し自主学修の場として利用されている。
学生の支援体制は、基本的には各学年の担任と副担任が担当する。担任は、あらかじめ定められたローテーションに従って、入学時から3年次前期までは基礎系教授、3年次後期から卒業時までは臨床系教授が担当している。また、副担任は入学時から同一の女性教員が卒業まで担当している。
履修指導に関しては、新入生オリエンテーションにおいて履修登録指導と修学指導を実施している。また、2年次以降は、年度始めに担任による指導を行っている。各科目の履修、予習・復習アドバイスについては、シラバスに明記している。また、学生の個別指導については、各科目にオフィスアワーを設定し対応している。前の半期のGPAが1.5未満であった成績不振者については、担任と副担任個別面談を実施して指導している。
経済的支援に関しては、入学時に全学部対象の日本学生支援機構および各種団体奨学金の手続きを行っている。歯学部の上級生を対象とする奨学金(森田育英会奨学金やNSKナカニシ財団等)に関しては、歯学部学生委員会および学生支援係が申請の手続きを行っている。授業料免除および入学料免除・徴収猶予等については、主に入学時に選定を行うとともに、災害時における学生支援緊急給付金の給付も行っている。
課外活動については、鹿児島大学歯学部同窓会が歯学部全サークルに一定額の助成と全国歯科学生体育大会(オールデンタル)の壮行会費の一部を、離島歯科医療実習等については鹿児島大学歯学部後援会が経費の一部を支援している。
進路選択、キャリア形成に関する相談・支援については、鹿児島大学歯学部同窓会の協力を得て毎年11月頃に「進路相談会」を開催している。同相談会は、これから卒後の進路選択を迫られる5年次生に対し、歯科総合診療部の教員による歯科医師臨床研修制度に関する講演やロールモデルとなる同窓生による講演を通して将来のキャリアパスについて身近に考えてもらう機会を提供するものである。過去には、海外で活躍している同窓生や自衛隊に勤務する同窓生、同窓の女性歯科医師等をパネリストとして招聘している。2023年度は、11月22日に開業医院長による講演会、学内OBとの相談会、懇親会の3部構成で開催された。大学院進学については、口腔先端科学教育研究センター主催の「大学院説明会」が2023年4月26日に開催された。個別の進路相談については、主に各学年担任および「学生なんでも相談室」相談員が対応している。
既卒生に対する歯科医師国家試験の受験支援については、学務課において既卒受験生情報の一元管理を行うとともに、学生支援部会が中心となって本院の意向に応じて国家試験に関する情報提供や桜ヶ丘図書館の利用案内等を行っている。
●項目: 臨床実習体制
評価の視点 | 評価のポイント | |
---|---|---|
2-7 | 診療参加型臨床実習の管理運営体制が整備されていること。 |
|
2-8 | 診療参加型臨床実習の指導歯科医の条件が明示され、十分な教員数が配置されていること。 |
|
2-9 | 患者に臨床実習の意義が説明され、患者の同意が確認されていること。 |
|
2-10 | 臨床実習に必要な施設・設備を整備していること。 |
|
<現状の説明>
【2-7】診療参加型臨床実習の管理運営体制が整備されていること。
診療参加型臨床実習は、歯学部教育委員会の下部組織として運用されている「臨床教育部会」によって管理運営されている。
同部会構成員は各診療科(口腔保健科、矯正歯科、小児歯科、保存科、歯周病科、冠・ブリッジ科、義歯補綴科、口腔外科、口腔顎顔面外科、顎顔面放射線科、歯科麻酔科、歯科総合診療部)から選出された教員各1名としている。
同部会は毎月第1火曜日に定期開催され、臨床予備実習および臨床実習のカリキュラム管理、実習の具体的なスケジュール立案、e-logbookシステム((株)ニッシン社製)を利用したケースカウントの管理、成績評価の管理等、臨床予備実習および臨床実習にかかわる企画および運営全般にわたる実務を担っている。
一例として、臨床実習の期間を通して毎週木曜日の15:00~16:00には臨床実習セミナーを実施している。臨床実習Ⅰ期間中には各診療科や歯科関連多職種からのレクチャーが行われ、セミナー終了後には実施報告を提出して実施記録を残している。臨床実習Ⅱ期間中には、総合症例検討会として学生が実際に経験した臨床例を報告し、討論や情報共有を図る機会としている。
以上のように診療参加型臨床実習の管理運営は、臨床教育部会が担っているが、同部会で検討・決定する事項のうち重要な事項は歯学部教育委員会の審議を経て、最終的には歯学部教授会において承認を得ることとしている。
学生の診療参加型臨床実習への参加要件である共用試験OSCEおよびCBTに合格した者については、「Student Dentist」に認定し、認定式において歯学部長から認定証を直接学生に交付することで、これから臨床実習に臨む学生のモチベーションの高揚を図っている。さらに学習支援部会を中心として、臨床実習学生を含めた全学年の学生の学修を支援する体制を整えている。
【2-8】診療参加型臨床実習の指導歯科医の条件が明示され、十分な教員数が配置されていること。
診療参加型臨床実習を担当する指導歯科医については、習熟度の低い学生を指導することから、臨床研修の指導歯科医と同等の資格要件を課している。その資格要件については臨床教育部会で検討を重ね、2018年8月開催の同部会において要件案を策定し、承認を得て現在運用するに至っている。
策定した資格要件は以下のとおりである。
- 1)臨床実習生に対する指導を行うために必要な経験および能力を有しているもの
- 2)教員(助教以上)であること
- 3)臨床経験5年以上(臨床研修を行った期間を含めて良い)であること
- 4)指導歯科医講習会(財団法人歯科医療研修振興財団主催又は「歯科医師の臨床研修に係る指導歯科医師講習会の開催指針について」(平成16年6月17日付け医政発第0617001号)に則って開催されたもの)を受講し、受講証を所有していること
2023年4月現在、歯学部の全分野の中で臨床系の分野には計95名の教員が在籍しており、上記の資格要件に照らすと、歯科医師でない教員2名、指導歯科医講習会未受講者20名を除く73名が指導歯科医資格要件を満たしていることを確認している。これは、臨床実習学生1名当たり約1.5名の指導歯科医体制を敷いていることとなる。
また、臨床実習以外にも学外における実習等に関連して教育職位特別呼称として、臨床教授等を本学部規則に基づき任命しており、学外施設等での実習の委託を始め実習教育の実を上げている。2023年度は、臨床教授11名、臨床准教授2名、臨床講師30名がそれぞれ任命されている。
これらの臨床教授等による学外実習は、3年次においては地域歯科医療の早期理解を深めることを、5年次および6年次においては、臨床実習の一部として地域歯科医療を理解し実践するための基本的知識、技能、態度を習得することを目的として、3年次の講義、3年次および5年次の学外実習、6年次の学外実習先として配置され、教育効果を上げている。
【2-9】患者に臨床実習の意義が説明され、患者の同意が確認されていること。
全ての新患患者に対して、歯科医師の養成機関として果たすべき役割、特に臨床実習の意義について指導歯科医が十分に説明を行った上で、歯学部学生の臨床実習教育への協力に関する同意(包括同意)を依頼している。同意の意向は患者による同意書への自筆署名をもって確認を行っており、同意書はスキャンされて電子カルテに取り込まれ、全ての診療科において診療の際に確認できるように一元管理されている。
既存の同意患者に加えて、2023年度は新たに5,995名から同意書を獲得した。それらの全てが新患から得られたとは限らないが、2023年度の本院の初診患者(≒新患)数は6,040名であり、その99.3%から同意を得られたことになる。例年、コンスタントに協力患者を各獲得している。
さらに、2018年7月には厚生労働省より個別同意書の取得についての方向性が示されていることから、一部の診療科では診療科独自に個別同意書を運用している。しかし、多くの診療科では包括同意が得られた患者には個別の診療の際に指導歯科医から再度口頭で説明し、同意が得られた上で、学生に診療参加させているのが現状である。
個別同意書については、歯学部臨床教育部会で上記の方向性に沿った様式の作成を始め、保管や管理方法に関して検討を行っていたが、2024年度に予定されている新外来診療棟への歯科外来の移転を機に、包括同意書の医科・歯科共通化作業が先行して進められており、個別同意書の見直しに関わる作業は中断している。
【2-10】臨床実習に必要な施設・設備を整備していること。
病院棟内には歯科診療に使用するユニット計104台が各診療科に配置され、各診療科の診療用ユニットは、歯学部の歯科医師による診療を始め、研修歯科医の研修、および診療参加型臨床実習での使用を兼ねている。これ以外の臨床実習用ユニットとして、歯科総合診療部に11台があり、臨床予備実習時のシミュレーションや相互実習、共用試験OSCE等に用いられている。
技工室に関しては、臨床実習の学生専用の技工室としては整備されていないため、第1医員技工室(補綴系)と鋳造研磨室を、指導歯科医や研修歯科医と共有して必要に応じて使用する体制をとっている。現在、病院の再開発計画が進んでおり、技工室は歯科技工士、全ての歯科医師および学生が共有することを前提に新外来棟内に整備される予定であることから、現有の施設、設備の効率的運用により対応している。
また、歯科総合診療部内には、2013年度に学生専用の歯科演習室が整備され、ユニット4台を使用して、マネキンを使用したOSCE前の自主練習や自験前の実技トレーニングを行うことが可能である。このことは、臨床実習要項にも明記されている。同演習室には、高齢者のマネキンやベッド、車椅子、訪問診療用ポータブルユニットも整備され、臨床実習の期間を通して同演習室を解放し、各学生が臨床現場での課題をフィードバックして自主的に臨床能力の向上を図れる機会を設けている。
さらに、これらの施設や設備を用いた実習として、症例ベースで行う「訪問診療シミュレーション実習」が臨床実習Ⅰの期間内に全ての臨床実習生(5年次)を対象に行われている。
臨床系科目の基礎実習や臨床予備実習では、歯学部講義実習棟の第3実習室も使用する。同室には2003年にマネキン(クリンシム:モリタ社製)と液晶モニターを備えた63台の実習台が整備されており、モニター上で指導歯科医のデモンストレーションを見ながら実習を行うことができる。
第3実習室では、2018年度および2019年度に歯学系診療参加型臨床実習後客観的臨床能力試験の一斉技能試験(CSX)のトライアルを実施し、試験会場としての適切性を確認した。2023年度には本実習室においてCSXを正式実施し、大きなトラブルもなく終了した。
●項目: 臨床能力向上のための教育
評価の視点 | 評価のポイント | |
---|---|---|
2-11 | 臨床実習開始前に学生の知識・技能・態度の評価を行い、診療参加型臨床実習を行う学生の質の担保を図っていること。 |
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2-12 | 患者の安全に配慮しつつ、臨床能力の向上のための教育カリキュラムを整備していること。 |
|
2-13 | 診療参加型臨床実習に十分な実習時間を定め、実践していること。 |
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2-14 | 卒業時の臨床能力が明示され、診療参加型臨床実習において修得した能力を評価するシステムを有し、臨床能力を担保していること。 |
|
2-15 | 診療参加型臨床実習に際して、医療事故防止、感染対策等に関する医療安全教育が行われていること。 |
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<現状の説明>
【2-11】臨床実習開始前に学生の知識・技能・態度の評価を行い、診療参加型臨床実習を行う学生の質の担保を図っていること。
本学部では2015年度よりアウトカム基盤型のコンセプトに基づく教育カリキュラムに全面的に移行し、コンピテンスとして「Ⅰ.歯科医師の職責とコミュニケーション、Ⅱ.歯科医学および関連領域の知識、Ⅲ.医療の実践、Ⅳ.地域医療とヘルスプロモーション、Ⅴ.生涯学習と科学的探究心」を掲げている。これらに基づき、入学直後から多くの教育場面を通じて、医療人としての人間性や、コミュニケーション能力、医療分野に加えて幅広い知識、患者や家族の状況に配慮した歯科医療の実践、地域医療への貢献、生涯にわたる医療者としての向上心、等の涵養を目指している。
1年次の歯科臨床早期体験実習では大学病院での歯科医療の現場の見学、2年次の地域体験実習では幼稚園や高齢者施設における滞在型実習、3年次の地域医療学実習では地域の歯科医院の見学を通じたシャドウイングを実施している。
このように、学生の各時期に多様な臨床に関連した場面を体験することを通じて、学生自身が主体的に学修に取り組むよう、患者への配慮および臨床能力の向上の必要性に理解する機会を与えている。
本学部では、臨床実習の直前の5年次の4月から臨床予備実習を開講している。本実習は、基礎系各分野による臨床との関連を意識した講義、および各診療科を基盤としたローテーション方式の実習によって行われ、それまでの座学を主体とした教育から、大学病院内で行われる「診療参加型臨床実習」への橋渡しの場としている。本実習の到達目標は「社会の期待に応えうる自立した歯科医師としての自覚を高めるために、これまで学んできたすべての内容を統合し、患者中心の医療の実践に結び付ける基盤を構築するとともに、診療参加型臨床実習の実践に必要な基本的知識、技術、態度を修得する」としており、各分野の学修目標と評価基準は臨床予備実習シラバスに明記されている。
臨床予備実習期間の6月に共用試験CBTを、8月に共用試験OSCEを実施し、診療参加型臨床実習に臨むに当たっての知識の評価をCBTによって、基本的態度と技能の評価をOSCEによって行っている。合格基準は、CBTでIRTスコア480以上、OSCEで得点率60%以上としている。CBTとOCSEの両方に合格した上で、臨床予備実習に合格した者が臨床実習Ⅰに進むことができる。
2023年度CBTの結果は、本試験において不合格が2名で、最終的に再試験において合格となった。2022年度OSCEの結果は、本学の課題全体の平均得点率は88.0%(2022年度:81.4%)で、全員が総合点で合格基準(60%)に達していた。
【2-12】患者の安全に配慮しつつ、臨床能力の向上のための教育カリキュラムを整備していること。
臨床予備実習、臨床実習Ⅰ、臨床実習Ⅱには全体を統括するシラバスがあり、そこに記載された内容を各診療科が分担している。
診療科ごとに制作された、臨床予備実習、臨床実習Ⅰ、臨床実習Ⅱのいずれのシラバスにも、実習の内容や実習方法、実習における到達目標、成績の評価基準等について記載した授業科目名、選択・必修、授業形態、開講期、単位数、担当教員、担当教員所属、連絡先(電話番号、メールアドレス)、担当教員のオフィスアワー、授業のキーワード、関連する学部・学科ディプロマ・ポリシー、関連する学部・学科コンピテンシーと求められる達成レベル(A:行動力、B:表現力、C:応用力、D:知識、E:関与)、学修目標(関連する歯学教育モデル・コア・カリキュラム番号)、授業概要、授業計画、予習・復習へのアドバイス、教科書、参考書、成績の評価基準、再試験の有無、研究活動との関連、アクティブ・ラーニングの種類と授業回数を、全学共通のフォーマットに基づき記載している。シラバスは、歯学部ホームページで閲覧可能であると当時に、臨床予備実習要項および臨床実習要項に収載されている。
臨床予備実習の期間の前半では、臨床予備実習に臨むに当たり必要な基礎歯学、臨床歯学の知識を、基礎系全分野および臨床系全診療科・部の講義によって臨床系実習の直前に振り返り、それまでの4年間に学んだ内容の統合を図って、続く各診療科・部での臨床系実習での基盤とする。
臨床予備実習の後半では、学生全体を1グループ当たり4~6名の10グループに分け、A:小児歯科、B:口腔保健科、C:矯正歯科、D:歯科麻酔科+顎顔面放射線科、E:歯周病科、F:口腔外科、G:口腔顎顔面外科、H:冠・ブリッジ科、I:義歯補綴科、J:保存科の各診療科を4日間単位でローテイトする。講義と基礎実習で習得した知識を確実にすると同時に、知識と臨床手技の隔たりを補うために、マネキンを用いたシミュレーション実習や相互実習、臨床見学により、患者に対応するための心構えを養う。臨床予備実習の期間に、「臨床予備実習セミナー」として毎週一回は全学生を一同に集めて、各診療科の講義の補完やアクティブ・ラーニングを行うことにより、患者さんに対応するための知識や技術とともに、態度を養う。各診療科とも、4~11名の指導教員で実習を担当している。これらを通じて、それまでの机上の学修から、診療参加型臨床実習への橋渡しとしている。
臨床実習では、学生全体を1グループ当たり4~6名の10グループに分け、8群(A:口腔保健科、B:小児歯科、D:顎顔面放射線科、E:口腔顎顔面外科、F:口腔外科、G:歯科麻酔科、H:成人系4科+矯正科、および歯科総合診療部(地域歯科医療実習))を5日間単位でローテイトしている。H週は、成人系4診療科(保存科、歯周病科、冠ブリッジ科および義歯インプラント科)と矯正科の5診療科により構成され、年間通じて原則隔週で配属される。
診療参加型臨床実習においては、臨床実習Ⅰでは「自験」への導入段階として、担当医と行動をともにして「見学」や「介助」を中心に患者とのかかわりを経験している。続く臨床実習Ⅱでは、担当患者を基盤とした「自験」中心の臨床実習を行うこととしている。診療参加型臨床実習は各診療科の外来、手術室および病棟で行われる。自験は、指導歯科医資格を有する主治医のもとで、学生の行動に目が行き届く体制で行われている。
これらのローテーション方式の診療参加型臨床実習に加えて、自らで歯科診療技能の修得を目指すためのシミュレーターを用いた「歯科演習室」を整備しており、利用許可申請を行うことにより臨床予備実習生および臨床実習生は随時使用することが可能となっている。
本学に特徴的な実習について以下に述べる。
訪問診療シミュレーション実習は、臨床実習Ⅰの期間の初期に、歯科演習室において、同室に整備されているベッドや車いす、マネキン、訪問診療用ポータブルユニット等を使用して、2つのシナリオに基づいて高齢者の居宅への訪問歯科診療のシミュレーション教育を実施している。
例年、臨床実習ⅠおよびⅡの期間には、地域歯科医療実習や離島歯科医療実習および離島歯科巡回診療同行実習が実施される。これらの実習においては、安全への配慮の観点から、見学や介助を中心とした実習としている。
地域歯科医療実習は、鹿児島市内および近郊の歯科診療所の歯科医師(臨床教授、臨床准教授、臨床講師)と5日間連続で行動を共にし、多様な患者ニーズへの対応方法や、地域医療の役割、地域における多職種連携の重要性等について理解を深めることを目的とする。2023年度は、臨床実習Ⅰの期間の2023年12月から2024年3月の間に実施した。
離島歯科医療実習は、鹿児島県の離島の歯科診療所の歯科医師(臨床教授、臨床准教授、臨床講師)のもとで歯科医療の現場見学を通じて、地域包括医療や、地域における多職種連携の重要性について理解することを目的として行われる。臨床実習Ⅱの期間に実施される。離島歯科巡回診療同行実習は、鹿児島県の事業として実施されている離島歯科巡回診療に参加する本学の教員に同行して、無歯科医離島における歯科医療の現場を体験することにより、歯科医療および歯科医師の役割や、無歯科医離島における医療の特異性を学修する。臨床実習ⅠおよびⅡの期間に実施される。臨床実習ⅠおよびⅡの期間に、離島歯科医療実習又は離島歯科巡回診療同行実習のいずれかに参加することを課している。新型コロナウイルス感染症の影響で、離島での実習を約3年間見合わせていたが、今年度は離島地域の入島制限が行われたことから、離島歯科医療実習と離島歯科巡回診療同行実習を再開した。
地域歯科医療実習および離島歯科医療実習の受入先は、鹿児島大学歯学部の臨床教授、臨床准教授、臨床講師の任命を行った歯科医師としている。離島歯科巡回診療同行実習は、診療を担当する歯科医師が本学の指導歯科医資格を有する場合にのみ、学生の帯同を可能としている。
地域歯科医療実習に関しては、実習開始前に新規受入施設の先生方を個別に訪問して、実習責任者および臨床教育部担当者より実習のカリキュラムおよび教育指導体制について説明を行っている。これらの学外実習の実施に当たっては、学生に対して実習開始前に入念なオリエンテーションを行い、実習に送り出している。
臨床実習ⅠおよびⅡの期間を通じて、毎週木曜日の臨床実習終了後に臨床実習セミナーが開かれる。ここでは、普段は目にする頻度の少ない症例や各診療科での専門性の高い症例の供覧、診療科以外の院内の関連部門(看護部、歯科衛生部門、歯科技工部門、薬剤部)による多職種の関わりに関する講義等が行われる。また、臨床実習セミナー期間の終盤には総合症例検討会が行われており、学生は全員がいずれかの診療科に配属されて症例発表の発表に準備段階から携わることにより、症例への理解を深めている。
【2-13】診療参加型臨床実習に十分な実習時間を定め、実践していること。
診療参加型臨床実習は、5年次後期の臨床実習Ⅰと6年次前期の臨床実習Ⅱの2期制で実施している。2023年度は、5年次の臨床実習Ⅰ(22週、103日間)、6年次の臨床実習Ⅱ(22週、107日間)の実習時間を確保した。なお、1日当たりの実習時間は8単位時間が基本となっている。
学年単位での臨床実習Ⅰと臨床実数Ⅱを合わせた診療参加型臨床実習の時間は、2022~2023年度臨床実習(6年次)では212日間(1560時間)を実施し、2023~2024年度臨床実習(5年次)では210日間(1545時間)の実施となる予定である。これらの診療参加型臨床実習の実施時間は、歯科医学教育白書2021年度版の報告と比較すると、実施時間としては全国平均より長めと推測される。
臨床実習における1名当たりの必須ケース数は、臨床実習ⅠとⅡの期間を通じて、全ての診療科の合計で、自験:173、介助:98、見学:184に設定されている。自験内容は、「臨床実習の内容と分類」における水準1および水準2の項目を中心に行い、医療面接、診察、歯周治療、CR充填処置、根管治療、予防填塞、チーム医療、抜歯、縫合、可撤性義歯等幅広く取り組ませることとしている。
【2-14】卒業時の臨床能力が明示され、診療参加型臨床実習において修得した能力を評価するシステムを有し、臨床能力を担保していること。
本学部では、ディプロマ・ポリシーに基づき、卒業時に期待する学修成果(アウトカム)を5つのコンピテンス(Ⅰ.歯科医師の職責とコミュニケーション、Ⅱ.歯科医学および関連領域の知識、Ⅲ.医療の実践、Ⅳ.地域医療とヘルスプロモーション、Ⅴ.生涯学習と科学的探究心)を設定している。コンピテンス「Ⅲ.医療の実践」として、「鹿児島大学歯学部学生は、卒業時に患者、患者家族を尊重し、全身的、精神的、社会的状況に配慮した、安全で効果的かつ合理的な患者中心の歯科医療を実践する。」を掲げ、具体的には10項目のコンピテンシーを設定し教育を行っている。
各診療科のシラバスには、関連するコンピテンシーと求められる達成レベル、また、歯学教育モデル・コア・カリキュラム(平成28年度改訂版)に関連した学修目標が設定され、記載されている。臨床実習でのケースカウントは、歯学教育モデル・コア・カリキュラム(平成28年度改訂版)にしたがって、水準1と水準2に準じて作成されている。なお、本学部では臨床実習におけるケースカウントを行うツールとして、従来用いていた実習ケース終了ごとに指導歯科医が押印する実習帳形式を廃し、スマートフォンを用いて電子的に記録を蓄積していくe-logbookシステム((株)ニッシン社製)を導入し運用している。
各診療科での実習においてミニマムリクワイヤメントが設定されてシラバスに明示されており、e-logbookシステムによってカウントしたケース数、レポート課題、試問、実習態度等によって評価を行っている。ケース個々の評価は、e-logbookシステムの認証時に、学生の自己評価の確認と指導歯科医の評価を入力している。
診療参加型臨床実習終了後の臨床能力を評価するために、共用試験実施評価機構が実施する共用試験歯学系診療参加型臨床実習後客観的臨床能力試験(Post-CC PX)が導入されたことから、2022~2023年度臨床実習では臨床実地試験(CPX)および一斉技能試験(CSX)を正式実施した。
【2-15】診療参加型臨床実習に際して、医療事故防止、感染対策等に関する医療安全教育が行われていること。
本学部における医療安全の教育は、医療安全教育は入学直後より実施され、「患者と医療」(1年次)、「プロフェッショナリズムⅠ」(2年次)、「コミュニケーション学」(3年次)、「歯科医療倫理学」(3年次)、「プロフェッショナリズムⅡ」(4年次)、「総合歯科医療実践学」(5年次)等の科目で、安全で円滑な診療を行うために必要な患者やスタッフとのコミュニケーション、インフォームドコンセントに基づく患者との信頼関係の確立や医療者としての心構えについて教授している。また実習における医療安全教育は、1年次の歯科臨床早期体験実習を始め、基礎実習開始時から診療科ごとに行われている。
さらに本学部では、患者に対して安心・安全の診療参加型臨床実習を行っていくためには、共用試験合格レベルであっても一層の臨床能力の向上が必要と考え、5年次前期の臨床予備実習の期間を設けている。臨床予備実習開始時のオリエンテーションにおいては、診療の安全に対する心構えとして、「鹿児島大学病院の医療に関する安全管理指針」「インシデント発生時のながれ」「院内救急システム」「患者確認」「診療情報管理」「病院情報システムに関する事故防止策」「標準予防策」「手洗い・手指消毒」「歯科感染対策マニュアル」「感染性廃棄物の取り扱い」「針刺し・切創・粘膜暴露への対応」「針刺し・切創・粘膜暴露の予防」「注意を要する感染症」「鹿児島大学病院 患者さんの個人情報について」「新型コロナウイルス感染対策に関する留意事項」「鹿児島大学新型コロナウイルス感染症対応フロー」の項目についての指導を行い、臨床予備実習要項の中にマニュアルとして掲載している。
これらのマニュアルに基づいて、病院医療環境安全部の担当教員より「医療安全」について、歯科ICT(Infection Control Team)担当教員(ICD)より「感染対策」について、臨床実習責任者(臨床教育部会長)より「個人情報の取り扱い」について指導している。
特に感染対策に関しては、臨床実習ⅠおよびⅡの期間を通じて毎週木曜日に開講される臨床実習セミナーの初回に、歯科ICDによる感染対策に関するセミナーを行い、歯科医療に関わるに当たり感染対策に配慮した行動を指導している。また、臨床予備実習、臨床実習Ⅰおよび臨床実習Ⅱの期間を通じて、日々の外来診療の中で指導歯科医が医療安全と感染症対策について随時教育している。
臨床実習開始時には、改めてオリエンテーションを実施して、歯学部長、副病院長および臨床教育部会長より、臨床実習生に求められる医療者としての意識や態度に関する指導が行われる。それらを学生に強く認識させるために、臨床実習開始前共用試験の合格基準を満たした者としてStudent Dentistに認定し、認定証授与式を保護者等同席のもと実施した。また、外来患者に対する診療参加型臨床実習への協力依頼を、病院受付の掲示板に提示した。
本学部では、2015年度からのアウトカム基盤型教育に基づくカリキュラム導入後は、附属病院内で実施される診療参加型臨床実習に加えて、幼稚園や高齢者施設、地域の歯科医院など、学外の施設で幅広い年齢層の人たちと接する実習の機会を構築している。各実習に積極的に参加するに当たっては、実習先の人々との交流の中で不測の事態により自らが受傷する可能性に加えて、相手を負傷させてしまうことも考えられる。したがって、実習中の不測の事態に備えて、自身のための傷害保険に加えて、対人賠償と対物賠償にも対応する保険(学生教育研究災害傷害保険付帯賠償責任保険や学生賠償責任保険)を付帯することを全員に義務付けた。全学年の学生の保険加入状況は毎年確認している。
学生は実習のために医療機関に出入りし、さまざまな感染症患者と接触する可能性があるため、実習中の安全確保と医療機関内での感染防止のために、5種類の5類感染症(麻疹・風疹・水痘・流行性耳下腺炎・B型肝炎)の免疫状態を確認し、基準を満たすことを参加要件としている。
B型肝炎を除く4種類の感染症については、各自が医療機関で抗体検査を受け、基準値に達しない者にはワクチン接種を義務付けている。B型肝炎については大学で対応しており、抗体検査により基準値に満たないものにはワクチン接種を実施している。インフルエンザについても、病院実習を行う学年に対してワクチン接種を実施している。歯科臨床早期体験実習を始め、1年次後期から手術室を含む臨床の現場に参加する機会があることから、全ての学年で免疫状態の確認を行っている。
●項目: 成績評価・卒業認定
評価の視点 | 評価のポイント | |
---|---|---|
2-16 | 成績評価の基準・方法を適切に設定し、あらかじめ学生に明示していること。 |
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2-17 | 設定された成績評価の基準・方法により、成績評価を公正かつ厳格に実施していること。 |
|
2-18 | 進級判定基準を設定・明示し、適切な評価・判定を行っていること。 |
|
2-19 | 成績評価の公正性・厳格性を担保するために、学生からの成績評価に関する問い合わせ等に対応する仕組みを整備し、かつ、学生に対して明示していること。また、その仕組みを適切に運用していること。 |
|
2-20 | 学位授与方針に基づき、公正かつ厳格な卒業認定を行っていること。 |
|
<現状の説明>
【2-16】成績評価の基準・方法を適切に設定し、あらかじめ学生に明示していること。
鹿児島大学では「鹿児島大学学則」第42条の2(成績評価基準等の明示等)第2項において「各学部等は、学修の成果に係る評価及び卒業の認定に当たっては、客観性及び厳格性を確保するため、学生に対してその基準をあらかじめ明示するとともに、当該基準にしたがって適切に行うものとする。」と定めている。また、単位認定については、同学則第48条で「授業科目を履修し、その試験に合格した者には、所定の単位を与える。」と定められており、この規則に従って成績評価、単位認定を運用している。
歯学部では「鹿児島大学歯学部規則」および「鹿児島大学歯学部授業、試験及び進級に関する細則」において試験を定め、年度ごとに発行する「修学の手引き」に明示している。
「鹿児島大学歯学部授業、試験及び進級に関する細則」では次のように示している。試験については、第5条から第11条で、出席時間数に基づく受験資格の認定、時期および方法、実施者とその心得、受験者の心得、遅刻者・欠席者の扱いを示している。成績評価基準については、第12条に規定しており、成績の表記は、秀(90点以上)、優(80点以上90点未満)、良(70点以上80点未満)および可(60点以上70点未満)とし、60点未満を不可としている。
また、鹿児島大学では学生の総合的な学修到達度を評価する目的でグレード・ポイント・アベレージ(以下「GPA」)を付与している。付与するGPAは、秀は4点、優は3点、良は2点、可は1点、不可は0点としている。
これに基づき算出するGPAの計算式は、
GPA=(秀の単位数×4点+優の単位数×3点+良の単位数×2点+可の単位数×1点)/(総履修登録単位数)
としている。
進級判定の根拠となる各授業科目における評価方法は、各授業科目の担当分野が作成するシラバスの「成績の評価基準」欄に具体的な評価方法とともに、複数の方法を用いる場合はそれぞれの割合まで記載しているとともに、「再試験の有無」についても記載している。シラバスは歯学部ホームページから検索可能であり、電子ファイルの形式で公開しており、学生全員がPCやスマートフォン等で閲覧・ダウンロードできるようにしている。
臨床予備実習に関しては、教育を担当する全20分野がシラバスに従い学生個々の評価を行い、全成績を総合して科目の成績としている。また、臨床実習ⅠおよびⅡについては、教育を担当する臨床系全12分野がシラバスに従い学生個々の評価を行い、全成績を平均して科目の成績としているが、各分野の成績のうち60点に満たない成績がある場合は平均とせず、科目は不合格としている。
臨床実習開始前に行われる共用試験については、科目の単位認定とは別に進級要件として位置づけられている。臨床実習に進級するための能力測定を目的とした本共用試験については、4年次の1~2月に説明会を開催し、合格基準等についても説明を行っている。CBTはIRT標準スコア480、OSCEについては得点率60%を合格基準としている。
最終的な各科目の得点・成績は、印刷物による掲示又は学習管理システムmanabaにアップロードし、学生が各自の得点・成績等を閲覧できるような体制を構築しており、必要に応じて利用できるようにしている。
【2-17】設定された成績評価の基準・方法により、成績評価を公正かつ厳格に実施していること。
各授業科目の評価は、シラバスの「成績の評価基準」に従って、担当分野ごとに行っている。基本的に講義時間中に行う確認試験、中間試験、レポート等の得点およびその他の評価結果と所定の試験期間に行う定期試験(追試験、必要に応じて原則として1回行う再試験を含む)の得点を総合して評価を行っている。
各科目内においては、実際の教育担当者と科目責任者を含めた複数の目で評価結果を確認し公平性を担保するとともに、科目責任者の責任のもと、最終的な成績評価を厳格に行っている。
統合系科目等複数の教員が担当する科目においては、オーガナイザーを兼ねる単位認定教授(又は准教授)を設置しており、シラバス記載に沿った評価がされているか等の適切性を確認した上で 、最終的な成績評価が行われている。
各教育担当分野における臨床基礎実習等についても実際に教育を担当する教員と科目責任者(単位認定教授)で調整、協議を行い最終的な成績評価を行っている。臨床予備実習については、教育を担当する分野がそれぞれ個別に各学生の評価を行い、総合的な評価を行う体制としている。また、臨床実習ⅠおよびⅡについても同様に教育を担当する分野がそれぞれ個別に各学生の評価を行い統合し、総合的な評価を行っている。
医療系大学間共用試験実施評価機構が実施する診療参加型臨床実習後臨床能力試験PostCC-PX(臨床実地試験CPX、一斉技能試験CSX)の成績は、2020年度の同試験正式実施に伴い規則改正およびシラバスの修正を行い、臨床実習単位認定時の要件に組み込んでいる。
各履修科目の成績評価は、科目責任者(単位認定教授)から学務課歯学教務係を通じて歯学部教育委員会に報告され、「鹿児島大学歯学部授業、試験及び進級に関する細則」の第17条に基づき歯学部教育委員会又は同委員会が指定した会議で厳正に確認・審議を行うこととしている。2021年3月に、全学教務委員会において「成績評価に関するガイドライン」が示されるとともに、歯学部独自の「成績評価に関するガイドライン」が2022年4月1日より施行され、各授業科目における評点と評価基準の関係等が明示された。この基準に基づき、歯学部で開講する実験・実習科目等科目ごとの特性に応じた評価を実施している。
また、「鹿児島大学歯学部授業、試験及び進級に関する細則」第12条の3項から5項においてGPAも付与しており、GPAを活用して学生の総合的な学修到達度の評価を行っている。現在では半期に一度、当該期のGPAが1.5未満の学生を抽出し、結果を本人へ開示するとともに、学年担任による個別指導(面談)が行われている。
学生への成績の通知については、前期・後期ごとに成績通知表にて履修科目、単位数、評価を告知し、年度ごとに全履修済科目の単位と評価を通知している。また、保証人(保護者)に対しても年度ごとに通知しており、進級できない場合は年度内に、進級する場合は翌年度当初に郵送にて通知している。各学年には学年担任が配置されており、成績および修学上の問題等について随時相談出来る体制としている。
【2-18】進級判定基準を設定・明示し、適切な評価・判定を行っていること。
1年次の進級判定基準は、「鹿児島大学共通教育科目履修規則」に定める所定の要件を満たしていることおよび「鹿児島大学歯学部授業、試験及び進級に関する細則」第16条第1項に定めるとおり、1年次後期までに修得しなければならない全ての専門教育科目の単位を修得していることとされている。
また、2年次から5年次の進級判定基準は、「鹿児島大学歯学部授業、試験及び進級に関する細則」第16条第2項に定めるとおり、各年次後期までに修得しなければならない全ての専門教育科目の単位を修得していることとされている。
また、この細則は、毎年度作成される「修学の手引き」に掲載され、個々の学生に配布され周知されているとともに、入学時のオリエンテーションにて学年担任から詳細な説明が行われている。また、歯学部ホームページ(学内専用)に2013年度以降の「修学の手引き」(PDF)が掲載されており、必要に応じて随時確認できる体制としている。
なお、5年次後期に行われる「臨床実習」への進級認定には、「鹿児島大学歯学部臨床実習前共用試験(CBT及びOSCE)に関する申合せ」に記される共用試験(CBT、OSCE)への合格が別途求められている。
共用試験OSCEについては、合格基準を得点率60%以上としており、共用試験CBTに関しては、IRT標準スコア480以上を合格基準とすることとしている。全ての進級判定基準は規則や細則に明示しており、適切に設定、公表されている。
進級判定については、「鹿児島大学歯学部授業、試験及び進級に関する細則」第17条に定めており、判定に先立ち開催される歯学部教育委員会で規定に則り予備判定を行っている。予備判定は、教育を担当する分野から提出された個々の学生の成績一覧表をもとに、「鹿児島大学歯学部授業、試験及び進級に関する細則」に定められている所定の単位数を取得しているかを詳細に確認し、合議により判定を行う。その結果を歯学部教授会へ上程し、審議を経て最終的に進級決定している。
進級判定の結果については、学生向け掲示板に文書で公表されるとともに、進級不可となったものに対しては個別に学年担任が面談を行う体制としている。そこでは、学修指導に加え、留年中の生活相談も含めた対応を行っている。なお、進級判定が不可となった場合は、個々の学生の保証人(保護者)にも文書にて結果を通知している。
学生からの進級判定に関する申し立て制度は、「修学の手引き」の「鹿児島大学歯学部における学生の成績等開示請求及び異議申立てに関する規則」に明記されており、手続きに従って成績等の開示請求および異議申し立てを行うことができることとなっている。
これらの成績評価および進級判定プロセスは、歯学部教育委員会の議事要旨、教授会議事要旨として保管され必要に応じて検証できる体制にしている。また、各授業担当分野もしくは歯学教務係においては試験問題・答案用紙を鹿児島大学法人文書管理規則に従って5年間保存している。
留年生の状況については、2020年度入学生以降の複数学年において留年生が在籍しており、2023年度において最も留年生が多いのは4年次であった。4年次の留年が極端に多いのは、同学年が1年次に共通教育の特定の科目における修学上の問題が発生し、その影響が残っていることが原因である。
退学・除籍となるものは低学年(1年次、2年次)に多い傾向が認められた。退学の主な理由としては「進路再考(医学部への再受験)」であった。
【2-19】成績評価の公正性・厳格性を担保するために、学生からの成績評価に関する問い合わせ等に対応する仕組みを整備し、かつ、学生に対して明示していること。また、その仕組みを適切に運用していること。
成績評価の公正性、厳格性を担保するために、学生の成績に関する開示請求および異議申し立てについては2010年度に規則として「鹿児島大学歯学部における学生の成績等開示請求及び異議申立てに関する規則」を定め、仕組みを整備するとともに、運用を行っている。本規則は、全歯学部生に入学時に配布するとともに鹿児島大学歯学部ホームページ上に学内限定で公開されている「修学の手引き」に記載され、学生には常に明示されている。
具体的には、成績評価を含む教学上の判定に不服がある学生は、成績等の公示日から起算して7日以内に所定の異議申し立て書を学部長に提出する。学部長は、速やかに内容を精査し、申し立て日から起算して7日以内に所定の回答書を用いて回答を行うこととなる。学部長は、調査等により過失が認められた場合、あるいは疑義が想定される場合等7日以内に解決が困難な場合は、当該学生に状況を説明するとともに、その内容を学長、教育担当理事、危機管理室長、監事および学生部長に報告し、対応について協議することになっている。
本規則については、記録の保管義務が課せられている過去5年間において、運用された実績はない。
【2-20】学位授与方針に基づき、公正かつ厳格な卒業認定を行っていること。
鹿児島大学では大学としての教育目標に基づいてディプロマ・ポリシーを定めている。さらに各学部で教育目標とこれに基づくディプロマ・ポリシーを定めている。
歯学部では鹿児島大学のディプロマ・ポリシーを踏まえ、「歯科医療人である前に良識豊かな人間であれ」という理念のもとに3項目の教育目標を設定し、教育目標との整合性を勘案して6項目のディプロマ・ポリシーを設定し、これに基づき学部教育を実施している。
2014年度入学生までは、学修目標準拠型カリキュラムに基づく教育を行っていたが、それまでに抱えていた種々のカリキュラム上の問題を解決するために2015年度に大幅な改革を行い、アウトカム基盤型の新たなカリキュラム(新カリキュラム)で教育を実施している。
新カリキュラムでは、6年間のアウトカムとして5つのコンピテンスを設定している。具体的には、Ⅰ.歯科医師の職責とコミュニケーション、Ⅱ.歯科医学および関連領域の知識、Ⅲ.医療の実践、Ⅳ.地域医療とヘルスプロモーション、Ⅴ.生涯学習と科学的探究心である。
これらのディプロマ・ポリシーとコンピテンスについては、2016年度に両者の整合性を整えるべくディプロマ・ポリシーの修正を行い、それぞれが1対1(コンピテンスⅤのみディプロマ・ポリシー2つが相当)で対応するように配置した。これにより鹿児島大学歯学部が育成を目指す歯科医師像がより明確になり、学生の目指すべき学修の方向性も明示されたと考えられる。
新カリキュラムではさらに、具体的なアウトカムと各科目の関係性を示し、6年間の学びの流れを理解しやすくするカリキュラムマップを明示している。これらのアウトカム達成への評価は、パフォーマンスレベルマトリックスに明示された各科目で到達すべき能力レベルに沿って評価を実施する予定である。
具体的には、本学医学部で独自に開発しているe-ポートフォリオ・システムを歯学部向けに改修し、コンピテンシーを軸とした各科目の能力評価を6年間通して継続的に行っている。このように、従来の成績評価に加えてコンピテンシーベースの評価を加えることにより、評価の質を向上させる。現状では各授業科目における学生のコンピテンシー達成度のデータ蓄積等部分的に運用を開始している。今後は、蓄積されたデータを縦覧し、学生の成長度を随時客観的に確認できるようにするとともに、組織としても教育効果を可視化できるようにシステムを開発中である。
卒業認定については鹿児島大学学則第50条に規定しており、各学部が定める所定の単位を修得したものは、当該学部の教授会の議を経て、学長が卒業を認定することとなっている。
6年次の卒業要件は鹿児島大学歯学部規則第10条に定められ、6年次に履修する科目も含めて所定の卒業要件単位を修得した者に対して、歯学部教育委員会で確認を行った上で教授会の議を経て卒業を認定している。
●項目: 教育成果の検証
評価の視点 | 評価のポイント | |
---|---|---|
2-21 | 学生の学習成果、卒業者の進路状況等を把握・分析し、教育上の成果を検証していること。 |
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2-22 | 検証した結果を教育内容・方法の改善に活用していること。 |
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<現状の説明>
【2-21】学生の学習成果、卒業者の進路状況等を把握・分析し、教育上の成果を検証していること。
学生の学修成果把握の主な方略は、「試験」である。学部としての試験期間を前期末、後期末にそれぞれ1週間ほど設けているが、具体的な時期および方法については、科目の特性に合わせて科目担当者が定めることとしている。
成績評価方法・評価基準や試験の実施時期等は、シラバスに明記するとともに、必要に応じて学習管理システム(manaba)にも掲示し、学生への確実な情報提供を行っている。成績評価については、鹿児島大学として学位の質保障の観点から全部局共通の成績評価に関するガイドラインがある。歯学部では、同ガイドラインの適用が難しい演習、実験、実習科目等を評価するため、部局独自のガイドラインを定め、両ガイドラインに基づいて運用している。
成績不振者(GPA<1.5)に対しては、学年担任と副担任が面談を行い、学修方法等を指導している。また、歯学部教育委員会の「学習支援部会」は、主に高学年に対する学修支援活動を行っている。低・中学年に対して、年2回程度、基礎系の教授・准教授から構成される基礎系懇談会を開催し、学生の成績や学修状況(学修態度や出席状況等)の情報を共有し、把握することで、問題を抱えた学生を早期に発見して指導に役立て、問題の深刻化を防ぐ対応策としている。
歯学部教育委員会において共用試験(CBTならびにOSCE)の成績分析と対応を行っている。CBTの成績不振者に対しては、学年担任が面接を行い、得点の低い科目の学修方法を指導しいる。OSCEの成績不振者に対しては、得点率が60%を下回った課題内容について、臨床実習開始前の期間に課題担当教員が個別に補講を行った上で臨床実習に進むようにしている。
各学年全体の学修状況や生活状況の把握と意見聴取のために、前期および後期セメスター終了時、学年担任・副担任に対して歯学部学生委員会名で各学年の代表者数名との意見交換を依頼している。教員は、面談実施後に面談報告書を作成し、提出する。
面談報告書に記載された内容のうち、勉学面については歯学部教育委員会、生活面については歯学部学生委員会が内容を取りまとめ、学生への回答、改善計画等の検討を行い、教授会で報告している。
また、教育委員会では、各科目の「授業評価アンケート」を実施し、授業担当者に結果を通知している。さらに、授業担当者に「授業改善シート」の作成、シラバスへの改善内容の記載、翌年度の授業へのフィードバックを依頼している。大幅な改善等がある場合には、歯学部教育委員会の議を経て、教授会で審議、承認している。
教育の達成状況の調査は、全学の教務委員会においても行われている。同委員会では、講義および実習の満足度および達成度等について学生を対象として定期的に調査を行っている。このように、授業、実習を始めとした大学教育全体への満足度の向上等の具体的な検証結果がアンケート調査により得られている。また、各科目の学生による授業評価を通して収集・蓄積された情報は歯学部教育委員会で検討し、FDにより教員全体にフィードバックされている。
歯科医師国家試験の合格状況は、年度によって変動はあるが、2023年度(第116回)は新卒の合格率が91.3%で、国立大学11校中1位、全国29校中4位であった。歯学部教育委員会の「学習支援部会」では、新卒受験生はもとより既卒受験生の合格状況も把握し、不合格者と可能な限り連絡を取り、次年度へ向けた学修計画を聴取したり助言・指導をしたりしている。特に本学は、最低修業年限で卒業すると同時に国家試験に合格する学生の割合、いわゆる「ストレート合格率」が高い。学生が留年することなく着実に進級し、国家試験にも現役で合格するよう教育・指導することでストレート合格率の維持・向上を目指している。
国家試験については、自己採点の結果に基づき各問題毎の正答率を把握し、全国平均より低い問題等を分析して、教員に情報提供し、教育成果の検証と改善につなげている。
臨床研修マッチング状況は、6年次のマッチング率が過去6年間の平均で99.2%であり、各年度とも全国平均を大きく上回っている。卒業生の進路(研修先) は、鹿児島大学病院、他大学病院、病院歯科・診療所の順に多い。また、自衛隊に入隊する者もいる。一方で、国家試験に不合格となり、研修に進めない者もいる。
大学院への進学状況は、2023年度の本学研究科(歯系)入学者4名のうち3名(75%)が、本学卒業生であり、過去5年間の平均では、本学卒業者の18%が本学研究科に進学している。例年、在学生や研修歯科医向けの「大学院説明会」を開催しており、2023年は研修歯科医向けに対面で実施した。
卒後の進路および活動状況については、鹿児島大学歯学部同窓会と協力しながら把握に努めている。卒後3年目の卒業生に対しては、鹿児島大学としてアンケートを実施しており、共通質問事項に各学部独自の質問を加えた内容となっている。歯学部独自の質問としては、「勤務(就学)地」、「勤務(就学)状況」、「在学中の履修科目で有意義なもの・そうでなかったもの」、「ディプロマ・ポリシーをどの程度身に付けているか」、「これからの歯学教育に望むこと」を加えている。アンケートの回答率が極めて低いため分析するには至っていないが、教育委員会が教授会で報告している。なお、ディプロマ・ポリシーの達成度については、人間性やコミュニケーション能力が比較的高く、地域・国際社会における活動がやや低かった。
学生の修学上の種々のデータは、2018年に学部長の下に設置された「歯学部IR室に集約している。現時点では、主に学生原簿に関するデータとともに、入試情報、共用試験関連、総合歯科学(6年次開講科目)の成績、歯科医師国家試験の合否等について情報収集を行っており、学部内の各委員会からの要求に応じてデータの提供を行っている。今後、各授業科目やコンピテンシーの達成度に関する情報を集積し、前述のデータと関連付けて分析を行っていく予定である。
【2-22】検証した結果を教育内容・方法の改善に活用していること。
歯学教育の検証結果を活用した改善については、歯学部教育委員会が各科目担当者に「授業評価アンケート」や「歯学部学年担任・副担任と学年委員との面談報告書」の内容を踏まえた授業改善シートの作成を依頼し、授業改善に役立てている。
学生による授業評価の結果は教員にフィードバックされ、授業の問題点の有無や内容を具体的に把握することができる。各科目担当者は評価結果を基に授業内容や教育方法、シラバス等の継続的改善を図っている。
教育委員会や教授会で取り上げられた教育上の諸課題は、FD委員会がFD研修会・講演会を企画し、教育の質の向上と授業の改善に向けた活動を推進している。
検証結果を活用したカリキュラムや授業内容・教育方法の改善事例としては、以下の取組みが挙げられる。
- ①全国の歯学部に先駆けたアウトカム基盤型教育の導入
2013年度に実施した学部教育に関するアンケート調査結果より、カリキュラム改革の必要性が明らかとなった。そこで歯学部では2015年度にアウトカム基盤型教育のコンセプトを柱とした新たなカリキュラムを導入し、最終到達目標としての学修成果を明確に示し、体系的な教育カリキュラムを構築することにより、社会が求める歯科医療に対応できる人材育成を行っている。
- ②地域・離島歯科医療実習の充実
本学の地理的特性を反映した実習(離島歯科医療実習)を全学生に対して実施できていなかったことを踏まえ、2015年度のカリキュラム改革以降、段階的に地域・離島歯科医療実習の充実を図っていった。
- ③「地域体験実習」における実習内容の変更
2016年度に開講した本実習は、幼稚園や高齢者施設に出向き実習を行うことが主な目的であったが、初年度は学生たちが実習地において何をすればよいのか理解できず、具体的な目的意識を共有していない状況が散見され、授業評価アンケート結果からも意見が寄せられた。そこで、教育内容を見直し、翌年は各実習地において各自が設定したテーマに沿って実習を行うように改善したところ、学生の本実習に対する評価が向上した。
【大項目2の現状に対する点検・評価】
(1)検討及び改善が必要な点
- ①学外における種々の見学や実習が本学部の教育の大きな特徴の一つであったが、コロナ禍での移動制限や人との接触自粛により、予定していた授業形態で実施することができず、対応に苦慮した。
- ②歯学部IR室を整備し、活動を開始しているが、現状ではデータ収集と集約したデータの各部署への提供にとどまっており、分析作業にまでは至っていない。
- ③診療参加型臨床実習を円滑に進める上で必要となる同意を得られた協力患者の確保に努めている。以前より本院に通院し同意を頂いている患者に加えて、現在は新患の多くから臨床実習への同意を得ているが、どれくらいの同意患者を確保すれば十分と判断できるのかの検討が必要である。
- ④本学独自に開発しているe-ポートフォリオ・システムを大幅に改修し、29のコンピテンシーを軸とした能力評価を6年一貫して継続的に行う予定である。運用は開始しているものの、収集されるデータが部分的であり、検証を行うまでには至っていない。
- ⑤歯学教育の実施に必要な教育施設・設備は1980年の竣工以来ほとんど整備されておらず、老朽化が目立つ。また、机・椅子配置を柔軟に行える部屋がないため、アクティブ・ラーニング(グループ討論等)の実施に差し支えている。
- ⑥診療参加型臨床実習において学生専用の技工室は整備されておらず、教員や研修歯科医との共用となっている。2024年9月に予定されている新外来棟への移転に合わせて技工室が新たに整備される計画であるが、それまでは限られた技工台を融通し合いながら技工を行う状況である。また、臨床実習における自験を充実させるために、学生専用もしくは学生優先の診療用ユニットの確保が望まれている。
- ⑦卒業後における学修成果の活用状況の把握(大学教育で修得した能力をどのように実践に生かしているか)は現状では十分ではない。
- ⑧卒業者の進路状況等は、個人情報保護の壁に阻まれて現状では十分に把握できていない。
(2)改善のためのプラン
- ①感染症の感染拡大等により今後対面授業を実施できない場合を想定して、歯学部教育委員会、同委員会の臨床教育部会、および各分野において遠隔授業に対応可能な体制づくりやコンテンツ作成等、代替可能な教育方法を2020年度から随時整備しており、引き続き作業を継続する。
- ②歯学部IR室において、2022年度に業務内容の整理を行い、データ分析作業を開始した。今後はさらにデータ分析作業を進めていく予定である。
- ③毎月開催される臨床教育部会において、2023~2024年度臨床実習生の実習状況について、2か月ごとに診療参加型臨床実習で設定している必須ケースならびに、必須ケース以外のケースも含めた総ケースの達成状況を、自験、介助、見学ごとに報告し、より多岐にわたる症例を経験するよう図っている。今後、医科歯科共通の同意書を運用することにより、幅広い層からさらなる協力患者の確保に努めていく予定である。
- ④2020年度の科学研究費補助金の支援を受けて、e-ポートフォリオ・システムのシステム改修作業を行った。運用可能な部分から利用を開始しており、段階的な能力発達のオンライン評価を行える体制をさらに整備していく予定である。
- ⑤コロナ禍において感染防止対策を徹底した学修環境を整備することは大学全体の課題であり、2021年度の経営戦略経費(学長裁量経費)の配分により整備を行ったため、今後適切に運用していく予定である。
- ⑥学生専用の技工室については現状での整備予定はないが、2024年度に移転する新外来棟では、教員、研修歯科医、学生の共用ではあるが新たに技工台が整備される予定となっている。また、一部の機器の老朽化、故障等については2022年度の経営戦略経費(学長裁量経費)の申請を行っており、演習室内の学生専用の診療用ユニット4台が更新された。患者診療には使用できないため自験を行うことはできないが、自験前のシミュレーションや相互実習に活用している。
- ⑦大学(事務局学生部教務課)が卒後3年目の卒業生に対してアンケートを実施しており、現状では回答率が低いため、多くの卒業生に回答を促すような方法を事務局学生部教務課が中心となり、検討を行う予定としている。
- ⑧卒業者の進路状況等の把握については、同窓会等と連携をとり地道な情報収集活動を行っていく。2021年度より歯科医師臨床研修マッチング結果を同窓会と共有するとともに、2022年3月に卒後の進路把握を開始し、2022年度も同様の活動を行った。また、在学中から卒業生の状況把握が大切である旨を説明し、協力を呼び掛ける。
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3 学生の受け入れ
●項目: 学生の受け入れ方針、入学者選抜の実施
評価の視点 | 評価のポイント | |
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3-1 | 学位授与方針及び教育課程の編成・実施方針を踏まえて学生の受け入れ方針を定め、求める学生像や入学者に求める水準等の判定方法等を明確にしていること。 |
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3-2 | 学生の受け入れ方針に基づき、入学者の適性を的確かつ客観的に評価するための選抜方法・手続等を設定していること。 |
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3-3 | 学生の受け入れ方針や選抜方法・手続等をあらかじめ公表していること。 |
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3-4 | 入学者選抜を責任ある実施体制のもとで、適切かつ公正に実施していること。 |
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<現状の説明>
【3-1】学位授与方針及び教育課程の編成・実施方針を踏まえて学生の受け入れ方針を定め、求める学生像や入学者に求める水準等の判定方法等を明確にしていること。
歯学部では、鹿児島大学の理念および教育目標に基づき、歯学部の基本理念および教育目標を定めている。これらの理念・教育目標に即した学生を受け入れるため、大学のアドミッション・ポリシーに加え、歯学部のアドミッション・ポリシー「求める人材像」4項目を2005年度に制定した。この4項目は現在の「求める人材像」の第1~4項目に当たる。
2016年度には「求める人材像」に第5の項目と学校推薦型選抜Ⅱ(大学入試センター試験を課す;2009年度より募集開始)・総合型選抜(自己推薦型選抜)(自己推薦書の提出と講義型試験を課す;2020年度より募集開始;以下「自己推薦型選抜」)に関する記載を追加した。
鹿児島大学および歯学部の理念・教育目標、カリキュラム・ポリシーに掲げられている要素は「A:基礎学力」「B:専門知識・技能」「C:豊かな人間性、倫理観」「D:挑戦力、積極性、向上心」「E:柔軟な感性、創造性、探究心、解決力」「F:地域社会・国際貢献、使命感」という6つに大別できる。
大学の理念・教育目標には要素B・C・D・E・F、歯学部の理念・教育目標には要素B・C・E・Fがそれぞれ挙げられている。
一方、大学のアドミッション・ポリシーには要素A・C・D・E・Fが挙げられており、特に大学の理念である「進取の精神」にも表現されている要素Dは4項目の全てに含まれ強調されている。
歯学部のアドミッション・ポリシーにも大学のものと同様に要素A・C・D・E・Fが挙げられている。両アドミッション・ポリシーには、教育目標にある要素B(専門知識・技能)の代わりに、要素A(基礎学力)が含まれている。また、アドミッション・ポリシーの改善に関する議論は歯学部入試諮問委員会で継続的に行われている。本学部は「グローカルに(glocally = globally + locally)活躍する歯科医師の養成」をスローガンとしていることから、現在のアドミッション・ポリシーを、要素F「地域社会・国際貢献」をより強調したものへ改変することを検討している。
なお、令和7(2025)年度入試から大学入学共通テストに新規科目「情報」が導入され、歯学部でも入学者選抜に利用することが決定している。「情報」の導入にあたっては、県内高等学校からアドミッション・ポリシーへの記載の追加を強く求められていることから、2024年前半に同ポリシーの更新を計画している。
入学者に求める水準等の判定方法は、募集区分ごとにアドミッション・ポリシー「入学者選抜の基本方針」に記載している。要素Aについては、幅広い基礎学力が身に付いているかを大学入学共通テスト(5教科7科目)の成績で、歯学部専門科目の学修への適性を個別学力検査学科試験(数学・英語・理科(1科目))の成績でそれぞれ評価し、要素C・D・E・Fを高等学校が作成した調査書、自己推薦書(自己推薦型選抜の場合)、面接検査の結果を基にして要素ごとに評価している。
この「入学者選抜の基本方針」の記載について、現状は実質的に各募集区分における配点を文章化しただけのものであって各募集区分の特徴や区分間の違いが判り難いとの指摘があり、図表を使用する等してより判り易いものへの改変を検討中である。
【3-2】学生の受け入れ方針に基づき、入学者の適性を的確かつ客観的に評価するための選抜方法・手続等を設定していること。
募集区分としては、基礎学力(上記の要素A)を重視して評価する一般選抜(前期日程・後期日程)および私費外国人学部留学生選抜を長らく実施してきたが、2009年度に高等学校から人格や歯学に対する情熱に優れた学生の推薦を受ける学校推薦型選抜Ⅱを導入した。また、鹿児島大学が2016年度に国際バカロレア選抜、2020年度に自己推薦型選抜を新設したのに合わせて、歯学部でも両選抜を導入した。
大学入学共通テストは5教科7科目(数学200点・英語200点(リーディング160点+リスニング40点)・国語200点・理科(2科目)200点・地歴公民100点)、個別学力検査学科試験は3教科(数学200点・英語(リーディング&ライティング)200点・理科(1科目)200点)を課しているが、2023年度入試(2022年度実施)から一般選抜前期日程において配点の複数パターン化を開始した(後述)。また、鹿児島大学の全学的取組として近年、外部英語試験を大学入学共通テスト「外国語(英語)」の得点加算に用いる優遇制度を導入しており、歯学部も利用している。
国際バカロレア選抜および私費外国人学部留学生選抜では、大学入学共通テストおよび個別学力検査学科試験は課さず、出願時に提出される資料に基づき学力を評価しており、国際バカロレア選抜ではバカロレアプログラムの成績およびIBフルディプロマのスコア、私費外国人学部留学生選抜では日本留学試験の成績および英語検定(TOEFL又はTOEIC)の成績をそれぞれ用いている。また、学校推薦型選抜Ⅱおよび国際バカロレア選抜については、合格に必要な大学入学共通テストおよびディプロマプログラムの成績をそれぞれ設定し公表している。
自己推薦型選抜は、多面的総合的に受験者の能力を評価することを狙っており、学力の3要素(知識・技能、思考力・判断力・表現力、主体性・多様性・協働性)に関連して受験生が行ってきた活動の根拠資料を付してアピールする自己推薦書の提出と、事前収録された講義の様子をメモを取りながら視聴し終了後に講義内容に関連した問題に答える講義型試験を特徴としている。なお、同選抜には学校推薦型選抜Ⅱと同時に出願することはできない。
上記の学力評価と伴に、全ての募集区分において面接検査を実施し、学ぶ意欲、歯科医療人としての適性等の評価を含めて合否判定を行っている。私費外国人学部留学生選抜では日本語コミュニケーション能力の評価も含めている。各面接検査室では、互いに異なる研究室・診療科に属する教員3名が検査員となって各受験生を評価している。また、私費外国人留学生選抜および国際バカロレア選抜を除き、各検査室に女性の検査員を1名以上配置している。
入学者選抜方法の検証と改善の議論は、歯学部入試諮問委員会で継続的に実施しており、選抜方法を変更する際には同委員会での決議内容を歯学部教授会へと上程し審議・承認を経る。2018年度には歯学部長(歯学部入試諮問委員会委員長を兼ねる)直属の部署として歯学部IR室を設置した。同室では、学生の入試成績、在学中の成績、国家試験の合否、留年・休学の状況等について総合的な情報収集を行い、議論の基盤となる資料を提供している。
自己推薦型選抜について、導入後初の2020年度は広報が十分でなかったためか志願者8名と低倍率であったが、翌年の2021年度には志願者21名へと増え、特筆すべき課外活動等の実績を有する学生を集めることができた。サンプル数および入学後の年数が小さいことから断定的なことは言えないが、同選抜による入学生の学業成績は現時点で良好である。しかし直近の2022年度、2023年度、2024年度では、大学入学共通テストの難化の影響も考えられるものの、合格者がそれぞれ順に0名、1名、0名となった。
国際バカロレア選抜には、2016年度の導入以来2021年度まで志願者がいなかったが、2022年度に1名が志願し合格した。2023年度入試では2名の受験者があり両名とも合格としたが入学には至らなかった。しかし、歯学部教育の国際化を推進する上で、国際バカロレア校出身者を受け入れることは重要な柱のひとつであるとの観点から、同選抜の募集人員を「若干人」から「2」と定数化し、代わりに一般選抜前期日程の募集人員を減じた。国内歯学部で同選抜の募集人員定数化を実施するのは岡山大に続き2校目となる。しかしながら、2024年度入試では志願者がゼロであった。また、出願の条件としているフルディプロマの成績基準が高すぎると指摘があり、その基準の引き下げについて次年度に入試諮問委員会で議論する予定である。
2022年度は大学入学共通テストが大幅に難化した。歯学部が課している教科・科目について見れば、2022年度の平均点は、前身の大学入学センター試験を含めた直近8回(2022年度も含む)の試験の平均に比してマイナス43点(900点満点)であった。学校推薦型選抜Ⅱでは「大学入学共通テストの合計得点が配点合計の70%(630点)未満の場合、総合得点にかかわらず不合格とする」とし、その旨を募集要項にも記載し公表していたことから、募集人員8に対し合格者を1名しか出すことができなかった。2023年度からは「大学入学共通テストの合計得点が配点合計の70%(630点)未満の場合、総合得点にかかわらず不合格とすることがある」と改めることとした。2023年度の大学入学共通テストの全国平均点は、難化した昨年度よりは僅かに上昇したが一昨年度には遠く及ばず、大学入学共通テストの得点割合を絶対的な基準に用いることのリスクを改めて示す形となった。
募集人員が最大である一般選抜前期日程の志願者数・受験者数は、2015年度をピークに減少傾向にあり、2022年度は志願倍率2.7倍、実質競争倍率2.0倍となった。そこで2023年度からは、従来の大学入学共通テスト重視の配点をパターンA、新設する個別学力検査学科試験重視の配点をパターンBとし、各受験生について総合得点が高くなる配点パターンを自動的に選択し合否判定を行う方法を導入した。こうして実施された2023年度入試では、一般選抜前期日程が志願倍率5.5倍、実質競争倍率4.5倍で、2015年度入試に匹敵する高倍率となった。続く2024年度入試では、一般選抜前期日程が志願倍率6.0倍、実質競争倍率4.9倍と更に倍率が上昇した。配点複数パターン化の影響に加え、本学が近年の歯科医師国家試験で良好な合格実績を上げていることが原因であると考えられる。
上記したもの以外の選抜方法変更には、2008~2009年度に一般選抜前期日程・後期日程における配点見直しと個別学力検査実施科目の追加、2015年度に私費外国人学部留学生選抜における日本留学試験の配点見直し、2017年度に大学入試センター試験の外国語について受験科目を英語に限定(独・仏・中・韓語を除外)したこと等がある。外国語を英語に限定したのは、英語教育を取り入れた学部教育カリキュラムを制定したことおよび過去10年間において英語以外の言語を選択した受験生がいなかったことによる。
【3-3】学生の受け入れ方針や選抜方法・手続等をあらかじめ公表していること。
鹿児島大学および歯学部の理念・教育目標およびアドミッション・ポリシーは「入学者選抜要項」、「学生募集要項」の冊子体および大学・歯学部のホームページで公表している。2024年度入試の「入学者選抜要項」は7月下旬、「学生募集要項」は国際バカロレア選抜が8月下旬、自己推薦型選抜、学校推薦型選抜Ⅱ・私費外国人学部留学生選抜が10月上旬、一般選抜(前期日程・後期日程)・学校推薦型選抜Ⅱ・私費外国人学部留学生選抜が11月中旬にそれぞれ公表された。また、入試に関する情報は「受験生のための大学案内」の冊子、オープンキャンパスおよび大学説明会、高等学校への出前授業等でも発信している。
【3-4】入学者選抜を責任ある実施体制のもとで、適切かつ公正に実施していること。
鹿児島大学入学者選抜規則に基づき、大学入学共通テストの実施組織として歯学部では歯学部長が試験場責任者を務め試験場本部の業務を総括する。また、個別学力検査等の実施組織として、歯学部では歯学部長が検査場責任者を務め検査場本部の業務を総括する。
学生受入のあり方について検証する組織としては、鹿児島大学入学者選抜規則に基づいて設置された全学的な入試委員会(委員長:教育担当理事)および鹿児島大学歯学部入試諮問委員会規則に基づいて設置された歯学部入試諮問委員会(委員長:歯学部長)があり、全学入試委員会の歯学部委員2名が歯学部入試諮問委員会の委員となり、内1名は副委員長となる。
入試委員会では、大学入学共通テスト、個別学力検査等、編入学試験および大学院入学試験の実施に関する事項並びに入学者選抜方法の改善、中長期的な入学者選抜方法のあり方の策定および入学者選抜機能の検証等に係る事項を審議している。さらに、学生選抜方法を含む学生受入に関する重要事項に関しては、教育研究評議会(議長:学長)で審議・決定されている。入試委員会会議は例年10回程度開催されている。歯学部入試諮問委員会では、歯学部の入試に関することを中心に検討し、歯学部教授会に委員会案を上程している。歯学部入試諮問委員会会議は例年15回程度開催されている。全学入試委員会および歯学部入試諮問委員会では、学生選抜に関する議論・決定および報告を実施しており、学生受入のあり方について恒常的に議論する体制は整っていると言える。
入学者選抜における公平性を確保するために以下のように配慮している。選抜に係る資料の管理は、入試関係事務を担当する大学本部入試課および学務課歯学教務係が行い、それ以外の歯学部教職員は関与しない。当該年度の大学入学共通テスト又は個別学力検査を鹿児島大学で受験する予定がある近親者がいる教職員は、各試験の関連業務に携わらせない。個別学力検査のうち、学科試験の答案の採点は全学的な答案採点専門委員会によって受験番号および受験者氏名が秘匿された状態で実施される。大学入学共通テストおよび個別学力検査の成績に基づき、歯学部入試諮問委員会で合格予定者および追加合格候補予定者(順位付き)の予備選考が行われ、その結果を歯学部教授会で審議し了承する。
●項目: 定員管理
評価の視点 | 評価のポイント | |
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3-5 | 入学定員(募集人員)に対する入学者数及び収容定員に対する在籍学生数を適正に管理していること。 |
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<現状の説明>
【3-5】入学定員(募集人員)に対する入学者数及び収容定員に対する在籍学生数を適正に管理していること。
2010年度までは入学者が定員に対して1名又は2名超過していたが、入学定員を55名から53名へ変更した2011年度以降は過不足無く定員を満たしている。
各学年の在籍学生数は休学・留年・退学のため必ずしも入学定員と一致しないが、2023年度末時点で歯学部全体の収容定員318名に対して在籍者数は319名であり、各学年の平均の在籍比率は100.3%である。なお、歯学部では編入学を実施していない。
学年別にみると、おおむね毎年1年次の在籍者が多い(入学定員を上回る)傾向にある。これは主に、入学初年次に大学での勉学や生活環境の変化に対応できないことや、医学部再受験を理由とする休学者・留年者がいることによる。修学状況が良好でない学生に対しては、担任・副担任および各科目担当教員が随時面談を行い、個別指導や保護者との連携等の対策を講じている。
文部科学省医学教育課作成の「各大学歯学部歯学科の入学状況及び国家試験結果等(2013年度~2023年度)」が示すとおり、本学部では休学・留年者が全国的にみて少ない。
【大項目3の現状に対する点検・評価】
(1)検討及び改善が必要な点
- ①歯科医師国家試験の最低修業年限合格率は、文部科学省が発表を始めた第103回試験から2023年実施の第116回試験までの平均で全国歯学部中4位(73.9%)と上位にあり、第114回では初めて1位を達成した。しかし、各年度の既卒を含めた受験者全体の単純合格率は依然低調であり、学部での教育内容等の見直しと合わせ、少しでも多くの志願者を集め、優れた資質とモチベーションを持つ受験生を正しく見極め選抜しなければならない。大学入試に係る制度の変更(大学入学共通テストの開始、新科目の導入等)、少子化に伴う受験生世代の人口減少、歯科医師国家試験の選抜試験化等、歯学部を受験する学生のリクルートおよび選抜をめぐる環境は依然として厳しい中、可及的早急な対策が求められている。
- ②一般選抜後期日程および学校推薦型選抜Ⅱの合否判定では大学入学共通テストと面接検査のみを利用し面接以外の個別学力検査を課していないこと等について、妥当性の検証が必要である。
- ③的確かつ客観的に学生を評価できる面接検査の方法を模索しているが、その成否について現時点で十分に検証できておらず判断が難しい。面接方法や評価の見直し等、改善に向けた取組をより一層強力に推進する必要がある。
(2)改善のためのプラン
- ①引き続き歯学部IR室で収集したデータを多面的に解析し、歯学部入試諮問委員会において選抜方法の改善について積極的に議論を進める。それと同時に、歯学部ホームページの充実、高等学校への出前授業、市民講座、他学部・他大学との合同進学説明会等での積極的な広報活動を推進する。
- ②学校推薦型選抜Ⅱの入学生は現時点で他の募集区分に比べ国家試験合格率等で有意に優れており、現時点で選抜方法の変更は想定していないが、募集人員の更なる拡大については志願者数の推移とIR分析の結果を考慮しつつ入試諮問委員会で継続的に議論する予定である。一般選抜後期日程の入学者の中には医学部を本命としているものが多く休学・留年・退学率が高いことから、歯科医学・歯科医療に対する熱意を持った学生をより適切に選抜できる方法を採用する必要があることについて入試諮問委員会内で意見が一致しており、その具体策について議論中である。
- ③より優れた資質を備えた入学者を選抜する試みについて入試諮問委員会で継続的に議論している。
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4 教員・教員組織
●項目: 教員組織の編制
評価の視点 | 評価のポイント | |
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4-1 | 教員組織の編制方針を策定していること。 |
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4-2 | 教員組織の編制方針に基づき、教育研究活動の実施に必要な教員を配置していること。 |
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4-3 | 学生数に対する専任教員の比率が適切であること。 |
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4-4 | 持続可能性や多様性(性別、国籍等)に配慮して教員が適切に構成されていること。 |
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4-5 | 歯学研究を遂行し、将来の歯学研究を担う人材育成のため高い研究力を有していること。 |
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4-6 | 教員の募集・採用・昇任を適切に行っていること。 |
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<現状の説明>
【4-1】教員組織の編制方針を策定していること。
大学設置基準第7条では教員組織について次のように規定している。
第七条 大学は、その教育研究上の目的を達成するため、教育研究組織の規模並びに授与する学位の種類及び分野に応じ、必要な教員を置くものとする。
2 大学は、教育研究の実施に当たり、教員の適切な役割分担の下で、組織的な連携体制を確保し、教育研究に係る責任の所在が明確になるように教員組織を編制するものとする。
3 大学は、教育研究水準の維持向上及び教育研究の活性化を図るため、教員の構成が特定の範囲の年齢に著しく偏ることのないよう配慮するものとする。
4 大学は、教育研究実施組織及び前項の組織の円滑かつ効果的な業務の遂行のための支援、大学運営に係る企画立案、当該大学以外の者との連携、人事、総務、財務、広報、情報システム並びに施設及び設備の整備その他の大学運営に必要な業務を行うため、専属の教員又は事務職員等を置く組織を編制するものとする。
5 大学は、当該大学及び学部等の教育上の目的に応じ、学生が卒業後自らの資質を向上させ、社会的及び職業的自立を図るために必要な能力を、教育課程の実施及び厚生補導を通じて培うことができるよう、大学内の組織間の有機的な連携を図り、適切な体制を整えるものとする。
6 大学は、教育研究水準の維持向上及び教育研究の活性化を図るため、教員の構成が特定の範囲の年齢に著しく偏ることのないよう配慮するものとする。
7 大学は、二以上の校地において教育を行う場合においては、それぞれの校地ごとに必要な教員及び事務職員等を置くものとする。なお、それぞれの校地には、当該校地における教育に支障のないよう、原則として基幹教員を少なくとも一人以上置くものとする。ただし、その校地が隣接している場合は、この限りでない。
まず、本学の教育研究活動を推進する上で必要となる教員組織の全体的な設計について説明すると、教育研究を担う教員組織は、2015年4月に学術研究院制度に移行した。これは、学長のリーダーシップの下、社会の変化に対応した教育研究組織をつくり、教育課程の編制および学内資源の再配分を全学的な視点で柔軟かつ迅速に進めることを目的に、従前の教育研究組織を教員組織と教育研究組織に分離し、新たに教員組織として学術研究院を設置したものである。学術研究院は、5つの「学域」と14の「学系」からなる。学域は、現在の学部・研究科等の教育研究分野に対応した一定規模の組織を形成し、学系は、学域の下に教員の専攻分野に応じた組織となっている。歯学部の教員組織は、「医歯学域歯学系」に所属し、主として学部の教育等に係る業務を担当する教員(以下、「歯学系教員」)および「医歯学域鹿児島大学病院」に所属し、主として附属病院の歯科診療等の業務等を担当する教員(以下、「病院歯系教員」)により組織されている。
歯学部の専門教育は、主として歯学系教員が担当している。また、共通教育は、学術研究院制度を活用した全学支援体制に基づき、「総合科学域総合教育学系」の総合教育機構共通教育センター担当教員と全学の教員によって行われている。歯学部の教育を担当する大学院医歯学総合研究科の歯系研究分野は、基礎系9分野および臨床系12分野の合計21分野である。一部の例外を除き、基礎系分野には各3名、臨床系分野には各6名の歯学系教員が配置されている。これらの分野は、「歯学教育モデル・コア・カリキュラム」に基づいた教育を十分に実施できるように設置されている。必要な分野や教員の配置は、時代の要請に応じて随時見直されてきた。最近では、2010年に歯科医学教育実践学分野、2020年に国際歯科・人間科学分野が設置され、それぞれ2名の歯学系教員が配置されている。
歯学部の責任体制としては、学部長を置き、さらに学部長を補佐する副学部長3名(社会連携担当、財務・研究担当、教育・評価・学生支援・男女共同参画担当)を置くことにより、教育研究に係る責任の所在を明確にし、学部運営に関する事項を総括している。
本学の教員に求める能力・資質(選考基準)については、大学設置基準に規定する教員の資格および本学の教員の選考に関する規則に基づき教員の選考が行われている。
【4-2】教員組織の編制方針に基づき、教育研究活動の実施に必要な教員を配置していること。
上記【4-1】の教員の編制方針に基づき、歯学部の教育研究活動の実施に必要な教員を配置している。具体的には、学士課程収容定員である歯学科318名(2023年度の在籍者数319名)に対し、2023年5月1日現在、歯学系教員83名(教授17名、准教授10名、講師8名、助教48名)を配置している。学校教育法に基づく大学設置基準上の専任教員数(収容定員360名までの場合の専任教員数:75名以上、教授、准教授または講師の合計数は36名以上とし、そのうち18名以上は教授とする。附属病院における教育、研究および診療に主として従事する相当数の専任教員を別に置くものとする)を満たしていないが、原因は、複数の退職教授の後任を選考中であったためである。また、病院歯系教員47名(講師12名、助教35名)を配置している。
歯学系教員および病院歯系教員を合わせた職階別の人数の比率は、教授が13.1%、准教授と講師がそれぞれ7.7%と15.4%(計23.1%)、助教が63.8%であり、裾野の広い分布となっている。本学部において開講している主要授業科目は、主として専任の教授、准教授が担当している。高度な専門性を目指す教育的観点から、専任の教授や准教授の下に56名の非常勤講師を配置している。
また、臨床教育の充実と附属病院における診療体制の強化を目的とした教員職位特別呼称として、臨床教授11名、臨床准教授2名、臨床講師30名を任命し、指導体制の充実を図っている。さらに、臨床参加型臨床実習指導に必要な資質・要件を持つ教員として、指導歯科医の資格を有する教員を73名配置している。
【4-3】学生数に対する専任教員の比率が適切であること。
歯学系教員は、2023年5月1日時点で基礎系分野が28名、臨床系分野が55名の合計83名が在籍しており、2023年度における専任教員1名当たりの学生数は、歯学部全体で3.8名(在籍学生数319名/歯学系教員83名)である。臨床系分野では、病院歯系教員43名も学部教育の一部を担っていることから、それも加味すると、実質的な比率は3.8より小さくなると考えられる。
学生の能動的な学修を促進し、よりきめ細やかな教育を実施するためには、専任教員数を増やすことが望まれるが、現実的には困難である。そこで、前述のとおり、歯学系教員および病院歯系教員に加えて非常勤講師56名、臨床教授11名、臨床准教授2名、臨床講師30名の合計99名を確保することで教育の充実を図っている。具体例として、歯学部の卒業時到達目標(コンピテンス)の一つである「地域医療とヘルスプロモーション」に関わる科目群に含まれる「地域医療学実習」では、臨床教授と臨床准教授、ならびに臨床講師の合計43名が指導にあたっており、地域医療の最前線に間近に関わる機会を提供している。
【4-4】持続可能性や多様性(性別、国籍等)に配慮して教員が適切に構成されていること。
歯学系教員の職階別の年齢構成は、教授・准教授が40代から60代、講師が30代から60代、助教が20代から60代と職階に応じた年齢構成となっており、持続可能性の点で適切に構成されていると考えられる。また、歯学系教員に占める女性教員の割合は、教授が0%、准教授が20.0%、講師が25.0%、助教が43.8%であり、全体では30.1%(83名中25名)である。歯学系教員の採用者に対する女性教員の割合について、2017年度から2023年度までの7年間では32.4%(37名中12名)である。病院歯系教員の採用者を含めると、2017年度から2023年度までの7年間では44.3%となる。したがって、女性活躍推進法の行動計画(2021~2025年度)の求めている「教育職(研究職を含む)採用者に占める女性割合を30%以上とする」を達成している。
国籍の多様性については、歯学系教員の助教として外国人教員が1名採用されているのみであり、改善の余地がある。
【4-5】歯学研究を遂行し、将来の歯学研究を担う人材育成のため高い研究力を有していること。
歯学部は、沖縄を含む南九州地域における唯一の歯科医学教育・研究施設として、それぞれの分野で、活発な研究活動と学生への研究指導を行っている。その研究対象は、生命の神秘の解明につながる基礎医学研究や、最新の生物学的技法を駆使した歯科領域疾患の診断・治療法の開発等、歯科医学を中心にしたライフサイエンス全般にわたっている。
歯学部は、大学院医歯学総合研究科と連携し、口腔先端科学教育研究センターを通して研究の活性化・推進を図っている。同センターでは、毎年研究発表会を主催し、大学院生・教員に加えて学部学生のセッションも設け、優秀な研究発表を表彰している。また、大学院医歯学総合研究科では、研究科で行われている様々な研究の中から中核となるものを選定し、コア研究としている。歯学系教授が担当教授となっているコア研究として「再生医療の独創的基盤研究の構築」、「新規骨再生標的分子の同定と作用機序の解明」、「歯科医学分野におけるシミュレーターを使用した全身管理教育の有用性の検討」の3件が、また、歯学系教員が関わっているコア研究として「長期記憶と認知柔軟性に関わる神経機構の解明」、「神経―免疫クロストークによる疾患制御機構の解明」、「基礎・臨床ならびに医歯工連携によるライフステージメディシンの横断的研究」、「難治性疾患への革新的な遺伝子治療と再生医療の研究開発」の4件が推進されている。
科学研究費補助金の採択状況について、最近の5年間は、30%以上の新規採択率であり、全国の機関等における採択率を大きく上回っている。しかし、他の国立大学歯学部と比較した採択件数や採択金額は、決して多くはない。なお、共同研究や受託研究は、毎年数件を獲得している。
組織としての研究に対する第三者評価については、第3期(2016~2021年度)の国立大学法人評価の研究に関する現況分析があり、「研究活動の状況」と「研究成果の状況」について「相応の質にある」という評価を得ている。
【4-6】教員の募集・採用・昇任を適切に行っていること。
歯学系教員および病院歯系教員は、職階ごとに資格基準や選考基準等を定めている。教員候補者は、原則として公募とし、厳格な審査による選考を行っている。なお、准教授、講師および助教の選考の場合で一定の条件を満たす場合は、公募を省略できるとしている。
歯学系教員の選考に際しては、最初に歯学系長(歯学部長)から個別人事案件を学長に提出する。学長により承認された個別人事案件について、教員選考委員会を設置のうえ候補者を選考し、歯学系会議、医歯学域会議の議を経て、学長に推薦する。学長は、推薦された候補者について適否を決定する。鹿児島大学病院歯系教員の選考に際しては、最初に当該部門科長からの要望を受け、病院長から個別人事案件を学長に提出する。学長により承認された個別人事案件について、教員選考委員会を設置のうえ候補者を選考し、鹿児島大学病院学系会議の議を経て、学長に推薦する。学長は、推薦された候補者について適否を決定する。
教授を選考する場合は、最初に医歯学総合研究科企画委員会および医歯学総合研究科教授会で当該分野の将来構想と教授選考の必要性を審議し、選考開始の是非を判断している。選考では、歯学部のみならず大学院医歯学総合研究科も担当することを前提とし、教育研究に係る実績、資格および教育・研究・臨床への抱負等の書類審査はもとより、セミナーや面接等による総合的な評価を行っている。研究業績は、論文数やインパクトファクター、科学研究費補助金等の取得状況等も評価している。また、臨床教育は、手術実績、診療担当科の専門的臨床能力および先進医療の開発と実施の状況等も評価している。
任期制について、大学院医歯学総合研究科設置(2003年4月)以降および医学部・歯学部附属病院設置(2003年10月)以降の採用者は、任期付き職員とし、それ以前の任期付職員は、任期の定めのない職員に移行した。その後、教授は、2007年4月以降任期の定めのない職階となったが、2003年4月1日以後に採用された教授以外の教員は、任期制が引き続き適用されており、再任に当たっては、規則・基準に基づき審査を受ける必要がある。
5年の任期中の業績が特に優秀と認められる場合、任期に関する細則第5条の規定により任期の定めのない教員へ移行させることができる。なお、過去3年間で任期満了により退職した教員の数は、6名である。
教員の出身大学に関して、教授については、2023年5月現在、自校率(自校出身者の割合)が17.8%(2名/17名)、学内昇任の割合が23.5%(4名/17名)となっており、内部昇格に偏らない適切な人事選考が行われている。
●項目: 教員の資質向上等
評価の視点 | 評価のポイント | |
---|---|---|
4-7 | 教員の資質向上を図るための体制を整備していること。 |
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4-8 | 教員の資質向上を図るために、組織的な研修及び研究を定期的に実施していること。 |
|
4-9 | 専任教員の教育活動、研究活動、組織運営、社会との関係の形成・社会貢献等について、適切に評価していること。 |
|
<現状の説明>
【4-7】教員の資質向上を図るための体制を整備していること。
教員の教育能力の向上を図るための組織・体制として中心的な役割を担うのは、歯学部FD委員会である。歯学部FD委員会は、歯学部の組織であるとともに、全学のFD委員会の下部組織でもある。部局(歯学部)のFDに関する指針は、全学の「鹿児島大学ファカルティ・ディベロップメントに関する指針」に示されており、部局の責務も併せて規定されている。歯学部のFD活動は、この全学の指針に則りつつ、歯学部独自の課題について各委員会からの要望も考慮して、歯学部FD委員会が主体となって行っている。
【4-8】教員の資質向上を図るために、組織的な研修及び研究を定期的に実施していること。
歯学部FD委員会は、「鹿児島大学ファカルティ・ディベロップメントに関する指針」に基づき、歯学部の各種委員会からの要望を考慮して年間3~6回ほどのFD講演会等を企画・実施している。
歯学部のFD活動の特徴としては、純粋な教育技法に関するFD活動のみならず、2016年4月に発生した熊本地震における歯科救援活動や科学研究費獲得向上のポイント、共用試験歯学系CBT作問等、教育に関わる広範かつ間接的な重要事項に関しても、他の委員会と連携協力しながら講演会等を実施している。
本学では、各部局のFD活動を年度ごとにまとめて報告することが義務付けられており、全部局の報告書を「鹿児島大学FD報告書」としてまとめたものが本学のホームページで公開されている。
また、本学では、年間の合計参加率(1回でもFD活動に参加した教員数で計算)が75%以上となることを部局に求めている。歯学部は、2016年度から2023年度にわたって80%を超えており、2020年度は98%を超えていた、歯学部教員のFD活動に対する意識の高さを示す結果となっている。また、歯学部FD委員会では、講演会等の企画終了後に参加者に対して企画に関する感想と今後希望する企画について自由記述のアンケートを実施し、次回以降の企画の参考としている。
歯学部で行われている授業について、2023年度後期に授業公開と教員による授業参観を実施し、参観者が記入したアンケート結果を授業担当教員にフィードバックしている。
【4-9】専任教員の教育活動、研究活動、組織運営、社会との関係の形成・社会貢献等について、適切に評価していること。
専任教員の基本情報、教育活動、研究活動、組織運営、社会貢献等については、「研究者総覧」として本学のホームページで公開されている。専任教員の諸活動に関する評価については、「鹿児島大学における内部質保証に関する規則」において規定されている。この規則に基づき「鹿児島大学における構成員の活動状況等の点検・評価実施要項」が定められている。
教員は、教育、研究、社会貢献、国際交流、診療、管理運営の6つの基本項目について毎年自己点検を行い、その自己点検に基づき部局長が3年ごとに構成員評価を行うものと定められている。具体的には、歯学系教員は、「構成員の活動状況等の自己点検・評価シート」および「昇給評価事項記入シート」に自己の業務比率に応じた自己評価を記載し、歯学系教員については部局長である医歯学総合研究科長、病院歯系教員については病院長に提出して評価を受ける。
2021年度には、直近3カ年(2018~2020年度)の構成員評価が実施された。その結果は、報告書として取りまとめられて学長に報告され、「構成員評価報告書」として本学のホームページ上で公開されている。上記研究者総覧および研究活動等の業績評価に関連し、教員は、自己の業績について、適宜、研究者情報管理システムDB-Spiralに入力し、内容の更新作業を行うように「研究者情報管理システムの管理・運用に関する要項」で定められている。なお、同システムは、2021年度から外部データーベースresearchmapとの連携が図られている。入力されたデータは、歯学部IR室で集計を行っている。
歯学部独自の教員評価に関連した取組として、歯学部ベストティーチャー賞やベストライター賞、ベストリサーチャー賞を選考し、教員の意欲向上と教育研究活動の活性化を図っている。
歯学部ベストティーチャー賞は、「鹿児島大学ベストティーチャー賞実施要綱」および「歯学部ベストティーチャー賞選定のための教員授業評価実施要綱」に基づき歯学部FD委員会が歯学部の2年次生から4年次生を対象にアンケートを実施し、各学年の最多得票者を歯学部ベストティーチャーとしている。さらに、歯学部ベストティーチャーの中から1名を選考して歯学部からの推薦者とし、医歯学総合研究科FD委員会と協議の上、「鹿児島大学ベストティーチャー賞」の「歯学部・医歯学総合研究科(歯学系)」カテゴリーの候補者を決定して学長へ推薦する。鹿児島大学ベストティーチャー最優秀賞およびベストティーチャー賞の受賞者には、表彰状のほか、次年度の教育研究費が授与される。
歯学部ベストライター賞は、「鹿児島大学歯学部ベストライター選定に関する申合せ」に基づき歯学部教育委員会の下部組織である臨床教育部会が歯学部の6年次生を対象として臨床実習終了直後にアンケートを実施し、ライター(臨床実習担当教員)の中から選考基準に該当すると考えられる3名(成人系、発達系、外科系各診療科より1名ずつ)を選考する。その3名を受賞候補者として上申し、歯学部長が決定の上、「ベストライター賞」の表彰状が授与される。
歯学部ベストリサーチャー賞は、歯学部研究体制委員会が教授を除く歯学系教員や病院歯系教員等を対象として公募し、調査年にIFが付与された学術誌に掲載された原著論文、総説、症例報告について、著者の順番やIF値を基に点数化して、基準以上のものを表彰するものである。なお、受賞者には表彰状が授与されるほか、受賞者の期末・勤勉手当査定時の参考にされる。
【大項目4の現状に対する点検・評価】
(1)検討及び改善が必要な点
- ①大学設置基準は満たしており、教員の年齢構成、男女比、自校率等のバランスはとれているが、外国人教員数が十分とはいえない。
- ②国立大学歯学部の中での科研費科学研究費補助金の獲得件数は決して多くなく、大型予算の獲得数も少ない。その他の外部資金の獲得金額も多くはない。
- ③教員評価は、自己点検・評価シートおよび昇給評価事項記入シートで評価されるが、これは自己申告によるものであり、教員間評価等の客観的実質的な評価と教員へのフィードバックについて検討が必要である。
- ④毎年、教員の教育能力の向上を目的として、FD活動計画書に基づく組織的な取組みを行っており、その参加率も高い。しかし、不参加が特定の教員に偏っている等、教育現場への実質的なフィードバックを必ずしも担保できていない。
(2)改善のためのプラン
- ①外国人教員数については、歯学部人事委員会および歯学系会議等で継続的に検討する。
- ②科学研究費補助金を始めとする外部資金の獲得件数や獲得金額の向上については、構成員に対して本学南九州・南西諸島域イノベーションセンター研究・産学地域連携ユニットが実施する「科研費申請アドバイザー制度」の積極的活用や本学研究推進部研究協力課が開催する「科学研究費対策学内講演会」への参加等を促す。さらに、歯学部独自の取組みとして、歯学部FD委員会で外部資金獲得のためのFD講演会等を2023年度に開催した。
- ③現状の「自己点検・評価シート」および「昇給評価事項記入シート」を用いた教員評価および教員へのフィードバック法の問題点を抽出し、より客観性が高く、かつ、構成員の納得が得られるような具体的な評価基準の策定について、2022年度より歯学部企画委員会および歯学部FD委員会において検討を開始している。
- ④FD活動への教員の参加を促す取組みとして、FD講演会を後日オンデマンド視聴できるような取組みを2021年度より開始した。2022年度以降、本方式を定着させている。一方で、FD活動は、組織の方向性を決めるものであり、その活動の評価は、構成員の参加率だけでなく、組織運営や組織改革への波及効果等、何らかの目標を定めて行う必要がある。2022年度より継続して、歯学部FD委員会および歯学部企画委員会等において検討している。
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5 自己点検・評価
●項目: 自己点検・評価
評価の視点 | 評価のポイント | |
---|---|---|
5-1 | 組織的な自己点検・評価に関する体制を整備していること。 |
|
5-2 | 教育研究活動について組織的・継続的な自己点検・評価を行っていること。 |
|
5-3 | 学外の有識者による第三者評価を受けていること。 |
|
5-4 | 自己点検・評価及び第三者評価の結果を公表し、社会に対する説明責任を果たしていること。 |
|
<現状の説明>
本学では、「国立大学法人鹿児島大学における内部質保証に関する規則」が制定され、内部質保証に係る実施・責任体制が明記されている。
歯学部においては計画の立案・改善策の検討は教授会が担っている。質保証の責任者として歯学部長が指定されている。
【5-1】組織的な自己点検・評価に関する体制を整備していること。
部局長を筆頭とする歯学部執行部および2018年度から設置された「歯学部自己評価委員会」の構成員が主に対応し、国立大学法人の法人評価および機関別認証評価にて「適合」の判定を受けた、自己点検・評価については年度計画に則った年度計画を立案・実施し、進捗状況にかかる評価を年度内に2回行っている。
部局では「自己評価委員会」が、教育機関としての質を保証するための法人評価、認証評価、分野別教育評価等を行っている。歯学教育の質保証としての教育評価における基準となる具体的指標として、令和3年度より「鹿児島大学歯学部における成績評価におけるガイドライン」を制定し、学生教育の質の保証を考慮した評価を行っている。
自己評価委員会を中心に歯学部教育委員会、歯学部学生委員会、歯学部研究体制委員会を始めとする他の委員会と連携し、教育研究活動のPDCAサイクル実行を行うようにしている。毎年の点検報告書は歯学部自己評価委員会において検討まとめられ、WEB上で一般公開される体制となっている。
教育の質保証の重要な項目である教員の評価については、助教以上の全教員を対象として「鹿児島大学における構成員の活動状況等の点検・評価実施要項」が定められている。各教員は所定の点検項目について毎年自己点検を行い、その自己点検結果に基づいて部局長が毎年評価を行い昇給に反映させている。
教育研究評議会は、歯学部の教育の質評価指標の一つとして、歯科医師国家試験合格率を挙げており、それにより、大項目3において述べたとおり改善が認められるも常に学部内の教育内容見直しと合わせ歯学部志願者への選抜方法の時代に合わせた改変を行う旨を報告している。また2022歯学教育評価においても適合の評価を受けている。
【5-2】教育研究活動について組織的・継続的な自己点検・評価を行っていること。
大学の教育研究活動は、文部科学大臣が定める国立大学法人の中期目標・中期計画およびその評価指標を達成するために策定したロードマップに沿って実施し、事業年度ごとにロードマップの進捗状況について点検評価を行い、実績報告書を作成している。歯学部では、歯学部企画委員会において全学のロードマップに則った行動計画を立案・実施し、進捗状況に係る中間評価と年度末評価を行っている。
さらに、歯学部では今後の歯学の分野別評価受審に向けた準備と課題の洗い出しを目的に歯学部自己評価委員会を設置し、2018年度より毎年自己点検・評価を実施している。評価基準として2012~2016年度大学改革推進等補助金「医学・歯学教育認証制度等の実施」事業の下に実施された「歯学教育認証制度等の実施に関する調査研究」で策定された歯学教育認証評価基準最終版を用いた。また、本学では、鹿児島大学監事監査規則に基づき、業務の適正並びに効率的および効果的な運営を期するとともに、会計経理の適正を確保することを目的とした監事監査も行われており、これに基づく自己点検も実施される。
歯学部では、教育活動の点検・評価の一環として、歯学部教育委員会が学生を対象に教育目標、教育プログラム、学修成果、講義および実習の満足度、達成度並びに指導方法等について授業科目ごとに「授業評価アンケート」を実施し、調査結果は歯学部ホームページ上に公表している。「授業評価アンケート」の集計結果は各分野にフィードバックされ、次年度へ向けた改善について「授業改善シート」を用いて授業改善が行われている。
【5-3】学外の有識者による第三者評価を受けていること。
本学は、学則第3条第2項で「前項の点検および評価に加え、第三者評価等の多様な評価の結果を、教育研究等の不断の改善・改革に反映させるものとする。」と規定している。
本学の教育研究の活動状況に対する第三者評価としては、国立大学法人評価委員会が中期計画の達成という視点から行う評価と中期目標期間終了後の総合的な評価が挙げられる。その評価結果は文部科学省および本学のホームページ上で公表されている。
学校教育法では、「大学は、前項の措置に加え、当該大学の教育研究等の総合的な状況について、政令で定める期間ごとに、文部科学大臣の認証を受けた者(以下、認証評価機関)による評価(以下、認証評価)を受けるものとする。」と規定している。本学は、2007年度、2014年度および2021年度に認証評価機関(独立行政法人大学改革支援・学位授与機構)による機関別認証評価を受審し、その評価結果は当該機構および本学のホームページ上で公表されている。
歯学部は2022年に公益財団法人大学基準協会による分野別評価を受審し、評価結果は同基準協会および歯学部のホームページ上で公表されている。
【5-4】自己点検・評価及び第三者評価の結果を公表し、社会に対する説明責任を果たしていること。
歯学部の自己評価書は本学歯学部ホームページ上で公開されている。
また、上記【5-2】および【5-3】で記述したとおり、教育研究活動に係る自己点検評価および第三者評価受審に係る評価結果は全て本学および評価機関のホームページ上で公表されており、社会に対する説明責任は果たされている。
また、学校教育法施行規則に定める教育研究活動等の状況についても、事項ごとに教育情報として本学ホームページ上で公表している。
さらに、鹿児島大学のInstitutional Research(IR)活動の一環として、過去数年にわたる既存の公開されている情報を活用し、その推移・割合をグラフで可視化したデータ集を「Fact Book」としてホームページ上で公表している。
●項目: 結果に基づく教育研究活動の改善・向上
評価の視点 | 評価のポイント | |
---|---|---|
5-5 | 自己点検・評価及び第三者評価の結果を教育研究活動の改善・向上に結びつけていること。 |
|
<現状の説明>
【5-5】自己点検・評価及び第三者評価の結果を教育研究活動の改善・向上に結びつけていること。
本学の学則に定める教育研究等の不断の改善・改革の反映についての規定に則り、毎事業年度および中期目標期間終了後に受ける国立大法人評価委員会による業務実績に関する評価や機関別認証評価において指摘された改善事項を検討し学部長にフィードバックしている。歯学部長は副学部長、関係委員会に指示し、改善策を策定し改善を実行している。
具体的には教育委員会の授業評価、学生委員会の学生面談による教員に対する改善点の抽出等結果が自己評価委員会に報告され、学部長を中心として改善案を実施する体制を維持し、改善がフィードバックする仕組みとなっている。
歯学部における改善の具体的な事例
- ①全国に先駆けたアウトカム基盤型教育の導入
2015年度にアウトカム基盤型教育カリキュラムを導入して毎年教育委員会にて各担当科目のアウトカムを見直している。またこれら教育システムを維持するための教員評価、学生アンケート、学生に対するインタビューは上述のとおりである。
- ②地域・離島歯科医療実習の充実
本学の地理的特性により地域・離島歯科医療に対しての啓発活動および教育活動は本学部の使命と考え常に教育改善には尽力をしてきた。「離島歯科医療実習」は本学部と連携している歯科医療機関の協力を得て、更に教育資源を共用するために医学部との合同実習も行っている。
- ③研究活動の活性化
2022年度歯学部研究体制委員会は学内における研究成果の発表の場の不足に対応して、これまで行われてきた学内共同研究(ユニット研究)体制の見直しを行いこれらユニットの体制維持の可否をアンケート調査した結果、ユニットの実用性がないために必要性に即したユニット掲載を維持・報告する体制に作り替える検討を進めている。またFD委員会と共同して科研費獲得のために「科研費獲得の方法とコツ」で有名な著者の児島将康氏を講師にした。歯学部構成員の研究支援のため、歯学部基金を使った支援事業を検討した。
- ④社会貢献活動の拡充
2021年度に「災害時の歯科医療支援活動に関する協定書」を作成し、災害時の地域歯科医療支援活動を担保している。
- ⑤学内共同研究体制の整備と外部資金獲得支援
- ⑥国際化のための大学間連携の推進および学生交流の実施
- ⑦学生の学修支援体制の強化
等が挙げられる。
【大項目5の現状に対する点検・評価】
(1)検討及び改善が必要な点
- ①教育評価結果はフィードバックされ、教育に関するFD活動と併せて、教員個々の教育の質改善に取り組んでいる一方で、2015年度に導入したアウトカム基盤型教育のコンセプトに基づくカリキュラムに対する評価とさらなる改善に向けた作業を継続して行く必要がある。
- ②研究の個別業績評価は構成員評価として実施し、賞与等を通じて間接的なフォードバックは行っているが、教員個人および分野への直接的なフィードバックは行われていない。科研費獲得の方法については、本学の科研費取得のための相談を積極的に使う方法を検討している。
- ③全学における教育研究評議会での歯学教育に関する客観的評価指標は現在のところ歯科医師国家試験の合格率のみである。客観的評価指標として質的指標(quality indicator:QI)の策定が必要であるとの議論がなされていたが、策定には至っていない。また2023年度の国家試験合格率は全体および新卒が全国国立大でトップと僅差の2位となり、教育研究評議会で一定の評価を得た。現在の指導体制の在り方を教育委員会、学生委員会で検討し、合格率を維持・向上を図る。
(2)改善のためのプラン
- ①歯学部教育委員会において、あらかじめ設定しているコンピテンシーに対して各授業科目が適切に対応しているかを年度開始前に確認する。また、学生による卒業時アンケートとともに歯科医師国家試験結果を始めとした各種情報に基づき、2015年度に導入したアウトカム基盤型教育のコンセプトに基づくカリキュラムに対する評価を行うとともに、改善事項について2024年度以降のカリキュラムに反映させていく。
- ②研究の個別業績評価の構成員に対するフィードバック方法についてはデリケートな問題も含んでおり、明確な打開策を立案するのは困難である。2024年度に自己評価委員会および企画委員会により検討を開始し、継続的に方針策定を行っていく。
- ③評価のための質的指標(quality indicator)を策定について引き続き検討する。この度の歯学教育評価の結果を含め、自己評価委員会においてできるだけ早期に段階的導入について検討したい。
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おわりに
2023年5月8日に新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが2類から5類に変更され、教育の現場も一時の混乱から解放された。むしろ、コロナ禍で培ったe-learningシステムの効果的な利用も加わり、教育面では一歩進んだと言えるかもしれない。一方で病院エリアでは依然としてマスクの着用が義務付けられ、まだ教育の現場はコロナ前に戻ったとは言えない状況にある。
歯学部教員の協力と自己評価委員の先生方の尽力で今年度の点検評価報告書を作成することができた。これからも継続して組織的な自己点検・評価活動を適切に実施するとともに、評価のための評価に終わらぬよう適確な改善プランを策定し、教育の現場に活かしていく予定である。
鹿児島大学歯学部 自己評価委員会 委員長 田松 裕一
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