はじめに

鹿児島大学歯学部は、南九州唯一の歯科医師養成機関として、昭和52年の設置以来、社会から求められる役割を果たしてきました。その機能が適切に運用されているかを確認するために、定期的に第三者による評価を受けることと、その結果を踏まえたPDCAサイクルによる持続的な改善が求められております。先行している薬学や医学、獣医学における分野別教育認評価に続き、歯学教育に関しても2012~2016年度に文部科学省・大学改革推進等補助金事業である「歯学教育認証制度等の実施に関する調査研究」が行われ、2017年度に歯科大学学長・歯学部長会議で認証評価制度に係る専門委員会が設置され正式実施に向けた検討が行われ、2021年度より公益財団法人大学基準協会による歯学教育評価が正式に実施されることが決まりました。

鹿児島大学歯学部は、教育内容が国際標準と比較して遜色のない水準であるかどうかを自ら検証するために、2017年に自己評価委員会を立ち上げ、他大学の歯学教育認証評価(トライアル評価)の評価項目と評価基準を参考にして自己点検・評価書を作成しました。さらに、2018年度、2019年度には本学の歯学教育に関する分析と評価を行い、その後、複数の外部評価者による評価と学内のパブリックコメントを受け自己点検・評価書を作成し、外部公開を行ってきました。

この度、2022年度(事業開始初年度)に歯学教育評価を受審しまして、公益財団法人 大学基準協会(JUAA)から基準適合していることを認定されました。認定を受けまして、受審時の点検・評価報告書を公開版として取りまとめましたので、公開いたします。

本学歯学部の自己点検・評価書の外部公開により、国立大学歯学部としての本学歯学部の教育活動の水準について国民への説明責任を果たし、ひいては本学の歯学教育の質の保証とさらなる向上、管理運営の効率化等に繋がることを期待しております。

鹿児島大学歯学部長(2020~2023年度) 西村 正宏
鹿児島大学歯学部 自己評価委員会 委員長 田口 則宏

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1 使命・目的

●項目: 使命・目的

評価の視点評価のポイント
1-1 歯学教育(学士課程)が担う基本的使命及び当該歯学教育(学士課程)を設置する大学の理念・目的を踏まえ、養成すべき人材像を明らかにした歯学教育(学士課程)の目的を設定していること。
  • 歯学教育(学士課程)の目的の明確性と適切性
  • 目的における個性化と多様性の視点
  • 設置する大学の理念・目的との連関性
1-2 歯学教育(学士課程)の目的を教職員及び学生に周知し、かつ広く社会一般に公表していること。
  • 目的の周知・公表方法
  • 周知活動の効果の把握
<現状の説明>
【1-1】歯学教育(学士課程)が担う基本的使命及び当該歯学教育(学士課程)を設置する大学の理念・目的を踏まえ、養成すべき人材像を明らかにした歯学教育(学士課程)の目的を設定していること。

本学では、学校教育法第83条に規定された大学一般に求められる目的に則し、学則第2条第1項に「本学は、広く知識を授けるとともに深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させ、もって学術文化の向上に寄与する有為な人材を育成することを目的とする。」と目的を明示している。南九州の地理的特性と歴史的伝統を鑑みて2007年11月に制定した「鹿児島大学憲章」では、「鹿児島大学は、日本列島の南に位置し、アジアの諸地域に開かれ、海と火山と島々からなる豊かな自然環境に恵まれた地にある。この地は、我が国の変革と近代化を推進する過程で、多くの困難に果敢に挑戦する人材を育成してきた。このような地理的特性と教育的伝統を踏まえ、鹿児島大学は、学問の自由と多様性を堅持しつつ、自主自律と進取の精神を尊重し、地域とともに社会の発展に貢献する総合大学をめざす。」としている。また、学則第2条第3項では「本学は、学部、学科又は課程ごとに、人材の養成に関する目的その他の教育研究上の目的を各学部等の規則において定める」としている。

本学部は、1977年の学部開設以来、全人的歯科医療を実践できる豊かな人間性を身に付けた歯科医師育成を目標に、「歯科医療人である前に良識豊かな人間であれ」を学部の理念に掲げている。これら「鹿児島大学憲章」及び「学部の理念」に基づき、国民の求める歯科医師養成を行うために、歯学部の教育目標として、以下の3つの柱を定めた。

  • 1)全人的歯科医療を実践しうる歯学分野における幅広い知識と創造性に富む歯科医師および歯科医学教育者・研究者の育成
  • 2)地域医療に貢献しうる幅広い識見と人間性豊かな使命感にあふれる歯科医師および歯科医学教育者・研究者の育成
  • 3)国際社会においても卓越した貢献をなしうる歯科医師および歯科医学教育者・研究者の育成

この3つの柱の教育目標に基づき、全人的歯科医療を身に付け、地域医療及び国際社会に貢献できる歯科医師及び歯科医学教育者・研究者の育成に取り組んでいる。よって、本学部の教育目標は、本学の目的及び「鹿児島大学憲章」と連関した明確なものであり、また、国民の求める歯科医師養成を行うという観点からも適切なものといえる。

【1-2】歯学教育(学士課程)の目的を教職員及び学生に周知し、かつ広く社会一般に公表していること。

上述の「鹿児島大学憲章」、「鹿児島大学歯学部の教育目標」等は、医歯学総合研究棟1(歯学系)及び講義実習棟などの学内各所に掲示し、広く学生、教職員及び来訪者等の目に留まるようにしている。

また、「鹿児島大学憲章」、「鹿児島大学歯学部の教育目標」、「歯学部のミッションの再定義」については、本学及び本学部のホームページ上に公開し、教職員、学生及び広く社会一般に公表している。

これらの教育目標を実際のカリキュラム編成に結び付けるために、学部では6年間の学部教育終了時の学習成果をコンピテンス、コンピテンシーとして制定しており、教育目標と各授業科目の関連性をパフォーマンスレベルマトリックスとして紐づけを行っている。これらについては本学教員及び学生全員に配布される「歯学部修学の手引き」に掲載するとともに、ホームページのURLを記載することによって周知を図っている。さらに、学生には年度初めのオリエンテーションにおいて、歯学部教育委員会からの指示に従い学年担任から説明と周知を行っている。

上述の周知及び公表による効果を把握するため、2019年2月及び2021年4月には教職員及び学生に対して学部教育に関する理解度調査を実施した。理念・教育目標に関する項目等を含む調査結果における平均正答率は、教員86%、学生78%(2019年)、教員86%、学生95%(2021年)に達しており、理念・教育目標は構成員におおむね周知されていることが判明した。これらの調査結果は歯学部教育委員会及び歯学部自己評価委員会において分析・検討が進められ、今後の理解度の向上に向けた対応に活かされている。また、この理解度調査は今後毎年定期的に実施していく予定である。

●項目: 目的の検証

評価の視点評価のポイント
1-3 歯学教育(学士課程)の目的の適切性について定期的に検証を行っていること。
  • 目的の適切性の検証
  • 検証の結果に基づく具体的な改善事例
<現状の説明>
【1-3】歯学教育(学士課程)の目的の適切性について定期的に検証を行っていること。

1)ミッションの再定義

国立大学法人第2期中期目標期間の2014年に、国立大学改革プランの一環として文部科学省と本学が協議を行い、教育成果、研究水準、産学連携等の客観的データに基づいた「歯学部のミッションの再定義」を策定した際、本学部の教育目標の検証を行い、その適切性を確認した。再定義されたミッションにおいては、歯学部の教育目標の3つの柱に基づいた以下の条文を掲載した。

「鹿児島大学の大学憲章等に基づき、自主自律と進取の精神を有し、さらに「歯科医療人である前に良識豊かな人間であれ」との学部理念を基盤として、全人的歯科医療実践能力、地域社会に対する貢献の使命感、更には国際社会でも活躍しうる素養を有する歯科医師及び歯学教育者・研究者の養成を積極的に推進する。」

2)学部教育活動の定期的検証

学部の教育目標の適切性は、教育目標に沿って行われる学部教育活動の定期的な検証によって確認されている。

学内のPDCAサイクルを回す制度として部局等ごとに行う自己点検・評価である「部局等評価」に加えて、歯学部では、教育研究活動等に関する自己点検・評価を行うことを目的として自己評価委員会を置き、定期的に教育活動の自己評価を行っている。自己評価委員会には外部有識者も構成員として参画しており、実質的な機能強化が図られている。自己評価においては、教育の評価項目として、「教育目標に関する事項、教育の実施体制等に関する事項、学習成果に関する事項、学生支援に関する事項」等について自己点検を行い、教育委員会、FD委員会等の各種委員会にフィードバックして、改善を行っている。また、検討を進める上での支援組織として2018年に歯学部IR室が設置され、必要な情報の収集・提供を行うことで、入試改革に有効利用されている。

また、歯学部の教育研究活動については、全学で開催されている経営協議会で検討・評価されている。本協議会は、学長、大学理事、外部有識者を含むもので、大学内外の広い立場からの意見を聴取することができる。2021年6月24日開催の経営協議会、及び8月3日の意見交換会において歯学部についての経営と今後の活動についての検討が行われたが、外部委員からを含め特段の指摘事項は挙げられなかった。

教育目標の適切性の検証に基づく具体的な改善事例としては、次のようなものが挙げられる。

①アウトカム基盤型教育の導入

本学部において2006年度に実施されたカリキュラム改革では、他大学歯学部に比較して過剰気味であった単位数や教育内容を見直し、適正と考えられる体制を構築、運用していたが、教育目標を達成しうる授業科目が一部配置されていないこと、また6年間の教育カリキュラムに対する修正の必要性、特に統合系科目の実施時期の変更の必要性などが指摘されていた。

そこで、2013年度に学生及び教員を対象とした学部教育に関するアンケート調査を行い、その結果、さらなるカリキュラム改革の必要性が明らかとなった。

この調査結果を踏まえて、歯学部では2015年度にアウトカム基盤型教育のコンセプトを柱とした新たなカリキュラムを導入し、最終到達目標としての学習成果を明確に示し、一貫した体系的な教育カリキュラムを構築し、多様な歯科医療に対応できる教育プログラムを組んでいる。

②全学3ポリシーと歯学部3ポリシーの一体化の検証

第3期(2016~2021年度)中期計画に盛り込まれた教育に関する目標を達成するための措置として、「全学一体的に地域活性化の中核的拠点としての社会的役割を明確にした入学者受入方針(以下、アドミッション・ポリシー)、教育課程編成方針(以下、カリキュラム・ポリシー)、学位授与方針(以下、ディプロマ・ポリシー)を2017年度までに再構築し、育成する能力が可視化されるようカリキュラムを見直し、カリキュラムマップを完成させる。」という計画が掲げられた。

3つのポリシーの再構築に当たり、国のガイドラインを踏まえて、それらを一貫性のある評価可能な表現に改める等の観点から、全学の教育等企画会議、教務委員会と連携し、全学と歯学部のディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシー及びアドミッション・ポリシーとの対応関係を精査した。

この結果に基づき、歯学部の3ポリシーの内容を見直し、新たに策定したものを2017年3月に公表した。

③歯学部タレントディベロップメントプログラムWGの新設

教育目標における個性化と多様性を達成する目的で、学生のリサーチマインドの滋養、研究者の育成を目的としたワーキンググループである「歯学部タレントディベロップメントプログラムWG」を2021年に新設し、教育カリキュラム、入試制度の見直しも含めた検討を開始した。

【大項目1の現状に対する点検・評価】

(1)検討及び改善が必要な点
  • ①歯学部の自己評価体制による定期的な教育活動の点検において、教育目標における個性化と多様性の視点からは、研究者の育成、大学院進学率などの成果は十分とは言えない。
  • ②近年の社会環境の急激な変化に伴い国民から求められる歯科医師像が変化していくことを考えると、外部からの意見も含めての歯学教育の目的の適切性についての定期的な検証は特に重要である。学部の自己評価委員会に複数の外部有識者を加えることで対応しているが、より広い範囲(年齢層、性別など)からの意見聴取が必要と考えられる。
(2)改善のためのプラン
  • ①歯科医学研究者の育成を目的として新設された「歯学部タレントディベロップメントプログラムWG」において、学生のリサーチマインドの滋養、大学院進学率の向上へ向けた対策案を、教育カリキュラムと入試制度の見直し、教育目標の適切性の検証も含めて協議中である。
  • ②学生、教員、学外の有識者、卒業生がメンバーとなり、歯学部の教育理念、目標、カリキュラム体系等について議論する場を設け、持続的かつ発展的な改善の検討を行っていく必要がある。対策として、教育目的の点検評価を目的として、本学部卒業生を対象とした学部の歯学教育の目的の適切性に関するアンケートを2021年度より開始した。

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2 教育の内容・方法・成果

●項目: 学位授与方針及び教育課程の編成・実施方針

評価の視点評価のポイント
2-1 歯学教育(学士課程)の目的に基づき、修得すべき知識・技能・態度など期待する学習成果を明示した学位授与方針を策定していること。また、これを踏まえて教育課程の編成・実施方針を策定していること。
  • 学位授与方針の策定
  • 学位授与方針における修得すべき知識・技能・態度など(臨床能力を含む)期待する学習成果の明示
  • 教育課程の編成・実施方針の策定
  • 歯学教育(学士課程)の目的と学位授与方針の整合性
  • 学位授与方針と教育課程の編成・実施方針の整合性
2-2 学位授与方針及び教育課程の編成・実施方針を教職員及び学生に周知し、かつ広く社会一般に公表していること。
  • 学位授与方針及び教育課程の編成・実施方針の周知・公表方法
  • 周知活動の効果の把握
<現状の説明>
【2-1】歯学教育(学士課程)の目的に基づき、修得すべき知識・技能・態度など期待する学習成果を明示した学位授与方針を策定していること。また、これを踏まえて教育課程の編成・実施方針を策定していること。

本学部では、鹿児島大学憲章、鹿児島大学学生憲章、鹿児島大学教育目標、鹿児島大学生涯教育憲章及び鹿児島大学の基本目標(中期目標)に基づき、「歯科医療人である前に良識豊かな人間であれ」という理念のもとに本学部の教育目標を定め、ディプロマ・ポリシーを策定している。

本学部の教育目標は

  • 1)全人的歯科医療を実践しうる歯学分野における幅広い知識と創造性に富む歯科医師および歯科医学教育者・研究者の育成
  • 2)地域医療に貢献しうる幅広い識見と人間性豊かな使命感にあふれる歯科医師および歯科医学教育者・研究者の育成
  • 3)国際社会においても卓越した貢献をなしうる歯科医師および歯科医学教育者・研究者の育成

としている。

ディプロマ・ポリシーではこれらを包含しつつ

  • 1)良識豊かな人間性を身につけ、患者、患者家族、医療チーム構成員を尊重し、適切なコミュニケーション能力を持って医療を実践するとともに、歯科医師としての職責を認識することができる能力
  • 2)歯科を中心とした医療の基盤を構成する基礎、臨床の各領域とともに、自然科学、人文社会学分野を含めた幅広い知識を有し、必要に応じて応用することができる能力
  • 3)全身的、精神的、社会的状況に配慮した、安全で効果的かつ合理的な患者中心の歯科医療を実践することができる能力
  • 4)離島を含めた地域および国際社会における歯科医療の多様性を理解し、地域、国際社会において幅広く活動する素養を身につけるとともに、歯科医学、医療の社会的役割を理解することができる能力
  • 5)生涯にわたって自己研鑽に取り組むための基礎となる、自らの行動を論理的、批判的に振り返ることができる能力
  • 6)歯科医学における研究の重要性を認識し、各種情報を正しく評価するとともに、創造性に富む素養を身につけて、新たな情報を生み出すことができる能力

の6項目を設定して整合性を確保している。

そして、上記のディプロマ・ポリシーに基づき、期待する学習成果(アウトカム)を5つのコンピテンス(Ⅰ.歯科医師の職責とコミュニケーション、Ⅱ.歯科医学および関連領域の知識、Ⅲ.医療の実践、Ⅳ.地域医療とヘルスプロモーション、Ⅴ.生涯学習と科学的探究心)として設定し、さらにそれぞれのコンピテンスに対して合計29のコンピテンシーを関連付け、より具体的なアウトカムを明示している。

本学部では2015年より「アウトカム基盤型教育」を導入し、上記5つのコンピテンスで示された学習成果(アウトカム)を、6年間の学部教育による最終到達目標とし、この目標に近づくために、大学入学時から能力の修得レベルに合わせて段階的に学修できるよう一貫した教育カリキュラムを構築するべくカリキュラム・ポリシーを策定している。

カリキュラム・ポリシーは、「1.初年次から卒業まで系統性のある教育課程の編成」「2.目的・目標に応じた方法による教育の実施」「3.厳格な成績評価の実現」を柱とし、ディプロマ・ポリシーで定める学習成果へ到達する方略やプロセスを明示している。

【2-2】学位授与方針及び教育課程の編成・実施方針を教職員及び学生に周知し、かつ広く社会一般に公表していること。

ディプロマ・ポリシー及びカリキュラム・ポリシーは、大学ホームページと学部ホームページに掲載し、教職員、在学生、保護者及び受験希望者などの関係者とともに一般社会に向けて広く公開し、周知している。

教員に向けては、教育実施時に用いる「修学の手引き」にディプロマ・ポリシー及びカリキュラム・ポリシーを記載することにより、目に入りやすくなるよう工夫している。さらに、教育に関するFD研修会・講演会を毎年3回以上実施し、教育カリキュラムへの理解を促している。

学生に向けては、各年度当初の学年オリエンテーションにおいて、学年担任・副担任が教育カリキュラムの概要と当該年度内に履修する科目内容及び学年共通の伝達事項を説明するとともに、ディプロマ・ポリシー及びカリキュラム・ポリシーを周知している。

また、教員と学生に向けて、講義実習棟入口の壁に教育目標を記載した銘板を、各講義室の壁に卒業時に身に付けておくべき能力(5つのコンピテスと29のコンピテンシー)掲示し、目に触れやすいよう工夫している。さらに、新入生に向けては入学時のオリエンテーションで、歯学部の教育目標、ディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシー等を記載した「修学の手引き」を配布した上で、歯学部教育委員会委員がアウトカム基盤型教育と関連付けて詳細に説明している。

周知活動の効果を把握するため、定期的に本学の学習管理システムmanabaを利用し、学生と教員を対象に本学部の教育カリキュラム体系の理解度調査を行っている。2021年は4月22日~5月7日に実施した。その結果、教員の正答率86%(提出率54%)、学生の正答率は95%(提出率91%)であった。教員は教育目標やカリキュラム・ポリシーに強いが、コンピテンスと科目の関係や共用試験(CBT、OSCE)にやや弱い傾向が見られた。学生は低学年よりも中・高学年の正答率が高かった。これらのことから周知活動の効果があったと考えられるが、教員の提出率には改善の余地が見られた。

●項目: 教育課程の編成・実施

評価の視点評価のポイント
2-3 教育課程の編成・実施方針に基づき、次に掲げる事項を踏まえ、歯科医師として求められる基本的資質・能力を醸成するための教育課程を体系的に編成し実施していること。
(1)学士課程教育として、幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い、豊かな人間性を涵養するための科目を適切に配置していること。
(2)歯学教育モデル・コア・カリキュラムの内容を包含していること。
  • 教育課程の編成・実施方針に沿った適切な授業科目の体系的な配置
  • カリキュラムマップの策定
  • 準備教育の充実
  • 独自の教育カリキュラムの編成とその適切性
  • 医療人育成に向けた各大学の特色ある講義・実習
  • 医療倫理学、プロフェッショナリズム、医療コミュニケーション等の「モデル・コア・カリキュラム」と「アドバンスド・カリキュラム」のバランスに配慮した組合せ
  • 研究者の養成、グローバル人材の育成に配慮した教育課程の編成
  • 学生のキャリアパスに応じた教育課程の編成
2-4 教育課程を実施するにあたって、適切な授業形態や方法が用いられていること。
  • アクティブラーニング講義、少人数グループ教育、問題基盤型あるいは症例基盤型学習(臨床推論)、相互学習、体験学習、実験、臨床見学、臨床技能教育(シミュレーション教育)、臨床実習、地域実地経験、遠隔授業やWEBを活用した学習、研究室配属、学会等での研究発表など、多彩な教育方法の実施
2-5 授業の目的及び到達目標が明示されたシラバスを作成し、それに基づいた授業を行っていること。
  • 時間割の明示
  • 適切な内容で構成されたシラバスの整備及び明示
  • 授業内容とシラバスとの整合性の確保
2-6 歯学教育の実施に必要な教育施設・設備、支援体制が適切に整備されていること。
  • 講義室、実習室、スキルスラボ、図書館(図書室)等の歯学教育に必要な施設・設備の整備
  • 談話室、自習室、コンピュータ室等の学生の自学自習に必要な施設・設備の整備
  • 履修指導、予習・復習等の相談・支援
  • 歯学教育(学士課程)が行う経済的支援制度
  • 歯学教育(学士課程)が行う進路選択・キャリア形成に関する相談・支援
<現状の説明>
【2-3】教育課程の編成・実施方針に基づき、次に掲げる事項を踏まえ、歯科医師として求められる基本的資質・能力を醸成するための教育課程を体系的に編成し実施していること。
(1)社会の変化に対応できる知識・技能を養成し、学士課程教育として、幅広く深い知識・教養及び総合的な判断力を培い、豊かな人間性を涵養するための科目を適切に配置していること。

<授業科目の体系的配置と可視化>

本学部が定める教育目標やコンピテンスを修得するために必要な授業科目を設置するとともに、それらを達成すべき学習成果を反映させた5つのコンピテンスに応じて分類し、カリキュラム・ポリシーに従って適切な授業科目を体系的に配置することにより、全ての科目が、科目間の横のつながりと縦のつながりを密接に持ち、能力の発達段階に応じた順次性に配慮して開講される。教育カリキュラムの全体的な体系としては、1~2年次(1期~4期)では歯科医学と歯科医療を学ぶために必要な基盤形成を行い、3~4年次(5期~8期)では歯科医学と歯科医療の実践能力を身に付けるために必要な基盤的知識と技術の修得、5~6年次(9期~12期)では歯学生としての基本的実践能力の修得を実現するための教育を行っている。

<準備教育の充実>

準備教育は、1年次に共通教育科目及び専門基礎教育科目で実施している。

共通教育は総合大学の特徴を生かし、全学部共通の膨大な科目群の中から、必修科目として「初年次セミナーⅠ・Ⅱ」や「情報活用」などの初年次教育科目及び「英語」や「異文化理解」などのグローバル教育科目で16単位、選択科目として「初修外国語」「理科実験科目」を含む人文・社会・自然科学分野の教養基礎科目を14単位、計28単位(外国人留学生は日本語科目が入り30単位)の履修が定められている。

専門基礎教育は基礎教育科目(物理、化学、生物、統計学など6科目)10単位と歯学導入系科目(独自の4科目)7単位が定められている。これまで共通教育科目で実施していた自然科学分野の実験科目を、2021年度より専門教育科目「基礎生物学実習」に変更した。教養系科目、生命科学の基礎科目から歯科医学の導入まで非常に幅広い充実した履修内容となっている。

<独自の教育カリキュラムと特色ある多様な科目群>

教育目標に掲げる「全人的歯科医療の実践、地域医療への貢献、国際社会での活躍」の能力を修得するには、モデル・コア・カリキュラムに基づいた科目、あるいは従来からある講義型授業のみでは必ずしも十分とは言えない。そこで、歯学教育モデル・コア・カリキュラム(平成28年度改訂版)に収載されないアドバンスな教育として、医療人の育成に向けた本学部独自の教育内容を設置している。これらの特色ある多様な科目群は、本学部が定める5つのコンピテンスの中の、「Ⅰ.歯科医師の職責とコミュニケーション」と「Ⅳ.地域医療とヘルスプロモーション」に重点的に配置されている。例えば、「コンピテンスⅠ.歯科医師の職責とコミュニケーション」については、「プロフェッショナリズムⅠ、Ⅱ」「コミュニケーション学」はロールプレイやシミュレーションによって他者との関わりの中で学習する。「コンピテンスⅣ.地域医療とヘルスプロモーション」については、「地域体験実習」「地域医療学実習」「離島巡回歯科診療同行実習」「離島歯科医療実習」は地域や離島に赴き、現場の歯科医療を見学することで地域医療というものを体験する。

<モデル・コア・カリキュラム及びアドバンスド・カリキュラムのバランス>

歯学教育モデル・コア・カリキュラムにおける知識ベースの教育内容(授業科目)は主に、「コンピテンスⅡ.歯科医学および関連領域の知識」に含め、教養科目、専門基礎科目、臨床科目と低学年から高学年に向けてステップアップするように配置し、アドバンスド・カリキュラムも並行して主に低学年から中学年に配置している。高学年では臨床実習の比重が高まり「コンピテンスⅢ.医療の実践」の占める割合が多くなるが、ここではモデル・コアとアドバンスド・カリキュラムの両者を総合的に学習する。なお、「コンピテンスⅢ.医療の実践」は高学年のみではなく、「歯科臨床早期体験実習」として初年次から学修できるようにしている。

アドバンスド・カリキュラムには一連の独自科目に加え、非常勤講師による特別講義や科目担当者が触れる最先端の研究の話題なども含まれる。

<リサーチマインドの涵養、グローバル人材の育成>

リサーチマインドの涵養を目指す教育カリキュラムとして、「コンピテンスⅤ.生涯学習と科学的探究心」科目群である1年次の「歯科医学入門」、2年次の「研究実践概論」、3年次の「研究実践Ⅰ・Ⅱ」(研究室に配属され研究を実践)がある。さらに、学生が自主的に研究分野を選択して研究に携わる科目として1~6年次に「歯学研究Ⅰ~Ⅵ(選択科目)」を配置し、リサーチマインドを有する歯科医師の育成を図っている。

グローバル人材の育成のため、2〜5年次では専門英語実践力の習熟や国際的医療活動を学ぶ「国際医療人育成学Ⅰ~Ⅳ」を配置し、歯科の専門用語や簡単な挨拶から始まり、ロールプレイを通して段階的に英語による患者への病状説明などのコミュニケーション能力を身に付けていくことで、実践力のある国際性を身に付けた歯科医師の育成を図っており、これらも「コンピテンスⅤ.生涯学習と科学的探究心」科目群に位置づけている。

海外の大学で短期研修する従来の制度を、2018年度からグローバル又はグローカルに活躍できる人材の育成を目的として独立した科目「海外歯科研修プログラムⅠ~Ⅳ」として配置した。歯学部教育委員会の海外研修実施部会の指導の下、希望する学生に1~2週間程度の海外留学(協定校への派遣)の機会を提供している。学生は海外の協定校の学生や教員との事前交流(オンライン交流)、協定校での海外研修、事後学習(帰国後レポート作成・研修報告会)を通し、国際的な歯科医療、価値観や文化、社会システムの多様性を学ぶ。これまでに、香港大学(香港)、高雄医学大学歯学部(台湾)、陽明大学(台湾)、エアランガ大学(インドネシア)、ブリティッシュコロンビア大学(カナダ)への派遣実績があるが、あいにく2021年はコロナ禍による人流制限のため渡航できないこととなったが、2022年度に向けての学生に対する補助金申請の説明会を実施した。なお、代替行事として2021年11月16日にタイのモンクット王工科大学ラカバン校(KMITL)、2022年2月21日に台湾の高雄医学大学とWEBによる交流を行った。いずれも、スライドを用いたお互いの大学・学部紹介、フリーディスカッションで構成され、コロナ禍終了後に互いに往来できることを願った。

<キャリアパスに応じた教育課程>

本学部では編入学の制度は設定していない。他大学を卒業・中退した新入生には共通教育における既得単位の読み替えを行っている。

歯学部入学直後に開講される「患者と医療」では、歯科医師臨床研修制度をはじめとし、将来にわたる歯科医師のキャリアについて解説するとともに、歯科医療の社会的な役割について理解を促し、キャリアパスを考える機会を提供している。専門科目が始まる時期には、歯学部学生の将来への希望を考慮した教育課程を編成し、研究者を目指す学生には希望する研究室で複数年にわたって研究を継続することができる「歯学研究」の学修を可能とする科目を用意しており、海外での活躍を目指す学生にはきっかけとして「海外歯科研修プログラム」への参加を呼び掛けるなどしている。また、5年次には歯学部同窓会の協力を得て、毎年「進路相談会」を開催しており、本学の卒業生(海外で活躍する者、自衛隊に勤務する者、女性歯科医師など)をはじめ複数の演者を招聘し、様々なキャリアを歩んでいるロールモデルの話を聞く機会を提供している。このように個々の学生の志向に応じたキャリア選択に役立つ情報提供を行っている。

(2)歯学教育モデル・コア・カリキュラムの内容を包含していること。

授業科目のシラバスには授業内容に対応する歯学教育モデル・コア・カリキュラムの項目番号を記載し、歯学教育モデル・コア・カリキュラムとの対応関係を明示している。

また、共通教育科目及び専門基礎教育科目の内容はこれまでの準備教育モデル・コア・カリキュラム及び平成28年度改訂版歯学教育モデル・コア・カリキュラムで組み込まれた内容に対応している。また、歯学教育モデル・コア・カリキュラムが改訂された際は、全項目と教育を担当する分野の担当一覧表を作成し、全内容を包含していることを確認している。現在は改訂から5年以上が経過していることから、2021年度末に再度確認作業を実施する。

【2-4】教育課程を実施するにあたって、適切な授業形態や方法が用いられていること。

医療人としての人格形成、倫理観、価値観、コミュニケーション能力を高めるとともに、地域医療に対する理解を深めるためには、通常の講義形式での教育だけでは不十分であり、能動的かつ体験に基づく教育が不可欠であると考えられる。そのため、6年間を通してこのような教育方略を多く取り入れており、また多くの科目では講義・実習・演習を混合して行う授業形態をとり、学部全体及び学年毎の講義、実習等の授業形態の組合せとバランスを考慮した教育カリキュラムを実践している。また、社会に貢献する歯科医療人を育成するため、歯科医療における実践教育を重視し、学外実習を多く取り入れている。

例年、本学では以下のような授業形態や方法を実践しているが、2021年度は新型コロナウィルス感染症の感染拡大防止のため、予定されていた計画が実施できない科目が多くあった。

アクティブラーニング講義

多くの授業で取り入れられている。例えば、「口腔解剖学Ⅰ」では課題授業として、形態学的な知識が必要となる歯科疾患をテーマとして提示して基調講義を行った後、グループワークで、テーマに関する形態学的知識や臨床との関連を調べて翌週に発表している。

シラバスにはアクティブラーニングに関する表示項目を設定し、歯学部教育委員会が毎年実施率を調べている。

少人数グループ教育

共通教育の「初年次セミナー(1年次)」、専門教育科目の「歯科医学入門(1年次)」では、コミュニケーション能力や歯科医師としての素養を身に付けることを目的として、少人数グループによる能動的教育を実施している。「プロフェッショナリズムⅠ」及び「プロフェッショナリズムⅡ」などはワークショップ形式によるSmall Group Discussion (SGD)を実施している。

コロナ禍においては、個人のマスクや手洗いをはじめ、グループワークの小教室における換気等に留意し、感染対策に最大限配慮して実施した。

問題基盤型あるいは症例基盤型学習(臨床推論)

「初年次セミナー」「歯科医学入門(1年次)」及び臨床実習における「総合症例検討会」などでは、シナリオや実際の症例に基づいて、調査・学習を行うとともに、討論・発表する能動型学習が実施されている。

体験学習・地域実地経験

「地域体験実習(2年次)」では、鹿児島市内の老人保健施設、幼稚園に3日間ずつ滞在する体験型実習とともに、ワークショップ形式によるSGDを行う。「地域医療学実習(3年次)」では主に本学部の卒業生が開業する地域の歯科医院に学生2名が5日間訪問する体験型実習を実施し、シャドウイングにより歯科医療の現場を体験している。「臨床実習Ⅱ(5~6年次)」の期間中には「地域歯科医療実習」で地域の歯科診療所で見学を行う。希望者が参加する「離島巡回歯科診療同行実習」「離島歯科医療実習」では、前者は鹿児島県歯科医師会と鹿児島大学歯学部が協力して実施する離島巡回歯科診療に同行し、無歯科医離島に3~5日間滞在しながら離島歯科医療を見学・体験する。後者は、県内の離島に5日間滞在しながら歯科医院を訪問し、離島における歯科医療を見学・体験する。これらの体験により、医療人としての人格形成や地域医療への理解を深めている。

地域や離島における体験学習は本学歯学部の特色ある教育方法の一つであるが、コロナ禍においては、島嶼部の人流制限、歯科診療室や各施設における感染防止対策のため、通常の実施ができず、学内でのグループワークや課題を決めての自己学習等の演習に振り替えざるを得なかった。

「海外歯科研修プログラムⅠ~Ⅵ(1年次~6年次)」では、希望する学生に協定校への短期留学による海外研修の場を提供しており、支援制度の説明や報告会を開催しているが、2021年度はコロナ禍で往来できず、一部の学校とのWEB交流に留まった。

臨床見学

「歯科臨床早期体験実習(1年次)」では全12回の診療科見学とともにワークショップ形式によるSmall Group Discussion (SGD)、コラージュ作成を実施している。「臨床予備実習(5年次)」では、6年間の学部教育の集大成として実施される「臨床実習」の準備として、基礎系全分野による臨床との関連を意識した振り返り講義とともに、各診療科を基盤としたローテーション方式の見学実習、演習等が行われている。

臨床技能教育(シミュレーション教育) 相互学習

「コミュニケーション学(3年次)」では、初診医療面接に関する教育を行う上で、歯科医師役、患者役に分かれ指定されたシナリオを演じるロールプレイでの教育を実施している。「国際医療人育成学Ⅲ・Ⅳ」においても歯科医師役、患者役に分かれ指定されたシナリオを英語にて演じるロールプレイでの教育を実施している。「臨床予備実習(5年次)」では、病状説明や患者指導に関する教育をシミュレーションの手法を用いて教育している。その他、様々な顎模型、マネキン(シミュレーター)を用いた教育を実施している。「臨床実習Ⅱ(6年次)」における高齢者歯科医療教育では、高齢者マネキンを使用し、種々の症例や状況を想定した技能の向上を目指した教育を実践している。

臨床実習

本学部では、「臨床実習Ⅰ(5年次後期)」及び「臨床実習Ⅱ(6年次前期)」の二期に分けて実施している。臨床実習は、学生全体を4~6名の10グループに分け、8群(A:口腔保健科、B:小児歯科、D:顎顔面放射線科、E:口腔顎顔面外科、F:口腔外科、G:歯科麻酔科、H:成人系4科+矯正科、及び歯科総合診療部(地域歯科医療実習))を5日間単位でローテイトしている。H週は、成人系4診療科(保存科、歯周病科、冠ブリッジ科及び義歯インプラント科)と矯正科の5診療科により構成され、年間通じて原則隔週で配属される。

診療参加型臨床実習においては、臨床実習Ⅰでは「自験」への導入段階として、指導歯科医と行動をともにして「見学」や「介助」を中心に患者とのかかわりを経験している。続く臨床実習Ⅱでは、担当患者を基盤とした「自験」中心の臨床実習を行うこととしている。地域歯科医療実習や離島歯科医療実習及び離島歯科巡回診療同行実習も並行して実施される。これらの実習においては、安全への配慮の観点から、見学や介助を中心としている。

地域歯科医療実習は、鹿児島市内及び近郊の歯科診療所の歯科医師(臨床教授、臨床准教授、臨床講師)と5日間行動を共にし、多様な患者ニーズへの対応方法や、地域医療の役割、地域における多職種連携の重要性などについて理解を深めることを目的とする。離島歯科医療実習は、鹿児島県の離島の歯科診療所の歯科医師(臨床教授、臨床准教授、臨床講師)のもとで歯科医療の現場見学を通じて、地域包括医療や、地域における多職種連携の重要性について理解することを目的として行われる。

実験・実習

基礎系では形態系科目の観察やスケッチ、機能系科目でのプロトコルに基づく種々の実験が行われている。「口腔解剖学Ⅱ(2年次)」では石膏棒やワックス棒を用いた歯形彫刻を実施し、立体的な歯の形を理解させている。「解剖学Ⅱ(2年次)」では人体解剖実習によりご遺体やご遺族への感謝や命の尊さを学び、医療人としての倫理観・使命感を醸成し、グループワークによる剖出部位の所見発表を通して人体構造への理解を深めている。

臨床系では各科目で習得すべき手技を顎模型やシミュレーターを用いた実習で体得し、共用試験OSCEに対応できる能力、歯科医師として身に付けておくべき基本的な技術を学修している。

遠隔授業やWEBを活用した学習

従来、本学部では遠隔授業やWEBを活用した教育方略は採用してこなかったが、2020年度4月のコロナ禍による登校禁止の事態に端を発して遠隔授業を開始した。現在では緊急事態宣言やまん延防止措置の発令など感染拡大が懸念される状況の際に、主として座学の講義を遠隔授業にて実施し、主にZOOM®を用いたリアルタイム授業又は本学の学習支援システムmanabaにコンテンツを置いて自己学習させるオンデマンド授業が行われている。なお、オンデマンド授業については、学生から「自分のペースで学習できる。反復学習をし易い。」という高評価が得られている一方で、学習しない学生との達成度の差が開くことが懸念される。

研究室配属

「研究実践概論(2年次)」にて研究室配属での学習方法を学んだ後、「研究実践Ⅰ・Ⅱ(3年次)」では少人数の学生が希望する分野の研究室に配属され、実験の実施や関連論文の抄読・輪読によりリサーチマインドを醸成している。選択科目の「歯学研究Ⅰ~Ⅵ(1年次後期~6年次)」では、学生が希望する分野の研究室にてマンツーマンで研究実践指導を受け、あるいは臨床技術等を学び、自ら研究・学修するリサーチマインドを醸成している。

学会等での研究発表

「研究実践Ⅰ・Ⅱ」を受講した学生は学内研究発表会で発表し、「歯学研究Ⅰ~Ⅵ」を受講した学生の中には諸学会での発表を行う者もいる。スチューデント・クリニシャン・リサーチ・プログラム(Student Clinician Research Program / SCRP)では優秀な成績を収めた学生もいた。

その他(ICTを活用した学修支援)

授業形態とは異なるが、2015年から運用を開始しているe-ポートフォリオ・システムは、授業科目ごとに学生の学習の振り返りを電子的に記録できるシステムであり、学生の能動的学習を支えるツールとして独自に構築しており、現状では各授業科目における学生のコンピテンシー達成度のデータ蓄積など部分的に運用を開始している。また、臨床実習における経験ケース管理システムであるe-logbookシステム(㈱ニッシン社製)を2014年度より段階的に導入し、2016年度には全面的に導入した。さらに、2018年度から、大学の学習管理システムmanabaを利用し、各種情報の提供、レポートの提出、小テストの実施、コロナ禍での健康管理状態の記録などに活用しており、今後は専門科目(臨床実習を除く)の学習の振り返りを行うことを計画している。

【2-5】授業の目的及び到達目標が明示されたシラバスを作成し、それに基づいた授業を行っていること。

時間割は授業実施期間や場所などの情報も含めて前年度末までに確認作業を終了し、印刷物を学生に配布するとともに、教職員共有フォルダ(ナレッジフォーラム)に掲載される。

シラバスは、2014年度までは紙媒体(冊子)で作成、配布していたが、教育内容の変更や参照の利便性を考慮して電子掲示方式に変更し、「鹿児島大学医歯学系シラバスシステム」としてWeb上に掲載し、学生に周知するとともに、教員も随時参照できる体制となっている。

シラバスには、授業科目名、選択・必修、授業形態、開講期、単位数、担当教員、担当教員所属、連絡先(電話番号、メールアドレス)、担当教員のオフィスアワー、授業のキーワード、関連する学部・学科ディプロマ・ポリシー、関連する学部・学科コンピテンシーと求められる達成レベル(A:行動力、B:表現力、C:応用力、D:知識、E:関与)、学習目標(関連する歯学教育モデル・コア・カリキュラム番号)、授業概要、授業計画、予習・復習へのアドバイス、教科書、参考書、成績の評価基準、再試験の有無、研究活動との関連、アクティブラーニングの種類と回数を、全学共通のフォーマットに基づき記載している。

学生は授業履修時及び試験時に上記内容を参考にする他、選択科目の選択の際にシラバスを参考にし、活用している。また、各科目の授業開始時には、教員は学生とともにシラバスを確認し、教育内容のアウトラインや評価方法の概要について改めて周知を図っている。

2018年度からは、学生の授業評価アンケートを踏まえて、教員は授業改善シートを作成し、翌年度のシラバスに反映させている。この改訂過程を記録し、PDCAの軌跡を残すため、改訂内容をシラバスの「その他」の項目に更新履歴として記載している。なお、更新履歴は学生が閲覧する際には表示されない。

また、本学部で開講されている全ての授業科目のシラバスについて、あらかじめ授業担当教員にシラバスへの入力と内容確認を依頼した上で、歯学部教育委員会委員が所定のフォーマットに従い記載内容の点検(記載漏れや誤記等の確認)を行い、正確性を担保している。

点検結果は歯学部教育委員会で集積され取りまとめた上で、必要があれば授業担当者に修正を依頼し、より精度の高いシラバス作成に活かされている。

特に今年度は、授業形態(対面・遠隔)が急遽変更されたり、休業期間が設定されたりして授業計画の変更が余儀なくされたため、既に終了した授業についても過去に遡って点検・修正を依頼し、記録としての正確性も考慮した。

開講されている全ての授業では、授業の終了時に学生から「授業評価アンケート」をとることになっており、その中で授業内容とシラバスの整合性についての項目が用意されており、学生からの意見を聴取している。さらに、各授業科目の責任者は、このアンケート結果を踏まえて「授業改善シート」を作成することとなっており、シラバスに沿った授業が行われているかを含む教育目標の達成度等、授業実施後の振り返りが必ず行われている。

【2-6】歯学教育の実施に必要な教育施設・設備、支援体制が適切に整備されていること。

本学の校地等は、大学設置基準上、総合大学として本学が求められる面積(校地 118,138 m2、校舎 137,224 m2)に対して、校地 519,150 m2、校舎 208,888 m2を有し、基準を十分に満たしている。

歯学部講義実習棟及び病院棟(歯科診療棟)は1977年に竣工した施設である。講義実習棟は講義室4室(うちコンピュータ設置室1)、実験実習室5(うちシミュレーション実習室1)を有している。授業等で学生が利用可能なパソコン(PC)として、講義室に70台が設置されている。講義室、実習室に情報コンセントが配備され、歯学部で14台の無線アクセスポイントが設置されている。学生、大学院生、教職員等の本学に所属する者には、統合認証のID、パスワードが配布されており、上記のPC、ネットワークを随時利用することができる。また、オンデマンド教材等は統合認証システムと連動し自宅等においても実習室と同等の教材が利用可能である。

また、医歯学総合研究科棟1には、講義等の実施が可能な諸室(総合示説室3、セミナー室4、カンファレンス室1、会議室1、ゼミ室6)が設けられている。医歯学総合研究科棟2には医学部・歯学部共同利用の解剖実習室があり、2020年8月~2021年3月に耐震改修工事が実施され、フォルマリン対策の強制換気装置が完備された新しい実習室に改装された。

講義実習棟の4つの講義室、5つの実習室、また医歯学総合研究科棟1の諸室(総合示説室2、セミナー室3、カンファレンス室1、会議室1、ゼミ室2)には液晶プロジェクター又は液晶ディスプレイが設置され、コンピュータによる画像及び動画を利用した授業及び実習が行われている。なお、5つある実習室は、主として2つが基礎系実習室、残りが臨床系実習室として利用されている。

2020年から正式実施されるPCC PX:CSX(一斉技能試験)に向けて、予備を含めて必要な歯科用手用器具等を整備するため、2021年度に実習室の備品を一元的に管理する組織(実習室物品管理部会)を作り、CSXの実施に必要な手用器具等の整備を進めた。

通信設備については、全教室で学術情報基盤センターが提供する無線LAN接続サービス「eduroam」が2021年9月から利用できるように整備された。

新型コロナウィルス感染症の感染拡大を防止(3密を防止)するため、2020年に第1講義室と第2講義室及び第1示説室と第2示説室をリモートで結び、2室同時に音声と画像を共有できるように改修を行った。また、第1実習室にはアクリル板、第3実習室には実習台間に透明なビニルカーテンを設置した。

附属図書館桜ヶ丘分館は1977年に竣工し、蔵書168,411冊を擁する。また、購読雑誌(桜ヶ丘分館蔵書数)は5,101誌、購読電子ジャーナルは全学で7,650雑誌、利用可能データーベースは12種類である。所蔵図書の大部分は最新の医学書、歯学書、講義テキスト、歯科医師国家試験参考書などの学生用図書が占める。また、視聴覚資料ビデオ 174点、DVD及びCDR 966点、等:総計1,140点も利用可能である。図書館の開館時間は平日8:30~21:30、土・日曜10:00~18:00である。なお、2021年7月から2022年6月までは改修工事のため仮設図書館の利用となっており、開館時間も平日(月曜日~金曜日):9:00-17:00、土曜日:9:30-17:00、日曜日・祝日は休館となっている。

学内の自主学習の場として、附属図書館が主に利用されているが、その他に講義室を平日16:10~21:00、ゼミ室を平日及び土日に利用可能にしている。実習時間外での実習室の利用については、実習担当教員の指導の下、利用することができる。また、福利厚生施設の桜ヶ丘会館も平日・土曜9:00~21:00に開放し自主学習の場として利用されている。

また、岡山大学が主管大学で本学も連携大学として参加している2014年度課題解決型高度医療人材養成プログラム「健康長寿社会の実現に貢献する歯科医療人養成」事業において、教育プログラムを構築しており、連携大学で設定されたプログラムコースのビデオ視聴やオープンコースを受講することができる。これらは、コロナ禍で学外実習に行くことができない授業の代替措置として有効に活用されている。

学生の支援体制は、基本的には各学年の担任・副担任が担当する。担任はあらかじめ定められたローテーションに従って、入学時から3年次前期までは基礎系教授、3年次後期から卒業時までは臨床系教授が担当している。副担任は入学時から同一の女性教員が卒業まで担当する。

履修指導に関しては、1年次では履修登録指導、修学指導を入学後のオリエンテーションで行うと共に、2年次以降では年度始めに担任による指導を行っている。各科目の履修、予習・復習アドバイスについてはシラバスに明記しており、学生の個別指導については各科目にオフィスアワーを設定し対応している。また、前の半期のGPAが1.5未満であった成績不振者については、担任が個別面談にて指導を行っている。例年は成績不振者が希望する場合、歯学部後援会の開催日を利用して、保護者を対象に面談を行い指導に努めているが、2020年はコロナ禍で後援会が中止となり実施されず、2021年は後援会が遠隔開催となったため、面談が実施できなかった。

経済的支援に関しては、入学時に全学部対象の日本学生支援機構及び各種団体奨学金の手続きを行なっており、歯学部の上級生を対象とする奨学金(森田育英会奨学金、NSKナカニシ財団等に関しては歯学部学生委員会及び学生支援係が申請の手続きを行なっている。授業料免除及び入学料免除・徴収猶予等については主に入学時に選定を行うとともに、災害時における学生支援緊急給付金の給付も行なっている。

課外活動については、鹿児島大学歯学部同窓会が歯学部全サークルに一定額の助成と全国歯科学生体育大会(オールデンタル)の壮行会費の一部を、離島歯科医療実習などについては鹿児島大学歯学部後援会が経費の一部を支援している。なお、2021年度はコロナ禍のため、全国歯科学生体育大会の開催はなく、離島歯科医療実習も実施できなかった。

進路選択、キャリア形成に関する相談・支援については、鹿児島大学歯学部同窓会と歯学部との共催で毎年11月頃に「進路相談会」を行なっている。これは、歯科医師臨床研修制度に関する講演を歯科総合診療部の教員が実施するとともに、開業している同窓生(過去には、海外で活躍している同窓生、自衛隊に勤務する同窓生、同窓の女性歯科医師など様々なロールモデルを含む)をパネリストとして招聘し、これから進路選択を迫られることになる5年次生に対して卒後の進路の選択肢やその内容を説明するとともに、将来のキャリアパスについて身近に考える機会を提供するものである。2021年度は40名程度が参加し「そのキャリアを選択した理由」や「女性歯科医師のライフイベントとの関わり方」などの質問が出され、パネリストが回答した。個別の進路相談については主に各学年担任及び「学生なんでも相談室」相談員が対応している。

その他、口腔先端科学教育研究センターが主催する「大学院説明会」は毎年年度初めに開催され、研修歯科医の全員と、学生の希望者が参加している。

また、既卒生に対する歯科医師国家試験の受験支援については、学務課において既卒受験生情報の一元管理を行うとともに、学生支援部会が中心となって本院の意向に応じて国家試験に関する情報提供や桜ヶ丘図書館の利用案内等を行っている。

●項目: 臨床実習体制

評価の視点評価のポイント
2-7 診療参加型臨床実習の管理運営体制が整備されていること。
  • 臨床実習の管理運営体制
2-8 診療参加型臨床実習の指導歯科医の条件が明示され、十分な教員数が配置されていること。
  • 診療参加型臨床実習を担当している指導歯科医数及び臨床教授等の数
  • 診療参加型臨床実習の指導歯科医の資質 や要件(例えば、臨床経験年数、専門学会の専門医、認定医の資格、指導歯科医講習会受講の有無、共用試験の評価者資格など)の明確化
2-9 患者に臨床実習の意義が説明され、患者の同意が確認されていること。
  • 患者への説明
  • 患者の同意書の取得
2-10 臨床実習に必要な施設・設備を整備していること。
  • 臨床実習用歯科ユニット、臨床実習用技工室、シミュレーター室等の臨床実習に必要な施設・設備の整備
<現状の説明>
【2-7】診療参加型臨床実習の管理運営体制が整備されていること。

診療参加型臨床実習は、歯学部教育委員会の下部組織として運用されている「臨床教育部会」によって管理運営されている。

同部会構成員は発達系、成人系、外科系診療科からそれぞれ講師又は准教授1名を選出し、これに加え、各診療科(口腔保健科、矯正歯科、小児歯科、保存科、歯周病科、冠・ブリッジ科、義歯補綴科、口腔外科、口腔顎顔面外科、顎顔面放射線科、歯科麻酔科、歯科総合診療部)から選出された教員各1名としている。

同部会は毎月第1火曜日に定期開催され、臨床予備実習及び臨床実習のカリキュラム管理、実習の具体的なスケジュール立案、e-logbookシステム[(株)ニッシン社製]を利用したケースカウントの管理、成績評価の管理等、臨床予備実習及び臨床実習にかかわる企画及び運営全般にわたる実務を担っている。

一例として、臨床実習の期間を通して毎週木曜日の15:00~16:00には臨床実習セミナーを実施している。臨床実習Ⅰ期間中には各診療科や歯科関連多職種からのレクチャーが行われ、セミナー終了後には実施報告を提出して実施記録を残している。臨床実習Ⅱ期間中には、総合症例検討会として学生が実際に経験した臨床例を報告し、討論や情報共有を図る機会としている。

以上のように診療参加型臨床実習の管理運営は、臨床教育部会が担っているが、同部会で検討・決定する事項のうち重要な事項は歯学部教育委員会の審議を経て、最終的には歯学部教授会において承認を得ることとしている。

学生の診療参加型臨床実習への参加要件である共用試験OSCE及びCBTに合格した者については、「Student Dentist」に認定し、認定式において歯学部長から認定証を直接学生に交付することで、これから臨床実習に臨む学生のモチベーションの高揚を図っている。さらに学習支援部会を中心として、臨床実習学生を含めた全学年の学生の学修を支援する体制を整えている。

【2-8】診療参加型臨床実習の指導歯科医の条件が明示され、十分な教員数が配置されていること。

診療参加型臨床実習を担当する指導歯科医については、習熟度の低い学生を指導することから、臨床研修の指導歯科医と同等の資格要件を課している。その資格要件については臨床教育部会で検討を重ね、2018年8月開催の同部会において要件案を策定し、承認を得て現在運用するに至っている。

策定した資格要件は以下のとおりである。

  • 1)臨床実習生に対する指導を行うために必要な経験及び能力を有しているもの
  • 2)教員(助教以上)であること
  • 3)臨床経験5年以上(臨床研修を行なった期間を含めて良い)であること
  • 4)指導歯科医講習会(財団法人歯科医療研修振興財団主催又は「歯科医師の臨床研修に係る指導歯科医師講習会の開催指針について」(平成16 年6月17日付け医政発第0617001号)に則って開催されたもの)を受講し,受講証を所有していること

2021年5月現在、歯学部の全分野の中で臨床系の分野には計101名の教員が在籍しており、上記の資格要件に照らすと、歯科医師でない教員3名を除く98名が指導歯科医資格要件を満たしていることを確認している。これは、臨床実習学生1名当たり約2名の指導歯科医体制を敷いていることとなる。

また、臨床実習以外にも学外における実習等に関連して教育職位特別呼称として、臨床教授等を本学部規則に基づき任命しており、学外施設等での実習の委託をはじめ実習教育の実を上げている。2021年度は、臨床教授7名、臨床准教授3名、臨床講師20名がそれぞれ任命されている。

これらの臨床教授等による学外実習は、3年次においては地域歯科医療の早期理解を深めることを、5年次及び6年次においては、臨床実習の一部として地域歯科医療を理解し実践するための基本的知識、技能、態度を習得することを目的として、3年次の講義、3年次及び5年次の学外実習)、6年次の学外実習先として配置され、教育効果を上げている。2021年度は、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、5年次の学外実習及び、6年次の学外実習は実施できていない。

【2-9】患者に臨床実習の意義が説明され、患者の同意が確認されていること。

全ての新患患者に対して、歯科医師の養成機関として果たすべき役割、特に臨床実習の意義について指導歯科医が十分に説明を行った上で、歯学部学生の臨床実習教育への協力に関する同意(包括同意)を依頼している。同意の意向は患者による同意書への自筆署名をもって確認を行っており、同意書はスキャンされて電子カルテに取り込まれ、全ての診療科において診療の際に確認できるように一元管理されている。

既存の同意患者に加えて、2021年度は途中経過(4月~2月)であるが、新たに6,284名から同意書を獲得した。それらの全てが新患から得られたとは限らないが、2021年度の本院の初診患者(≒新患)数は6,434名であり、その97.7%から同意を得られたことになる(2020年度の1年間では7,287名の初診患者の88.9%に当たる6,475名から取得)。例年、コンスタントに協力患者を各獲得している。

一方、課題として挙げられるのが、臨床実習を円滑に進める上で必要な同意を得られた協力患者数の確保がある。さらに、2018年7月には厚生労働省より個別同意書の取得についての方向性が示されていることから、一部の診療科では診療科独自に個別同意書を運用している。しかし、多くの診療科では包括同意が得られた患者には個別の診療の際に指導歯科医から再度口頭で説明し、同意が得られた上で、学生に診療参加させているのが現状である。

本件については、歯学部臨床教育部会で上記の方向性に沿った個別同意書の作成をはじめ、保管や管理方法に関して検討を行っていたが、令和6年度に予定されている医科診療棟への歯科外来の移転を機に、包括同意書の医科・歯科共通化が必要となった。そのため、包括同意書の更新作業が先行して進められており、個別同意書の見直しに関わる作業は中断している。

【2-10】臨床実習に必要な施設・設備を整備していること。

病院棟内には歯科診療に使用するユニット計106台が各診療科に配置され、各診療科の診療用ユニットは,歯学部の歯科医師による診療をはじめ、研修歯科医の研修、及び診療参加型臨床実習での使用を兼ねている。これ以外の臨床実習用ユニットとして、歯科総合診療部に11台、小児歯科に4台があり、臨床予備実習時のシミュレーションや相互実習、共用試験OSCE等に用いられている。

技工室に関しては、臨床実習の学生専用の技工室としては整備されていないため、第1医員技工室(補綴系)と鋳造研磨室を、指導歯科医や研修歯科医と共有して必要に応じて使用する体制をとっている。現在、病院の再開発計画が進んでおり、技工室は歯科技工士、全ての歯科医師及び学生が共有することを前提に新外来棟内に整備される予定であることから、現有の施設、設備の効率的運用により対応している。

また、歯科総合診療部内には、2013年度に学生専用の歯科演習室が整備され、ユニット4台を使用して、マネキンを使用したOSCE前の自主練習や自験前の実技トレーニングを行うことが可能である。このことは、臨床実習要項にも明記されている。同演習室には、高齢者のマネキンやベッド、車椅子、訪問診療用ポータブルユニットも整備され、臨床実習の期間を通して同演習室を解放し、各学生が臨床現場での課題をフィードバックして自主的に臨床能力の向上を図れる機会を設けている。

さらに、これらの施設や設備を用いた実習として、症例ベースで行う「訪問診療シミュレーション実習」が臨床実習Ⅰの期間内に全ての臨床実習生(5年次)を対象に行われている。

臨床系科目の基礎実習や臨床予備実習では、歯学部講義実習棟の第3実習室も使用する。同室には2003年にマネキン(クリンシム:モリタ社製)と液晶モニターを備えた60台の実習台が整備されており、モニター上で指導歯科医のデモンストレーションを見ながら実習を行うことができる。2021年度には経営戦略経費(学長裁量経費)の補助を受け、同実習台3台を増設し、経年劣化によるトラブル発生にも備えている。

第3実習室では、2018年度及び2019年度に歯学系診療参加型臨床実習後客観的臨床能力試験の一斉技能試験(CSX)のトライアルを実施し、試験会場としての適切性を確認した。2021年度には本実習室においてCSXを正式実施し、大きなトラブルもなく終了した。

●項目: 臨床能力向上のための教育

評価の視点評価のポイント
2-11 臨床実習開始前に学生の知識・技能・態度の評価を行い、診療参加型臨床実習を行う学生の質の担保を図っていること。
  • 臨床実習開始前に達成すべき基本的態度・知識・技能の到達目標の設定とその評価
  • 臨床実習開始前の共用試験の利用方法
  • 共用試験の成績の把握
2-12 患者の安全に配慮しつつ、臨床能力の向上のための教育カリキュラムを整備していること。
  • 臨床実習用シラバスの整備及び明示
  • 臨床実習の内容
  • 臨床実習の形態(固定実習型、ローテイト実習型、ハイブリッド型など)
2-13 診療参加型臨床実習に十分な実習時間を定め、実践していること。
  • 学生1人あたりの担当患者数や自験数、介助数、見学数等に配慮した実習時間の設定・実施
  • 自験、介助、見学等と補完実習の割合に配慮した補完教育の実施
2-14 卒業時の臨床能力が明示され、診療参加型臨床実習において修得した能力を評価するシステムを有し、臨床能力を担保していること。
  • 臨床実習用シラバスに記載された成績評価の基準・方法
  • 臨床実習終了後の評価方法
  • Post-CC PXの利用方法と成績の把握
  • 臨床研修との連続性に配慮したミニマムリクワイヤメントの設定・評価
2-15 診療参加型臨床実習に際して、医療事故防止、感染対策等に関する医療安全教育が行われていること。
  • 学生に対する医療安全教育に関する講義、セミナーの実施とその時期
  • 診療参加型臨床実習に関するマニュアルの整備
  • 実習に際しての学生の保険加入状況
<現状の説明>
【2-11】臨床実習開始前に学生の知識・技能・態度の評価を行い、診療参加型臨床実習を行う学生の質の担保を図っていること。

本学部では2015年度よりアウトカム基盤型のコンセプトに基づく教育カリキュラムに全面的に移行し、コンピテンスとして「Ⅰ.歯科医師の職責とコミュニケーション、Ⅱ.歯科医学および関連領域の知識、Ⅲ.医療の実践、Ⅳ.地域医療とヘルスプロモーション、Ⅴ.生涯学習と科学的探究心」を掲げている。これらに基づき、入学直後から多くの教育場面を通じて、医療人としての人間性や、コミュニケーション能力、医療分野に加えて幅広い知識、患者や家族の状況に配慮した歯科医療の実践、地域医療への貢献、生涯にわたる医療者としての向上心、など涵養を目指している。

1年次の歯科臨床早期体験実習では大学病院での歯科医療の現場の見学、2年次の地域体験実習では幼稚園や高齢者施設における滞在型実習、3年次の地域医療学実習では地域の歯科医院の見学を通じたシャドウイングを実施している。

このように、学生の各時期に多様な臨床に関連した場面を体験することを通じて、学生自身が主体的に学習に取り組むよう、患者への配慮及び臨床能力の向上の必要性を理解する機会を与えている。

本学部では、臨床実習の直前の5年次の4月から臨床予備実習を開講している。本実習は、基礎系各分野による臨床との関連を意識した講義、及び各診療科を基盤としたローテーション方式の実習によって行われ、それまでの座学を主体とした教育から、大学病院内で行われる「診療参加型臨床実習」への橋渡しの場としている。本実習の到達目標は「社会の期待に応えうる自立した歯科医師としての自覚を高めるために、これまで学んできたすべての内容を統合し、患者中心の医療の実践に結び付ける基盤を構築するとともに、診療参加型臨床実習の実践に必要な基本的知識、技術、態度を修得する」としており、各分野の学習目標と評価基準は臨床予備実習シラバスに明記されている。

臨床予備実習期間の6月に共用試験CBTを、8月に共用試験OSCEを実施し、診療参加型臨床実習に臨むに当たっての知識の評価をCBTによって、基本的態度と技能の評価をOSCEによって行っている。合格基準は、CBTでIRTスコア480以上、OSCEで得点率60%以上としている。CBTとOCSEの両方に合格した上で、臨床予備実習に合格した者が臨床実習Ⅰに進むことができる。

2021年度CBTの結果は、本試験において不合格が2名で、最終的に再試験において2名とも不合格となった。2021年度OSCEの結果は、本学の課題全体の平均得点率は88.1%(2020年度:84.5%)で、全員が総合点で合格基準(60%)に達していた。総合で60%に達していても、60%に達していない課題があった学生に対しては、その課題について補講を行なった。

【2-12】患者の安全に配慮しつつ、臨床能力の向上のための教育カリキュラムを整備していること。

臨床予備実習、臨床実習Ⅰ、臨床実習Ⅱには全体を統括するシラバスがあり、そこに記載された内容を各診療科が分担している。

診療科ごとに制作された、臨床予備実習、臨床実習Ⅰ、臨床実習Ⅱのいずれのシラバスにも、実習の内容や実習方法、実習における到達目標、成績の評価基準などについて記載した授業科目名、選択・必修、授業形態、開講期、単位数、担当教員、担当教員所属、連絡先(電話番号、メールアドレス)、担当教員のオフィスアワー、授業のキーワード、関連する学部・学科ディプロマ・ポリシー、関連する学部・学科コンピテンシーと求められる達成レベル(A:行動力、B:表現力、C:応用力、D:知識、E:関与)、学習目標(関連する歯学教育モデル・コア・カリキュラム番号)、授業概要、授業計画、予習・復習へのアドバイス、教科書、参考書、成績の評価基準、再試験の有無、研究活動との関連、アクティブラーニングの種類と授業回数を、全学共通のフォーマットに基づき記載している。シラバスは、歯学部ホームページで閲覧可能であると当時に、臨床予備実習要項及び臨床実習要項に収載されている。

臨床予備実習の期間の前半では、臨床予備実習に臨むに当たり必要な基礎歯学、臨床歯学の知識を、基礎系全分野及び臨床系全診療科・部の講義によって臨床系実習の直前に振り返り、それまでの4年間に学んだ内容の統合を図って、続く各診療科・部での臨床系実習での基盤とする。

臨床予備実習の後半では、学生全体を1グループ当たり4~6名の10グループに分け、A:小児歯科、B:口腔保健科、C:矯正歯科、D:歯科麻酔科+顎顔面放射線科、E:歯周病科、F:口腔外科、G:口腔顎顔面外科、H:冠・ブリッジ科、I:義歯補綴科、J:保存科の各診療科を4日間単位でローテイトする。講義と基礎実習で習得した知識を確実にすると同時に、知識と臨床手技の隔たりを補うために、マネキンを用いたシミュレーション実習や相互実習、臨床見学により、患者に対応するための心構えを養う。臨床予備実習の期間に、「臨床予備実習セミナー」として毎週一回は全学生を一同に集めて、各診療科の講義の補完やアクティブラーニングを行うことにより、患者さんに対応するための知識や技術とともに、態度を養う。各診療科とも、4~11名の指導教員で実習を担当している。これらを通じて、それまでの机上の学修から、診療参加型臨床実習への橋渡しとしている。

臨床実習では、学生全体を1グループ当たり4~6名の10グループに分け、8群(A:口腔保健科、B:小児歯科、D:顎顔面放射線科、E:口腔顎顔面外科、F:口腔外科、G:歯科麻酔科、H:成人系4科+矯正科、及び歯科総合診療部(地域歯科医療実習))を5日間単位でローテイトしている。H週は、成人系4診療科(保存科、歯周病科、冠ブリッジ科及び義歯インプラント科)と矯正科の5診療科により構成され、年間通じて原則隔週で配属される。

診療参加型臨床実習においては、臨床実習Ⅰでは「自験」への導入段階として、担当医と行動をともにして「見学」や「介助」を中心に患者とのかかわりを経験している。続く臨床実習Ⅱでは、担当患者を基盤とした「自験」中心の臨床実習を行うこととしている。診療参加型臨床実習は各診療科の外来、手術室及び病棟で行われる。自験は、指導歯科医資格を有する主治医のもとで、学生の行動に目が行き届く体制で行われている。

これらのローテーション方式の診療参加型臨床実習に加えて、自らで歯科診療技能の修得を目指すためのシミュレーターを用いた「歯科演習室」を整備しており、利用許可申請を行うことにより臨床予備実習生及び臨床実習生は随時使用することが可能となっている。

本学に特徴的な実習について以下に述べる。

訪問診療シミュレーション実習は、臨床実習Ⅰの期間の初期に、歯科演習室において、同室に整備されているベッドや車いす、マネキン、訪問診療用ポータブルユニットなどを使用して、2つのシナリオに基づいて高齢者の居宅への訪問歯科診療のシミュレーション教育を実施している。

例年、臨床実習Ⅰ及びⅡの期間には、地域歯科医療実習や離島歯科医療実習及び離島歯科巡回診療同行実習が実施される。これらの実習においては、安全への配慮の観点から、見学や介助を中心とした実習としている。

地域歯科医療実習は、鹿児島市内及び近郊の歯科診療所の歯科医師(臨床教授、臨床准教授、臨床講師)と5日間連続で行動を共にし、多様な患者ニーズへの対応方法や、地域医療の役割、地域における多職種連携の重要性などについて理解を深めることを目的とする。2021年度は、臨床実習Ⅰの期間の2021年12月から2022年3月の間に実施した。

離島歯科医療実習は、鹿児島県の離島の歯科診療所の歯科医師(臨床教授、臨床准教授、臨床講師)のもとで歯科医療の現場見学を通じて、地域包括医療や、地域における多職種連携の重要性について理解することを目的として行われる。臨床実習Ⅱの期間に実施される。離島歯科巡回診療同行実習は、鹿児島県の事業として実施されている離島歯科巡回診療に参加する本学の教員に同行して、無歯科医離島における歯科医療の現場を体験することにより、歯科医療及び歯科医師の役割や、無歯科医離島における医療の特異性を学習する。臨床実習Ⅰ及びⅡの期間に実施される。臨床実習Ⅰ及びⅡの期間に、離島歯科医療実習又は離島歯科巡回診療同行実習のいずれかに参加することを課している。今年度は、新型コロナウィルス感染症の影響で、学外実習を見合わせたことや、離島地域の入島制限が行われたことから、これらの実習は実施できなかった。

地域歯科医療実習及び離島歯科医療実習の受入先は、鹿児島大学歯学部の臨床教授、臨床准教授、臨床講師の任命を行った歯科医師としている。離島歯科巡回診療同行実習は,診療を担当する歯科医師が本学の指導歯科医資格を有する場合にのみ、学生の帯同を可能としている。

地域歯科医療実習に関しては、実習開始前に全受入施設の先生方を集め、実習責任者及び臨床教育部会担当者より実習のカリキュラム及び教育指導体制について毎年説明会を開催している。これらの学外実習の実施に当たっては、学生に対して実習開始前に入念なオリエンテーションを行い、実習に送り出している。

臨床実習Ⅰ及びⅡの期間を通じて、毎週木曜日の臨床実習終了後に臨床実習セミナーが開かれる。ここでは、普段は目にする頻度の少ない症例や各診療科での専門性の高い症例の供覧、診療科以外の院内の関連部門(看護部、歯科衛生部門、歯科技工部門、薬剤部)による多職種の関わりに関する講義などが行われる。また、臨床実習セミナー期間の終盤には総合症例検討会が行われており、学生は全員がいずれかの診療科に配属されて症例発表に準備段階から携わることにより、症例への理解を深めている。

【2-13】診療参加型臨床実習に十分な実習時間を定め、実践していること。

診療参加型臨床実習は、5年次後期の臨床実習Ⅰと6年次前期の臨床実習Ⅱの2期制で実施している。2021年度は、5年次に臨床実習Ⅰ(22週、104日間)、6年次に臨床実習Ⅱ(24週、107日間)の実習時間を確保した。なお、1日当たりの実習時間は8単位時間が基本となっている。

学年単位での臨床実習Ⅰと臨床実数Ⅱを合わせた診療参加型臨床実習の時間は、2020-2021年度臨床実習(6年次)では212日間(1560時間)を実施し、2021-2022年度臨床実習(5年次)では212日間(1560時間)の実施となる予定である。これらの診療参加型臨床実習の実施時間は、歯科医学教育白書2017年度版の報告と比較すると、実施時間としては全国平均程度と推測される。

臨床実習における1名当たりの必須ケース数は、臨床実習ⅠとⅡの期間を通じて、全ての診療科の合計で、自験:184、介助:98、見学:185に設定されている。自験内容は、「臨床実習の内容と分類」における水準1及び水準2の項目を中心に行い、医療面接、診察、歯周治療、CR充填処置、根管治療、予防填塞、チーム医療、抜歯、縫合、可撤性義歯など幅広く取り組ませることとしている。

新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、5年次の臨床予備実習においては、2021年4月7日(水)~4月20日(火)の登院実習休止(講義は遠隔実施)期間は、当初予定の基礎系科目解説講義を遠隔実施した。

また、6年次の臨床実習Ⅱの期間には、2021年4月7日(水)~4月20日(火)及び、8月18日(水)~9月3日(金)の期間は登院実習休止となり、自験をはじめとする臨床実習の実施に多大な支障をきたした。登院実習休止期間は、実習室でのシミュレーション実習や症例供覧、課題提示などの代替実習を実施し、補完に努めた。

【2-14】卒業時の臨床能力が明示され、診療参加型臨床実習において修得した能力を評価するシステムを有し、臨床能力を担保していること。

本学部では、ディプロマ・ポリシーに基づき、卒業時に期待する学習成果(アウトカム)として5つのコンピテンス(Ⅰ.歯科医師の職責とコミュニケーション、Ⅱ.歯科医学及び関連領域の知識、Ⅲ.医療の実践、Ⅳ.地域医療とヘルスプロモーション、Ⅴ.生涯学習と科学的探究心)を設定している。コンピテンス「Ⅲ.医療の実践」として、「鹿児島大学歯学部学生は、卒業時に患者、患者家族を尊重し、全身的、精神的、社会的状況に配慮した、安全で効果的かつ合理的な患者中心の歯科医療を実践する。」を掲げ、具体的には10項目のコンピテンシーを設定し教育を行っている。

各診療科のシラバスには、関連するコンピテンシーと求められる達成レベル、また、歯学教育モデル・コア・カリキュラム(平成28年度改訂版)に関連した学習目標が設定され、記載されている。臨床実習でのケースカウントは、歯学教育モデル・コア・カリキュラム(平成28年度改訂版)にしたがって、水準1と水準2に準じて作成されている。なお、本学部では臨床実習におけるケースカウントを行うツールとして、従来用いていた実習ケース終了ごとに指導歯科医が押印する実習帳形式を廃し、スマートフォンを用いて電子的に記録を蓄積していくe-logbookシステム(㈱ニッシン社製)を導入し運用している。

各診療科での実習においてミニマムリクワイヤメントが設定されてシラバスに明示されており、e-logbookシステムによってカウントしたケース数、レポート課題、試問、実習態度等によって評価を行っている。ケース個々の評価は、e-logbookシステムの認証時に、学生の自己評価の確認と指導歯科医の評価を入力している。

診療参加型臨床実習終了後の臨床能力を評価するために、共用試験実施評価機構が実施する共用試験歯学系診療参加型臨床実習後客観的臨床能力試験(Post-CC PX)が導入されたことから、2020-2021年度臨床実習では臨床実地試験(CPX)及び一斉技能試験(CSX)を正式実施した。これに伴い、2019-2020年度臨床実習まで実施していた本学独自の臨床実習終了時OSCEの存続について、各診療科等の意見を踏まえ歯学部臨床教育部会で協議した結果、それぞれの診療科等での評価が、学生個々の臨床能力を評価しているものと判断できることから廃止することとした。

【2-15】診療参加型臨床実習に際して、医療事故防止、感染対策等に関する医療安全教育が行われていること。

本学部における医療安全の教育は、医療安全教育は入学直後より実施され、「患者と医療(1年次)」、「プロフェッショナリズムⅠ(2年次)」、「コミュニケーション学(3年次)」、「歯科医療倫理学(3年次)」、「プロフェッショナリズムⅡ(4年次)」、「総合歯科医療実践学(5年次)」等の科目で、安全で円滑な診療を行うために必要な患者やスタッフとのコミュニケーション、インフォームドコンセントに基づく患者との信頼関係の確立や医療者としての心構えについて教授している。また実習における医療安全教育は、1年次の歯科臨床早期体験実習をはじめ、基礎実習開始時から診療科ごとに行われている。

さらに本学部では、患者に対して安心・安全の診療参加型臨床実習を行っていくためには、共用試験合格レベルであっても一層の臨床能力の向上が必要と考え、5年次前期の臨床予備実習の期間を設けている。臨床予備実習開始時のオリエンテーションにおいては、診療の安全に対する心構えとして、「鹿児島大学病院の医療に関する安全管理指針」「インシデント発生時の対応」「院内救急蘇生システム」「患者確認」「診療情報管理」「病院情報システムに関する事故防止策」「標準予防策」「手洗い・手指消毒」「歯科感染対策マニュアル」「感染性廃棄物の取り扱い」「針刺し・切創・粘膜暴露への対応」「針刺し・切創・粘膜暴露の予防」「注意を要する感染症」「鹿児島大学病院 患者さんの個人情報について」の項目についての指導を行い、臨床予備実習要項の中にマニュアルとして掲載している。

これらのマニュアルに基づいて、病院医療環境安全部の担当教員より「医療安全」について、歯科ICT(Infection Control Team)担当教員(ICD)より「感染対策」について、臨床実習責任者(臨床教育部会長)より「個人情報の取り扱い」について指導している。

臨床実習開始時には、改めてオリエンテーションを実施して、歯学部長、副病院長及び臨床教育部会長より、臨床実習生に求められる医療者としての意識や態度に関する指導が行われる。それらを学生に強く認識させるために、臨床実習開始前共用試験の合格基準を満たした者としてStudent Dentistに認定し、認定証授与式を保護者等同席のもと実施した。また、外来患者に対する診療参加型臨床実習への協力依頼を、病院受付の掲示板に提示した。

特に感染対策に関しては、臨床実習Ⅰ及びⅡの期間を通じて毎週木曜日に開講される臨床実習セミナーの初回に、歯科ICDによる感染対策に関するセミナーを行い、歯科医療に関わるに当たり感染対策に配慮した行動を指導している。また、臨床予備実習、臨床実習Ⅰ及び臨床実習Ⅱの期間を通じて、日々の外来診療の中で指導歯科医が医療安全と感染症対策について随時教育している。

本学部の学生は入学と同時に学生教育研究災害傷害保険又は学生総合共済に全員が加入しており、講義、演習、実習中の事故や受傷等に備えている。

本学部では、2015年度からのアウトカム基盤型教育に基づくカリキュラム導入後は、附属病院内で実施される診療参加型臨床実習に加えて、幼稚園や高齢者施設、地域の歯科医院など、学外の施設で幅広い年齢層の人たちと接する実習の機会を構築している。各実習に積極的に参加するに当たっては、実習先の人々との交流の中で不測の事態により自らが受傷する可能性に加えて、相手を負傷させてしまうことも考えられる。したがって、実習中の不測の事態に備えて、自身のための傷害保険に加えて、対人賠償と対物賠償にも対応する保険(学生教育研究災害傷害保険付帯賠償責任保険や学生賠償責任保険)を付帯することを全員に義務付けた。全学年の学生の保険加入状況は毎年確認している。

学生は実習のために医療機関に出入りし、さまざまな感染症患者と接触する可能性があるため、実習中の安全確保と医療機関内での感染防止のために、5種類の5類感染症(麻疹・風疹・水痘・流行性耳下腺炎・B型肝炎)の免疫状態を確認し、基準を満たすことを参加要件としている。

B型肝炎を除く4種類の感染症については、各自が医療機関で抗体検査を受け、基準値に達しない者にはワクチン接種を義務付けている。B型肝炎については大学で対応しており、抗体検査により基準値に満たないものにはワクチン接種を実施している。インフルエンザについても、病院実習を行う学年に対してワクチン接種を実施している。歯科臨床早期体験実習をはじめ、1年次後期から手術室を含む臨床の現場に参加する機会があることから、全ての学年で免疫状態の確認を行っている。

●項目: 成績評価・卒業認定

評価の視点評価のポイント
2-16 成績評価の基準・方法を適切に設定し、あらかじめ学生に明示していること。
  • シラバスや学部要覧等における成績評価基準・方法の明示
2-17 設定された成績評価の基準・方法により、成績評価を公正かつ厳格に実施していること。
  • 成績の告知方法
  • 臨床基礎実習等を含む成績評価
  • 成績分布等を用いた成績評価の妥当性の検証(例えば、GPAの活用など)
2-18 進級判定基準を設定・明示し、適切な評価・判定を行っていること。
  • 進級判定基準の内容と周知方法
  • 進級判定のプロセス
  • 関連委員会・教授会における進級判定の実績
  • 留年者及び退学者等の状況
2-19 成績評価の公正性・厳格性を担保するために、学生からの成績評価に関する問い合わせ等に対応する仕組みを整備し、かつ、学生に対して明示していること。また、その仕組みを適切に運用していること。
  • 学生への成績評価の開示
  • 学生からの成績評価に対する問い合わせ制度(不服申し立てを含む)の整備、周知、運用
2-20 学位授与方針に基づき、公正かつ厳格な卒業認定を行っていること。
  • 修得すべき知識・技能・態度など期待する学習成果を踏まえた卒業認定の基準の明示
  • 卒業認定の手続・方法の明示
  • 卒業認定における公平性・厳格性の担保
<現状の説明>
【2-16】成績評価の基準・方法を適切に設定し、あらかじめ学生に明示していること。

鹿児島大学では「鹿児島大学学則」第42条の2(成績評価基準等の明示等)第2項において「各学部等は、学修の成果に係る評価及び卒業の認定に当たっては、客観性及び厳格性を確保するため、学生に対してその基準をあらかじめ明示するとともに、当該基準にしたがって適切に行うものとする。」と定めている。また、単位認定については、同学則第48条で「授業科目を履修し、その試験に合格した者には、所定の単位を与える。」と定められており、この規則に従って成績評価、単位認定を運用している。

歯学部では「鹿児島大学歯学部規則」及び「鹿児島大学歯学部授業、試験及び進級に関する細則」において試験を定め、年度ごとに発行する「修学の手引き」に明示している。

「鹿児島大学歯学部授業、試験及び進級に関する細則」では次のように示している。試験については、第5条から第11条で、出席時間数に基づく受験資格の認定、時期及び方法、実施者とその心得、受験者の心得、遅刻者・欠席者の扱いを示している。成績評価基準については、第12条に規定しており、成績の表記は、秀(90点以上)、優(80点以上90点未満)、良(70点以上80点未満)及び可(60点以上70点未満)とし、60点未満を不可としている。

また、鹿児島大学では学生の総合的な学習到達度を評価する目的でグレード・ポイント・アベレージ(以下「GPA」)を付与している。付与するGPAは、秀は4点、優は3点、良は2点、可は1点、不可は0点としている。

これに基づき算出するGPAの計算式は、

GPA=(秀の単位数×4点+優の単位数×3点+良の単位数×2点+可の単位数×1点)/(総履修登録単位数)

としている。

進級判定の根拠となる各授業科目における評価方法は、各授業科目の担当分野が作成するシラバスの「成績の評価基準」欄に具体的な評価方法とともに、複数の方法を用いる場合はそれぞれの割合まで記載しているとともに、「再試験の有無」についても記載している。シラバスは歯学部ホームページから検索可能であり、電子ファイルの形式で公開しており、学生全員がPCやスマートフォン等で閲覧・ダウンロードできるようにしている。

臨床予備実習に関しては、教育を担当する全20分野がシラバスに従い学生個々の評価を行い、全成績を総合して科目の成績としている。また、臨床実習Ⅰ及びⅡについては、教育を担当する臨床系全12分野がシラバスに従い学生個々の評価を行い、全成績を平均して科目の成績としているが、各分野の成績のうち60点に満たない成績がある場合は平均とせず、科目は不合格としている。

臨床実習開始前に行われる共用試験については、科目の単位認定とは別に進級要件として位置づけられている。臨床実習に進級するための能力測定を目的とした本共用試験については、4年次の1~2月に説明会を開催し、合格基準等についても説明を行っている。CBTはIRT標準スコア480、OSCEについては得点率60%を合格基準としている。

最終的な各科目の得点・成績は、印刷物による掲示又は学習管理システムmanabaにアップロードし、学生が各自の得点・成績などを閲覧できるような体制を構築しており、必要に応じて利用できるようにしている。

【2-17】設定された成績評価の基準・方法により、成績評価を公正かつ厳格に実施していること。

各授業科目の評価は、シラバスの「成績の評価基準」に従って、担当分野ごとに行っている。基本的に講義時間中に行う確認試験、中間試験、レポート等の得点及びその他の評価結果と所定の試験期間に行う定期試験(追試験、必要に応じて原則として1回行う再試験を含む)の得点を総合して評価を行っている。

各科目内においては、実際の教育担当者と科目責任者を含めた複数の目で評価結果を確認し公平性を担保するとともに、科目責任者の責任のもと、最終的な成績評価を厳格に行っている。

統合系科目など複数の教員が担当する科目においては、オーガナイザーを兼ねる単位認定教授(又は准教授)を設置しており、シラバス記載に沿った評価がされているか等の適切性を確認した上で 、最終的な成績評価が行われている。

各教育担当分野における臨床基礎実習等についても実際に教育を担当する教員と科目責任者(単位認定教授)で調整、協議を行い最終的な成績評価を行っている。臨床予備実習については、教育を担当する分野がそれぞれ個別に各学生の評価を行い、総合的な評価を行う体制としている。また、臨床実習Ⅰ及びⅡについても同様に教育を担当する分野がそれぞれ個別に各学生の評価を行い統合し、総合的な評価を行っている。

2017年度よりトライアルが始まった医療系大学間共用試験実施評価機構が実施する診療参加型臨床実習後臨床能力試験(臨床実地試験CPX、一斉技能試験CSX)の成績は、2020年度の同試験正式実施に伴い規則改正及びシラバスの修正を行い、臨床実習単位認定時の要件に組み込んでいる。

各履修科目の成績評価は、科目責任者(単位認定教授)から学務課歯学教務係を通じて歯学部教育委員会に報告され、「鹿児島大学歯学部授業、試験及び進級に関する細則」の第17条に基づき歯学部教育委員会又は同委員会が指定した会議で厳正に確認・審議を行うこととしている。2021年3月に、全学教務委員会において「成績評価に関するガイドライン」が示されるとともに、歯学部独自の「成績評価に関するガイドライン」が2022年4月1日より施行され、各授業科目における評点と評価基準の関係等が明示された。歯学部で開講する実験・実習科目等科目ごとの特性に応じた評価が必要であり、今後本ガイドラインを運用することを通じて、その妥当性を確認していく予定である。

また、「鹿児島大学歯学部授業、試験及び進級に関する細則」第12条の3項から5項においてGPAも付与しており、GPAを活用して学生の総合的な学修到達度の評価を行っている。現在では半期に一度、当該期のGPAが1.5未満の学生を抽出し、結果を本人へ開示するとともに、学年担任による個別指導(面談)が行われている。

学生への成績の通知については、前期・後期毎に成績通知表にて履修科目、単位数、評価を告知し、年度毎に全履修済科目の単位と評価を通知している。また、保証人(保護者)に対しても年度ごとに通知しており、進級できない場合は年度内に、進級する場合は翌年度当初に郵送にて通知している。各学年には学年担任が配置されており、成績及び修学上の問題等について随時相談出来る体制としている。

【2-18】進級判定基準を設定・明示し、適切な評価・判定を行っていること。

1年次の進級判定基準は、「鹿児島大学共通教育科目履修規則」に定める所定の要件を満たしていること及び「鹿児島大学歯学部授業、試験及び進級に関する細則」第16条第1項に定めるとおり、1年次後期までに修得しなければならない全ての専門教育科目の単位を修得していることとされている。

また、2年次から5年次の進級判定基準は、「鹿児島大学歯学部授業、試験及び進級に関する細則」第16条第2項に定めるとおり、各年次後期までに修得しなければならない全ての専門教育科目の単位を修得していることとされている。

また、この細則は、毎年度作成される「修学の手引き」に掲載され、個々の学生に配布され周知されているとともに、入学時のオリエンテーションにて学年担任から詳細な説明が行われている。また、歯学部ホームページ(学内専用)に2013年度以降の「修学の手引き」(PDF)が掲載されており、必要に応じて随時確認できる体制としている。

なお、5年次後期に行われる「臨床実習」への進級認定には、「鹿児島大学歯学部臨床実習前共用試験(CBT及びOSCE)に関する申合せ」に記される共用試験(CBT、OSCE)への合格が別途求められている。

共用試験OSCEについては、合格基準を得点率60%以上としており、共用試験CBTに関しては、従来素点で70%以上得点したものを合格としていたが、合否判定の精度をより高める目的で、2019年度より項目反応理論(Item Response Theory: IRT)を適用し、IRT標準スコア480以上を合格基準とすることに改めた。以上のように、全ての進級判定基準は規則や細則に明示しており、適切に設定、公表されている。

進級判定については、「鹿児島大学歯学部授業、試験及び進級に関する細則」第17条に定めており、判定に先立ち開催される歯学部教育委員会で規定に則り予備判定を行っている。予備判定は、教育を担当する分野から提出された個々の学生の成績一覧表をもとに、「鹿児島大学歯学部授業、試験及び進級に関する細則」に定められている所定の単位数を取得しているかを詳細に確認し、合議により判定を行う。その結果を歯学部教授会へ上程し、審議を経て最終的に進級決定している。

進級判定の結果については、学生向け掲示板に文書で公表されるとともに、進級不可となったものに対しては個別に学年担任が面談を行う体制としている。そこでは、学習指導に加え、留年中の生活相談も含めた対応を行っている。なお、進級判定が不可となった場合は、個々の学生の保証人(保護者)にも文書にて結果を通知している。

学生からの進級判定に関する申し立て制度は、「修学の手引き」の「鹿児島大学歯学部における学生の成績等開示請求及び異議申立てに関する規則」に明記されており、手続きに従って成績等の開示請求及び異議申し立てを行うことができることとなっている。

これらの成績評価及び進級判定プロセスは、歯学部教育委員会の議事要旨、教授会議事要旨として保管され必要に応じて検証できる体制にしている。また、各授業担当分野もしくは歯学教務係においては試験問題・答案用紙を鹿児島大学法人文書管理規則に従って5年間保存している。

留年生の状況については、基礎データ表4に示すとおり、2016年度入学生以降の複数学年において留年生が在籍しており、最も留年生が多いのは1年次であった。1年次の留年が極端に多いのは、共通教育の特定の科目における修学上の問題であり、様々な検討を行ったが留年はやむを得ないと判断された。また、留年期間は1年間が最も多く、2年次、3年次となるにつれその人数は減少した。過去8年間で最長4年間留年した者が2名確認された。

退学・除籍者については、基礎データ表4に2018年度以降の学年ごとの人数を示す。退学・除籍となるものは低学年、特に1年次の後期に多い傾向が認められた。退学の主な理由としては「進路再考(医学部への再受験)」であった。

【2-19】成績評価の公正性・厳格性を担保するために、学生からの成績評価に関する問い合わせ等に対応する仕組みを整備し、かつ、学生に対して明示していること。また、その仕組みを適切に運用していること。

成績評価の公正性、厳格性を担保するために、学生の成績に関する開示請求及び異議申し立てについては2010年度に規則として「鹿児島大学歯学部における学生の成績等開示請求及び異議申立てに関する規則」を定め、仕組みを整備するとともに、運用を行っている。本規則は、全歯学部生に入学時に配布するとともに鹿児島大学歯学部ホームページ上に学内限定で公開されている「修学の手引き」に記載され、学生には常に明示されている。

具体的には、成績評価を含む教学上の判定に不服がある学生は、成績等の公示日から起算して7日以内に所定の異議申し立て書を学部長に提出する。学部長は、速やかに内容を精査し、申し立て日から起算して7日以内に所定の回答書を用いて回答を行うこととなる。学部長は、調査等により過失が認められた場合、あるいは疑義が想定される場合など7日以内に解決が困難な場合は、当該学生に状況を説明するとともに、その内容を学長、教育担当理事、危機管理室長、監事及び学生部長に報告し、対応について協議することになっている。

本規則については、記録の保管義務が課せられている過去5年間において、運用された実績はない。

【2-20】学位授与方針に基づき、公正かつ厳格な卒業認定を行っていること。

鹿児島大学では大学としての教育目標に基づいてディプロマ・ポリシーを定めている。さらに各学部で教育目標とこれに基づくディプロマ・ポリシーを定めている。

歯学部では鹿児島大学のディプロマ・ポリシーを踏まえ、「歯科医療人である前に良識豊かな人間であれ」という理念のもとに3項目の教育目標を設定し、教育目標との整合性を勘案して6項目のディプロマ・ポリシーを設定し、これに基づき学部教育を実施している。

2014年度入学生までは、学習目標準拠型カリキュラムに基づく教育を行っていたが、それまでに抱えていた種々のカリキュラム上の問題を解決するために2015年度に大幅な改革を行い、アウトカム基盤型の新たなカリキュラム(新カリキュラム)で教育を実施している。

新カリキュラムでは、6年間のアウトカムとして5つのコンピテンスを設定している。具体的には、Ⅰ.歯科医師の職責とコミュニケーション、Ⅱ.歯科医学および関連領域の知識、Ⅲ.医療の実践、Ⅳ.地域医療とヘルスプロモーション、Ⅴ.生涯学習と科学的探究心である。

これらのディプロマ・ポリシーとコンピテンスについては、2016年度に両者の整合性を整えるべくディプロマ・ポリシーの修正を行い、それぞれが1対1(コンピテンスⅤのみディプロマ・ポリシー2つが相当)で対応するように配置した。これにより鹿児島大学歯学部が育成を目指す歯科医師像がより明確になり、学生の目指すべき学修の方向性も明示されたと考えられる。

新カリキュラムではさらに、具体的なアウトカムと各科目の関係性を示し、6年間の学びの流れを理解しやすくするカリキュラムマップを明示している。これらのアウトカム達成への評価は、パフォーマンスレベルマトリックスに明示された各科目で到達すべき能力レベルに沿って評価を実施する予定である。

具体的には、本学医学部で独自に開発しているe-ポートフォリオ・システムを歯学部向けに改修し、コンピテンシーを軸とした各科目の能力評価を6年間通して継続的に行う予定である。このように、従来の成績評価に加えてコンピテンシーベースの評価を加えることにより、評価の質を向上させる。本システムは科学研究費補助金(基盤研究(C)(一般)「アウトカム基盤型教育における統合型コンピテンシー評価システムの開発」)の支援を受けて、開発作業が行われている。現状では各授業科目における学生のコンピテンシー達成度のデータ蓄積など部分的に運用を開始している。今後は、蓄積されたデータを縦覧し、学生の成長度を随時客観的に確認できるようにするとともに、組織としても教育効果を可視化できるようにシステムを開発中であり、2021年度も継続して作業を行っている。

卒業認定については鹿児島大学学則第50条に規定しており、各学部が定める所定の単位を修得したものは、当該学部の教授会の議を経て、学長が卒業を認定することとなっている。

6年次の卒業要件は鹿児島大学歯学部規則第10条に定められ、6年次に履修する科目も含めて所定の卒業要件単位を修得した者に対して、歯学部教育委員会で確認を行った上で教授会の議を経て卒業を認定している。

●項目: 教育成果の検証

評価の視点評価のポイント
2-21 学生の学習成果、卒業者の進路状況等を把握・分析し、教育上の成果を検証していること。
  • 学生の学習成果(修得すべき知識・技能・態度など期待する学習成果の達成状況)の把握・分析
  • 卒業生の進路及び活動状況(例えば、国家試験合格状況及び臨床研修マッチング状況、アンマッチ率、大学院進学の状況など)の把握・分析
  • 把握・分析結果を踏まえた教育成果の検証
2-22 検証した結果を教育内容・方法の改善に活用していること。
  • 検証結果を活用した教育内容・方法の改善事例
<現状の説明>
【2-21】学生の学習成果、卒業者の進路状況等を把握・分析し、教育上の成果を検証していること。

学習成果把握の主な方略は「試験」である。学部としての試験期間を前期末、後期末にそれぞれ1週間ほど設けているが、具体的な時期及び方法については、科目の特性に合わせて科目担当者が定めることとしている。

評価の方法、実施時期、合格基準、再試験の有無等はあらかじめシラバスに明記すると共に、必要に応じて学習管理システムmanabaにも掲示し、学生への確実な情報提供を行っている。また、鹿児島大学として学位の質保障の観点から全部局共通の成績評価ガイドラインが策定された。これに、全部局共通のガイドラインの適用が難しい実験、実習、演習、見学等を評価するための歯学部独自のガイドラインを追加して運用を開始した。

成績不振者(GPA<1.5)に対しては、学年担任が面談を行い学習方法の指導を行っている。2017年度からは歯学部教育委員会の中に「学習支援部会」を設置し高学年を中心に学習支援活動を開始した。低・中学年に向けては基礎系教授(准教授)懇談会を設け、年に2回程度、学生の成績、学修状況の情報を共有することで、習熟度、学習態度、出席状況などに課題のある学生を早期に抽出して指導に役立て、問題が深刻化する前の対応策としている。

歯学部教育委員会において共用試験(CBTならびにOSCE)の成績分析と対応が行われ、CBTの成績不振者に対しては学年担任が面接を行い、得点の低い科目に対しての学習方法の指導を行っている。OSCEの成績不振者に対しては、得点率が60%を下回った課題内容について、臨床実習開始前の期間に課題担当教員が個別に補講を行った上で臨床実習に進むようにしている。

各学年の全体的な学修・生活状況の把握と意見聴取のために、歯学部学生委員会のもとに、前期及び後期セメスター終了時、学年担任が各学年の代表者数名と意見交換する場を公式に設け、学年全体での授業に対する評価、学生の授業に対する要望などを聴取している。

面談結果を踏まえて、勉学面は歯学部教育委員会、生活面は歯学部学生委員会が内容を取りまとめ、学生への回答、改善計画等の検討を行い、教授会で報告している。

また、教育委員会では各科目の「授業評価アンケート」を実施し、授業担当者に結果を通知して「授業改善シート」の作成、シラバスへの改善内容の記載、翌年度の授業へのフィードバックを依頼している。大幅な改善等がある場合には、歯学部教育委員会の議を経て、教授会で審議、承認している。

教育の達成状況の調査は、大学本部における全学教務委員会においても行われている。講義及び実習の満足度及び達成度などについて学生を対象として定期的に調査を行っている。このように、授業、実習をはじめとした大学教育全体への満足度の向上などの具体的な検証結果がアンケート調査により得られている。また、各科目の学生による授業評価を通して収集・蓄積された情報は歯学部教育委員会で検討し、FDにより教員全体にフィードバックされている。

歯科医師国家試験の合格状況は過去5年間で、順位はほぼ横ばい、合格率はやや上昇傾向にある。学習支援部会では新卒受験生はもとより既卒受験生の合格状況も把握し、学習支援部会が中心となって不合格者と連絡を取り可能な限り面談を行い、次年度へ向けての学習計画を聴取したり助言指導をしている。

さらに国家試験については、自己採点の結果に基づき各問題毎の正答率を把握して、全国平均と比較して低い正答率の問題等を分析し、教育成果の検証と改善のために、教員に情報提供し、教育方法・内容の改善につなげている。

臨床研修マッチング状況は、6年次のマッチング率は過去6年間の平均で97.7%であり、各年度とも全国平均を大きく上回っている。一方でマッチングしなかった者が例年1名程度存在する。卒業生の進路(研修先) は、鹿児島大学病院、他大学病院、病院歯科・診療所の順に多い。また、自衛隊に入隊する者もいる。一方で、国家試験に不合格となり、研修に進めない者もいる。

大学院への進学状況は、2021年度本学研究科入学者21名のうち15名(71.4%)が、本学部卒業後、臨床研修等を経て入学しており、過去5年間で卒業者の約24%が進学している状況であった。なお、在学生と研修歯科医向けに毎年度「大学院説明会」を開催しており、2021年はコロナ禍のため6月からオンデマンドで説明会動画を視聴する方法で実施した。

卒後の状況については鹿児島大学歯学部同窓会と協力しながら把握に努めている。卒後3年目の卒業生に対しては、鹿児島大学としてアンケートを実施しており、共通質問事項に各学部独自の質問を加えて実施されている。歯学部独自の質問としては、「勤務(就学)地」「勤務(就学)状況」「在学中の履修科目で有意義なもの・そうでなかったもの」「ディプロマ・ポリシーをどの程度身に付けているか」「これからの歯学教育に望むこと」を加えている。回答率が極めて低く分析するには至っていないが、教育委員会が教授会で報告したのち公開されている。なお、ディプロマ・ポリシーの達成度については、人間性やコミュニケーション能力が比較的高く、地域・国際社会における活動がやや低かった。

学生の修学上の種々のデータは、2018年に学部長の下に設置された「歯学部IR室」に集約している。現時点では、主に学生原簿に関するデータとともに、入試情報、共用試験関連、総合歯科学(6年次開講科目)の成績、歯科医師国家試験の合否等について情報収集を行っており、学部内の各委員会からの要求に応じてデータの提供を行っている。今後、各授業科目やコンピテンシーの達成度に関する情報を集積し、前述のデータと関連付けて分析を行っていく予定としている。これらから得られる結果から6年間の歯学教育を振り返り、改善に努めていく必要がある。

【2-22】検証した結果を教育内容・方法の改善に活用していること。

点検・評価については歯学部教育委員会において、各科目に対する学生アンケート、年に2回行う各学年の代表者数名と担任との面談結果を踏まえて、各科目担当者に授業改善シートを作成してもらい、授業改善に役立てている。また、年度末には各教員に対して授業に対する要望等を聴取し、適宜、歯学部教育委員会で次年度の改善計画を立て検討を行っている。

学生による授業評価の結果は教員にフィードバックされ、授業のどの部分が問題かを具体的に把握することができる。各科目担当者は評価結果を基に授業内容、教材など教育方略の継続的改善を行い、次年度のシラバスに反映し改善を実践している。

また、教育委員会や教授会で取り上げられた教育上の諸課題は、FD委員会がFD研修会・講演会を企画し、教育の質の向上と授業の改善に向けてFD活動を推進している。

具体的な改善事例としては、以下のような取組みが挙げられる。

  • ①全国に先駆けたアウトカム基盤型教育の導入

    2013年度に実施した学部教育に関するアンケート調査結果より、カリキュラム改革の必要性が明らかとなった。そこで歯学部では2015年度にアウトカム基盤型教育のコンセプトを柱とした新たなカリキュラムを導入し、最終到達目標としての学習成果を明確に示し、体系的な教育カリキュラムを構築することにより、社会が求める歯科医療に対応できる人材育成を行っている。

  • ②地域・離島歯科医療実習の充実

    本学の地理的特性を反映した実習(離島歯科医療実習)を全学生に対して実施できていなかったことを踏まえ、2015年度のカリキュラム改革以降、段階的に地域・離島歯科医療実習の充実を図っていった。

  • ③「地域体験実習」における実習内容の変更

    2016年度に開講した本実習は、幼稚園や高齢者施設に出向き実習を行うことが主な目的であったが、初年度は学生たちが実習地において何をすればよいのか理解できず、具体的な目的意識を共有していない状況が散見され、授業評価アンケート結果からも意見が寄せられた。そこで、教育内容を見直し、翌年は各実習地において各自が設定したテーマに沿って実習を行うように改善したところ、学生の本実習に対する評価が向上した。

【大項目2の現状に対する点検・評価】

(1)検討及び改善が必要な点
  • ①学外における種々の見学や実習が本学部の教育の大きな特徴であったが、コロナ禍での移動制限や人との接触自粛により、本来行うべき授業形態を実施することができず、対応に苦慮した。
  • ②歯学部IR室を整備し、活動を開始しているが、現状ではデータ収集と集約したデータの各部署への提供にとどまっており、分析作業にまでは至っていない。
  • ③診療参加型臨床実習を円滑に進める上で必要となる同意を得られた協力患者の確保に努めている。現在、従来の患者に加えて、新患の多くから臨床実習への同意を得ているが、どれくらいの同意患者を確保すれば十分と判断できるのかの検討が必要である。
  • ④本学独自に開発しているe-ポートフォリオ・システムを大幅に改修し、29のコンピテンシーを軸とした能力評価を6年一貫して継続的に行う予定である。部分的に運用は開始しているものの、システム改修が終了していない。
  • ⑤歯学教育の実施に必要な教育施設・設備は1980年の竣工以来ほとんど整備されておらず、老朽化が目立つ。また、柔軟な机・椅子配置を行える部屋がないため、アクティブラーニング(グループ討論等)の実施に差し支えている。さらに、コロナ禍において講義室・実習室の十分な換気が求められる中で、空調設備や換気扇の不調が目立っている。
  • ⑥診療参加型臨床実習において学生専用の技工室は整備されておらず、教員や研修歯科医との共用となっている。また、一部の機器の老朽化、故障等も見られるものの2024年に予定されている新外来棟への移転計画もあり、それまでは十分な整備が困難な状況である。
  • ⑦卒業後における学習成果の活用状況の把握(大学教育で修得した能力をどのように実践に生かしているか)は現状では十分ではない。
  • ⑧卒業者の進路状況等は、個人情報保護の壁に阻まれて現状では十分に把握できていない。
(2)改善のためのプラン
  • ①本来行うべき授業形態を実施できない場合を想定して、歯学部教育委員会、臨床教育部会、及び各分野において遠隔授業に対応可能な体制づくりやコンテンツ作成など、代替可能な教育方法を2020年度から随時整備しており、引き続き作業を継続する。
  • ②歯学部IR室において、2022年度に業務内容の整理を行い、データ分析作業を開始できるよう準備を始める。
  • ③毎月開催される臨床教育部会において、2021―2022年度臨床実習生の実習状況について、2か月ごとに診療参加型臨床実習で設定している必須ケースの達成数・達成率と、必須ケース以外のケースも含めた総ケースの達成数を、自験、介助、見学ごとに報告し、達成の促進を図っている。当該期間の新規同意患者数を照会ことによって、この期の臨床実習が終了する2022年9月を目途に、診療参加型臨床実習を円滑に進める上で必要な同意患者数が明らかになる予定である。
  • ④2020年度の科学研究費補助金の支援を受けて、e-ポートフォリオ・システムのシステム改修作業を進めている。運用可能な部分から利用を開始しており、段階的な能力発達のオンライン評価を行える体制が徐々に整いつつある。2022年度に、評価結果の分析を行える体制を構築していく予定である。
  • ⑤コロナ禍において感染防止対策を徹底した学習環境を整備することは大学全体の課題であり、2021年度の経営戦略経費(学長裁量経費)の配分により整備を開始している。
  • ⑥学生専用の技工室については現状での整備予定はないが、2024年度に移転する新外来棟では、教員、学生共用の技工室を整備する予定としている。また、一部の機器の老朽化、故障等については2021年度の経営戦略経費(学長裁量経費)の配分により整備を進めているが十分ではない。2022年度についても同経費の申請を行っており、配分が期待される。
  • ⑦大学(事務局学生部教務課)が卒後3年目の卒業生に対してアンケートを実施しており、現状では回答率が低いため、多くの卒業生に回答を促すような方法を事務局学生部教務課が中心となり、検討を行う予定としている。
  • ⑧卒業者の進路状況等の把握については、同窓会等と連携をとり地道な情報収集活動を行っていく。2021年度より歯科医師臨床研修マッチング結果を同窓会と共有するとともに、2022年3月に卒後の進路把握を開始した。また、在学中から卒業生の状況把握が大切である旨を説明し、協力を呼び掛ける。

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3 学生の受け入れ

●項目: 学生の受け入れ方針、入学者選抜の実施

評価の視点評価のポイント
3-1 学位授与方針及び教育課程の編成・実施方針を踏まえて学生の受け入れ方針を定め、求める学生像や入学者に求める水準等の判定方法等を明確にしていること。
  • 学生の受け入れ方針の策定
  • 学生の受け入れ方針における求める学生像、入学者に求める水準等の判定方法の明示
3-2 学生の受け入れ方針に基づき、入学者の適性を的確かつ客観的に評価するための選抜方法・手続等を設定していること。
  • 学生募集方法と入学者選抜方法の適切性
  • 多様な人材に修学の機会を与える視点
  • 入学者選抜における入学者の学力の担保
3-3 学生の受け入れ方針や選抜方法・手続等をあらかじめ公表していること。
  • 学生の受け入れ方針及び選抜方法・手続の募集要項やホームページ、説明会等を通じた公表方法
3-4 入学者選抜を責任ある実施体制のもとで、適切かつ公正に実施していること。
  • 入学者選抜の組織体制
  • 入学者選抜の手続の明確化
  • 入学者選抜の公正性を確保するための仕組み
<現状の説明>
【3-1】学位授与方針及び教育課程の編成・実施方針を踏まえて学生の受け入れ方針を定め、求める学生像や入学者に求める水準等の判定方法等を明確にしていること。

歯学部では、鹿児島大学の理念及び教育目標に基づき、歯学部の基本理念及び教育目標を定めている。これらの理念・教育目標に即した学生を受け入れるため、大学のアドミッション・ポリシーに加え、歯学部のアドミッション・ポリシー「求める人材像」4項目を2005年度に制定した。この4項目は現在の「求める人材像」の第1~4項目に当たる。

2016年度には「求める人材像」に第5の項目と学校推薦型選抜Ⅱ(大学入試センター試験を課す;2009年度より募集開始)・総合型選抜(自己推薦型選抜)(自己推薦書の提出と講義型試験を課す;2020年度より募集開始;以下「自己推薦型選抜」)に関する記載を追加した。

鹿児島大学及び歯学部の理念・教育目標、カリキュラム・ポリシーに掲げられている要素は「A:基礎学力」「B:専門知識・技能」「C:豊かな人間性、倫理観」「D:挑戦力、積極性、向上心」「E:柔軟な感性、創造性、探究心、解決力」「F:地域社会・国際貢献、使命感」という6つに大別できる。

大学の理念・教育目標には要素B・C・D・E・F、歯学部の理念・教育目標には要素B・C・E・Fがそれぞれ挙げられている。

一方、大学のアドミッション・ポリシーには要素A・C・D・E・Fが挙げられており、特に大学の理念である「進取の精神」にも表現されている要素Dは4項目の全てに含まれ強調されている。

歯学部のアドミッション・ポリシーにも大学のものと同様に要素A・C・D・E・Fが挙げられている。両アドミッション・ポリシーには、教育目標にある要素B(専門知識・技能)の代わりに、要素A(基礎学力)が含まれている。また、アドミッション・ポリシーの改善に関する議論は歯学部入試諮問委員会で継続的に行われている。本学部は「グローカルに(glocally = globally + locally)活躍する歯科医師の養成」をスローガンとしていることから、現在のアドミッション・ポリシーを、要素F「地域社会・国際貢献」をより強調したものへ改変することを検討している。

入学者に求める水準等の判定方法は、募集区分ごとにアドミッション・ポリシー「入学者選抜の基本方針」に記載している。要素Aについては、幅広い基礎学力が身に付いているかを大学入学共通テスト(5教科7科目)の成績で、歯学部専門科目の学修への適性を個別学力検査学科試験(数学・英語・理科(1科目))の成績でそれぞれ評価し、要素C・D・E・Fを高等学校が作成した調査書、自己推薦書(自己推薦型選抜の場合)、面接検査の結果を基にして要素ごとに評価している。

【3-2】学生の受け入れ方針に基づき、入学者の適性を的確かつ客観的に評価するための選抜方法・手続等を設定していること。

募集区分としては、基礎学力(上記の要素A)を重視して評価する一般選抜(前期日程・後期日程)及び私費外国人学部留学生選抜を長らく実施してきたが、2009年度に高等学校から人格や歯学に対する情熱に優れた学生の推薦を受ける学校推薦型選抜Ⅱを導入した。また、鹿児島大学が2016年度に国際バカロレア選抜、2020年度に自己推薦型選抜を新設したのに合わせて、歯学部でも両選抜を導入した。

大学入学共通テストは5教科7科目(数学・英語・国語・理科(2科目)・地歴公民)、個別学力検査学科試験は3教科(数学・英語(リーディング&ライティング)・理科(1科目))を課している。鹿児島大学の全学的取組として近年、外部英語試験を大学入学共通テスト「外国語(英語)」の得点加算に用いる優遇制度を導入しており、歯学部も利用している。

国際バカロレア選抜及び私費外国人学部留学生選抜では、大学入学共通テスト及び個別学力検査学科試験は課さず、出願時に提出される資料に基づき学力を評価しており、国際バカロレア選抜ではバカロレアプログラムの成績及びIBフルディプロマのスコア、私費外国人学部留学生選抜では日本留学試験の成績及び英語検定(TOEFL又はTOEIC)の成績をそれぞれ用いている。また、学校推薦型選抜Ⅱ及び国際バカロレア選抜については、合格に必要な大学入学共通テスト及びディプロマプログラムの成績をそれぞれ設定し公表している。

自己推薦型選抜は、多面的総合的に受験者の能力を評価することを狙っており、学力の3要素(知識・技能、思考力・判断力・表現力、主体性・多様性・協働性)に関連して受験生が行ってきた活動の根拠資料を付してアピールする自己推薦書の提出と、事前収録された講義の様子をメモを取りながら視聴し終了後に講義内容に関連した問題に答える講義型試験を特徴としている。なお、同選抜には学校推薦型選抜Ⅱと同時に出願することはできない。

上記の学力評価と伴に、全ての募集区分において面接検査を実施し、学ぶ意欲、歯科医療人としての適性等の評価を含めて合否判定を行っている。私費外国人学部留学生選抜では日本語コミュニケーション能力の評価も含めている。

入学者選抜方法の検証と改善の議論は、歯学部入試諮問委員会で継続的に実施しており、選抜方法を変更する際には同委員会での決議内容を歯学部教授会へと上程し審議・承認を経る。2018年度には歯学部長(歯学部入試諮問委員会委員長を兼ねる)直属の部署として歯学部IR室を設置した。同室では、学生の入試成績、在学中の成績、国家試験の合否、留年・休学の状況等について総合的な情報収集を行い、議論の基盤となる資料を提供している。

自己推薦型選抜について、導入後初の2020年度は広報が十分でなかったためか志願者8名と低倍率であったが、翌年の2021年度には志願者21名へと増え、特筆すべき課外活動等の実績を有する学生を集めることができた。しかし直近の2022年度には、大学入学共通テストの著しい難化の影響も考えられるものの、志願者9名となった。

国際バカロレア選抜には、2016年度の導入以来2021年度まで志願者がいなかったが、2022年度に1名が志願し合格した。今後も継続的に受験者・入学者を出せるよう入試広報等の取組が必要である。

2022年度は大学入学共通テストが大幅に難化した。歯学部が課している教科・科目について見れば、2022年度の平均点は、前身の大学入学センター試験を含めた直近8回の試験の平均に比してマイナス43点であった。学校推薦型選抜Ⅱでは「大学入学共通テストの合計得点が配点合計の70%未満の場合、総合得点にかかわらず不合格とする」とし、その旨を募集要項にも記載し公表していたことから、募集人員8に対し合格者を1名しか出すことができなかった。2023年度からは「大学入学共通テストの合計得点が配点合計の70%未満の場合、総合得点にかかわらず不合格とすることがある」と改めることとした。

募集人員が最大である一般選抜前期日程の志願者数・受験者数は、2015年度をピークに減少傾向にある。そこで2023年度からは、従来の大学入学共通テスト重視の配点をパターンA、新設する個別学力検査学科試験重視の配点をパターンBとし、各受験生について総合得点が高くなる配点パターンを自動的に選択し合否判定を行う方法を導入することとなった。これにより、大学入学共通テストに失敗したが個別学力検査学科試験で挽回しようとする受験生や、もとより個別学力検査学科試験を得意とする者をより多く集めることができ、志願倍率の向上につながることを期待している。

上記したもの以外の選抜方法変更には、2008~2009年度に一般選抜前期日程・後期日程における配点見直しと個別学力検査実施科目の追加、2015年度に私費外国人学部留学生選抜における日本留学試験の配点見直し、2017年度に大学入試センター試験の外国語について受験科目を英語に限定(独・仏・中・韓語を除外)したこと等がある。外国語を英語に限定したのは、英語教育を取り入れた学部教育カリキュラムを制定したこと及び過去10年間において英語以外の言語を選択した受験生がいなかったことによる。

【3-3】学生の受け入れ方針や選抜方法・手続等をあらかじめ公表していること。

鹿児島大学及び歯学部の理念・教育目標及びアドミッション・ポリシーは「入学者選抜要項」、「学生募集要項」の冊子体及び大学・歯学部のホームページ(PDFファイルを含む)で公表している。2022年度入試の「入学者選抜要項」は7月下旬、「学生募集要項」は国際バカロレア選抜が8月末、自己推薦型選抜が10月上旬、一般選抜(前期日程・後期日程)・学校推薦型選抜Ⅱ・私費外国人学部留学生選抜が11月下旬にそれぞれ公表された。また、入試に関する情報は「受験生のための大学案内」の冊子、オープンキャンパス及び大学説明会、高等学校への出前授業等でも発信している。

【3-4】入学者選抜を責任ある実施体制のもとで、適切かつ公正に実施していること。

鹿児島大学入学者選抜規則に基づき、大学入学共通テストの実施組織として歯学部では歯学部長が試験場責任者を務め試験場本部の業務を総括する。また、個別学力検査等の実施組織として、歯学部では歯学部長が検査場責任者を務め検査場本部の業務を総括する。

学生受入のあり方について検証する組織としては、鹿児島大学入学者選抜規則に基づいて設置された全学的な入試委員会(委員長:教育担当理事)及び鹿児島大学歯学部入試諮問委員会規則に基づいて設置された歯学部入試諮問委員会(委員長:歯学部長)があり、全学入試委員会の歯学部委員2名が歯学部入試諮問委員会の委員となり、内1名は副委員長となる。

入試委員会では、大学入学共通テスト、個別学力検査等、編入学試験及び大学院入学試験の実施に関する事項並びに入学者選抜方法の改善、中長期的な入学者選抜方法のあり方の策定及び入学者選抜機能の検証等に係る事項を審議している。さらに、学生選抜方法を含む学生受入に関する重要事項に関しては、教育研究評議会(議長:学長)で審議・決定されている。入試委員会会議は例年10回程度開催されている。歯学部入試諮問委員会では、歯学部の入試に関することを中心に検討し、歯学部教授会に委員会案を上程している。歯学部入試諮問委員会会議は例年15回程度開催されている。全学入試委員会及び歯学部入試諮問委員会では、学生選抜に関する議論・決定及び報告を実施しており、学生受入のあり方について恒常的に議論する体制は整っていると言える。

入学者選抜における公平性を確保するために以下のように配慮している。選抜に係る資料の管理は、入試関係事務を担当する大学本部入試課及び学務課歯学教務係が行い、それ以外の歯学部教職員は関与しない。当該年度の大学入学共通テスト又は個別学力検査を鹿児島大学で受験する予定がある近親者がいる教職員は、各試験の関連業務に携わらせない。個別学力検査のうち、学科試験の答案の採点は全学的な答案採点専門委員会によって受験番号及び受験者氏名が秘匿された状態で実施される。大学入学共通テスト及び個別学力検査の成績に基づき、歯学部入試諮問委員会で合格予定者及び追加合格候補予定者(順位付き)の予備選考が行われ、その結果を歯学部教授会で審議し了承する。

●項目: 定員管理

評価の視点評価のポイント
3-5 入学定員(募集人員)に対する入学者数及び収容定員に対する在籍学生数を適正に管理していること。
  • 以下の比率や動向を注視した適正な定員管理
  • 入学定員(募集人員)に対する入学者数比率
  • 収容定員に対する在籍学生数比率
  • 志願倍率と実質競争倍率の乖離
<現状の説明>
【3-5】入学定員(募集人員)に対する入学者数及び収容定員に対する在籍学生数を適正に管理していること。

2007年度から2022年度(2021年度末に実施)までの16箇年度の入試について、募集区分ごと及び全募集区分合計の志願者数・入学者数等の一覧を示す。2010年度までは入学者が定員に対して1名又は2名超過していたが、入学定員を55名から53名へ変更した2011年度以降は過不足無く定員を満たしている。

各学年の在籍学生数は休学・留年・退学のため必ずしも入学定員と一致しないが、2021年度末時点で歯学部全体の収容定員318名に対して在籍者数は316名であり、各学年の平均の在籍比率は99.4%である。

学年別にみると、おおむね毎年1年次の在籍者が多い(入学定員を上回る)傾向にある。修学状況が良好でない学生に対しては、担任・副担任及び各科目担当教員が随時面談を行い、個別指導や保護者との連携等の対策を講じている。

文部科学省医学教育課作成の「各大学歯学部歯学科の入学状況及び国家試験結果等(2012年度~2021年度)」が示すとおり、本学部では休学・留年者が全国的にみて少ない。

【大項目3の現状に対する点検・評価】

(1)検討及び改善が必要な点
  • ①歯科医師国家試験の最低修業年限合格率は、文部科学省が発表を始めた第103回試験から2021年実施の第114回試験までの平均で全国歯学部中4位(73.7%)と上位にあり、第114回では初めて1位を達成した。しかし、各年度の既卒を含めた受験者全体の単純合格率は改善が必要であり、学部での教育内容等の見直しと合わせ、少しでも多くの志願者を集め、優れた資質とモチベーションを持つ受験生を正しく見極め選抜しなければならない。大学入試に係る制度の変更(大学入学共通テストの開始、新科目の導入等)、少子化に伴う受験生世代の人口減少、歯科医師国家試験の選抜試験化等、歯学部を受験する学生のリクルート及び選抜をめぐる環境は依然として厳しい中、可及的早急な対策が求められている。
  • ②一般選抜後期日程及び学校推薦型選抜Ⅱの合否判定では大学入学共通テストと面接検査のみを利用し面接以外の個別学力検査を課していないこと等について、妥当性の検証が必要である。
  • ③的確かつ客観的に学生を評価できる面接検査の方法を模索しているが、その成否について現時点で十分に検証できておらず判断が難しい。面接方法や評価の見直し等、改善に向けた取組をより一層強力に推進する必要がある。
(2)改善のためのプラン
  • ①引き続き歯学部IR室で収集したデータを多面的に解析し、歯学部入試諮問委員会において選抜方法の改善について積極的に議論を進める。それと同時に、歯学部ホームページの充実、高等学校への出前授業、市民講座、他学部・他大学との合同進学説明会等での積極的な広報活動を推進する。
  • ②学校推薦型選抜Ⅱの入学生は現時点で他の募集区分に比べ国家試験合格率等で有意に優れており、現時点で選抜方法の変更は想定していないが、募集人員の更なる拡大については志願者数の推移とIR分析の結果を考慮しつつ入試諮問委員会で継続的に議論する予定である。一般選抜後期日程の入学者は休学・留年・退学率が高いことから、歯科医学・歯科医療に対する熱意を持った学生をより適切に選抜できる方法を採用する必要があることについて入試諮問委員会内で意見が一致しており、その具体策について議論中である。
  • ③より優れた資質を備えた入学者を選抜する面接評価のあり方について入試諮問委員会で継続的に議論している。

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4 教員・教員組織

●項目: 教員組織の編制

評価の視点評価のポイント
4-1 教員組織の編制方針を策定していること。
  • 教員組織の編制方針の策定
  • 教員に求める能力・資質の設定(選考基準)
  • 教育研究活動を推進するうえで必要となる教員組織の全体的な設計(デザイン)
4-2 教員組織の編制方針に基づき、教育研究活動の実施に必要な教員を配置していること。
  • 教員組織の編制方針に沿った教員組織の編制
  • 教授、准教授、講師、助教の比率と適切な配置
  • 診療参加型臨床実習に必要な資質・要件を持つ教員の配置
4-3 学生数に対する専任教員の比率が適切であること。
  • 学生数に対する専任教員の比率を踏まえた教育環境の適切性
4-4 持続可能性や多様性(性別、国籍等)に配慮して教員が適切に構成されていること。
  • 女性教員、外国人教員の比率に配慮した教員組織の編制
4-5 歯学研究を遂行し、将来の歯学研究を担う人材育成のため高い研究力を有していること。
  • 研究に対する歯科大学・歯学部の考え方(方針)
  • 組織としての競争的研究資金の獲得状況(科学研究費補助金を含む)
  • 組織としての研究に対する第三者からの評価
4-6 教員の募集・採用・昇任を適切に行っていること。
  • 教員の任用に関する規程の整備
  • 教員人事の手続における透明性と適切性の担保
  • 公募制、任期制等の教員組織を活性化させる仕組みの導入
<現状の説明>
【4-1】教員組織の編制方針を策定していること。

大学設置基準第7条では教員組織について次のように規定している。

第七条 大学は、その教育研究上の目的を達成するため、教育研究組織の規模並びに授与する学位の種類及び分野に応じ、必要な教員を置くものとする。

 大学は、教育研究の実施に当たり、教員の適切な役割分担の下で、組織的な連携体制を確保し、教育研究に係る責任の所在が明確になるように教員組織を編制するものとする。

 大学は、教育研究水準の維持向上及び教育研究の活性化を図るため、教員の構成が特定の範囲の年齢に著しく偏ることのないよう配慮するものとする。

まず、本学の教育研究活動を推進する上で必要となる教員組織の全体的な設計について説明すると、教育研究を担う教員組織は、2015年4月に学術研究院制度に移行した。これは、学長のリーダーシップの下、社会の変化に対応した教育研究組織をつくり、教育課程の編制及び学内資源の再配分を全学的な視点で柔軟かつ迅速に進めることを目的に、従前の教育研究組織を教員組織と教育研究組織に分離し、新たに教員組織として学術研究院を設置したものである。学術研究院は、5つの「学域」と14の「学系」からなる。学域は、現在の学部・研究科等の教育研究分野に対応した一定規模の組織を形成し、学系は、学域の下に教員の専攻分野に応じた組織となっている。歯学部の教員組織は、「医歯学域歯学系」に所属し、主として学部の教育等に係る業務を担当する教員(以下、「歯学系教員」)及び「医歯学域鹿児島大学病院」に所属し、主として附属病院の歯科診療等の業務等を担当する教員(以下、「病院歯系教員」)により組織されている。

歯学部の専門教育は、主として歯学系教員が担当している。また、共通教育は、学術研究院制度を活用した全学支援体制に基づき、「総合科学域総合教育学系」の総合教育機構共通教育センター担当教員と全学の教員によって行われている。歯学部の教育を担当する大学院医歯学総合研究科の歯系研究分野は、基礎系9分野及び臨床系12分野の合計21分野である。一部の例外を除き、基礎系分野には各3名、臨床系分野には各6名の歯学系教員が配置されている。これらの分野は、「歯学教育モデル・コア・カリキュラム」に基づいた教育を十分に実施できるように設置されている。必要な分野や教員の配置は、時代の要請に応じて随時見直されてきた。最近では、2010年に歯科医学教育実践学分野、2020年に国際歯科・人間科学分野が設置され、それぞれ2名の歯学系教員が配置されている。

 歯学部の責任体制としては、学部長を置き、さらに学部長を補佐する副学部長3名(社会連携担当、財務・研究担当、教育・評価・学生支援・男女共同参画担当)を置くことにより、教育研究に係る責任の所在を明確にし、学部運営に関する事項を総括している。

本学の教員に求める能力・資質(選考基準)については、大学設置基準に規定する教員の資格及び本学の教員の選考に関する規則に基づき教員の選考が行われている。

【4-2】教員組織の編制方針に基づき、教育研究活動の実施に必要な教員を配置していること。

上記【4-1】の教員の編制方針に基づき、歯学部の教育研究活動の実施に必要な教員を配置している。具体的には、学士課程収容定員である歯学科318名(2021年度の在籍者数316名)に対し、2021年5月1日現在、歯学系教員84名(教授19名、准教授12名、講師5名、助教48名)を配置しており、学校教育法に基づく大学設置基準上の専任教員数(収容定員360名までの場合の専任教員数:75名以上、教授、准教授または講師の合計数は36名以上とし、そのうち18名以上は教授とする。附属病院における教育、研究及び診療に主として従事する相当数の専任教員を別に置くものとする)を満たす教員数を確保している。また、病院歯系教員46名(講師13名、助教33名)を配置している。

歯学系教員及び病院歯系教員を合わせた職階別の人数の比率は、教授が15%、准教授と講師がそれぞれ9%と14%(計23%)、助教が62%であり、裾野の広い分布となっている。本学部において開講している主要授業科目は、主として専任の教授、准教授が担当している。高度な専門性を目指す教育的観点から、専任の教授や准教授の下に53名の非常勤講師を配置している。

また、臨床教育の充実と附属病院における診療体制の強化を目的とした教員職位特別呼称として、臨床教授7名、臨床准教授3名、臨床講師20名を任命し、指導体制の充実を図っている。さらに、臨床参加型臨床実習指導に必要な資質・要件を持つ教員として、指導歯科医の資格を有する教員を98名配置している。

【4-3】学生数に対する専任教員の比率が適切であること。

歯学系教員は、2021年5月1日時点で基礎系分野が27名、臨床系分野が57名の合計84名が在籍しており、2021年度における専任教員1名当たりの学生数は、歯学部全体で3.8名(在籍学生数316名/歯学系教員84名)である。臨床系分野では、病院歯系教員46名も学部教育の一部を担っていることから、それも加味すると、実質的な比率は3.8より小さくなると考えられる。

学生の能動的な学習を促進し、よりきめ細やかな教育を実施するためには、専任教員数を増やすことが望まれるが、現実的には困難である。そこで、前述のとおり、歯学系教員及び病院歯系教員に加えて非常勤講師53名、臨床教授7名、臨床准教授3名、臨床講師20名の合計83名を確保することで教育の充実を図っている。具体例として、歯学部の卒業時到達目標(コンピテンス)の一つである「地域医療とヘルスプロモーション」に関わる科目群に含まれる「地域医療学実習」では、臨床教授、臨床准教授、臨床講師の合計30名が指導にあたっており、地域医療の最前線に間近に関わる機会を提供している。

【4-4】持続可能性や多様性(性別、国籍等)に配慮して教員が適切に構成されていること。

歯学系教員の職階別の年齢構成は、教授が40代から60代、准教授・講師が30代から60代、助教が20代から60代と職階に応じた年齢構成となっており、持続可能性の点で適切に構成されていると考えられる。また、女性教員の割合は、教授が0%、准教授が2.4%、講師が1.2%、助教が20.2%であり、全体では23.8%(84名中20名)である。歯学系教員の採用者に対する女性教員の割合について、2021年度は0%であるが、2017年度から2021年度までの5年間では28.6%(21名中6名)である。病院歯系教員の採用者も含めると、2021年度は女性教員の割合が70.0%となり、女性活躍推進法の行動計画(2021~2025年度)の求めている「教育職(研究職を含む)採用者に占める女性割合を30%以上とする」を達成している。

国籍の多様性については、病院歯系教員の助教として外国人教員が1名採用されているのみであり、改善の余地がある。

【4-5】歯学研究を遂行し、将来の歯学研究を担う人材育成のため高い研究力を有していること。

歯学部は、沖縄を含む南九州地域における唯一の歯科医学教育・研究施設として、それぞれの分野で、活発な研究活動と学生への研究指導を行っている。その研究対象は、生命の神秘の解明につながる基礎医学研究や、最新の生物学的技法を駆使した歯科領域疾患の診断・治療法の開発など、歯科医学を中心にしたライフサイエンス全般にわたっている。

歯学部は、大学院医歯学総合研究科と連携し、口腔先端科学教育研究センターを通して研究の活性化・推進を図っている。同センターでは、毎年研究発表会を主催し、大学院生・教員に加えて学部学生のセッションも設け、優秀な研究発表を表彰している。また、大学院医歯学総合研究科では、研究科で行われている様々な研究の中から中核となるものを選定し、コア研究としている。歯学系教授が担当教授となっているコア研究として「再生医療の独創的基盤研究の構築」、「口腔微生物が全身に与える影響についての基礎的研究」、「エアロゾル対策デバイスの開発とその臨床的価値の検討」の3件が、また、歯学系教員が関わっているコア研究として「神経―免疫クロストークによる疾患制御機構の解明」、「記憶にもとづく行動柔軟性の分子・神経基盤の解明」、「カロリンスカ研究所との神経科学分野における国際共同研究教育基盤形成」、「基礎・臨床ならびに医歯工連携によるライフステージメディシンの横断的研究」の4件が2020年度から推進されている。

科学研究費補助金の採択状況について、最近の5年間は、30%以上の新規採択率であり、全国の機関等における採択率を大きく上回っている。しかし、他の国立大学歯学部と比較した採択件数や採択金額は、決して多くはない。なお、共同研究や受託研究は、毎年数件を獲得している。

組織としての研究に対する第三者評価については、第3期(2016~2021年度)の国立大学法人評価の研究に関する現況分析があり、「研究活動の状況」と「研究成果の状況」について「相応の質にある」という評価を得ている。

【4-6】教員の募集・採用・昇任を適切に行っていること。

歯学系教員及び病院歯系教員は、職階ごとに資格基準や選考基準等を定めている。教員候補者は、原則として公募とし、厳格な審査による選考を行っている。なお、准教授、講師及び助教の選考の場合で一定の条件を満たす場合は、公募を省略できるとしている。

歯学系教員の選考に際しては、最初に歯学系長(歯学部長)から個別人事案件を学長に提出する。学長により承認された個別人事案件について、教員選考委員会を設置のうえ候補者を選考し、歯学系会議、医歯学域会議の議を経て、学長に推薦する。学長は、推薦された候補者について適否を決定する。病院歯系教員については、鹿児島大学病院教員の選考に際しては、最初に当該部門科長からの要望を受け、病院長から個別人事案件を学長に提出する。学長により承認された個別人事案件について、教員選考委員会を設置のうえ候補者を選考し、鹿児島大学病院学系会議の議を経て、学長に推薦する。学長は、推薦された候補者について適否を決定する。

教授を選考する場合は、最初に医歯学総合研究科企画委員会及び医歯学総合研究科教授会で当該分野の将来構想と教授選考の必要性を審議し、選考開始の是非を判断している。選考では、歯学部のみならず大学院医歯学総合研究科も担当することを前提とし、教育研究に係る実績、資格及び教育・研究・臨床への抱負等の書類審査はもとより、セミナーや面接等による総合的な評価を行っている。研究業績は、論文数やインパクトファクター、科学研究費補助金等の取得状況等も評価している。また、臨床教育は、手術実績、診療担当科の専門的臨床能力及び先進医療の開発と実施の状況等も評価している。

任期制について、大学院医歯学総合研究科設置(2003年4月)以降及び医学部・歯学部附属病院設置(2003年10月)以降の採用者は、任期付き職員とし、それ以前の任期付職員は、任期の定めのない職員に移行した。その後、教授は、2007年4月以降任期の定めのない職階となったが、2003年4月1日以後に採用された教授以外の教員は、任期制が引き続き適用されており、再任に当たっては、規則・基準に基づき審査を受ける必要がある。

5年の任期中の業績が特に優秀と認められる場合、任期に関する細則第5条の規定により任期の定めのない教員へ移行させることができる(資料4-6-5)。なお、過去3年間で任期満了により退職した教員の数は、2名である。

教員の出身大学に関して、教授については、2021年5月現在、自校率(自校出身者の割合)が15.8%(3名/19名)、学内昇任の割合が21.1%(4名/19名)となっており、内部昇格に偏らない適切な人事選考が行われている。

●項目: 教員の資質向上等

評価の視点評価のポイント
4-7 教員の資質向上を図るための体制を整備していること。
  • 教育内容・方法等の改善を目的とした教員の研修及び研究(FD)を組織的に行う体制 ※大学運営に係る教職員に対する研修(SD)などの仕組みを含む
4-8 教員の資質向上を図るために、組織的な研修及び研究を定期的に実施していること。
  • 上記FD(SDを含む)に関する活動の実績
4-9 専任教員の教育活動、研究活動、組織運営、社会との関係の形成・社会貢献等について、適切に評価していること。
  • 教員個人による教育研究活動等に対する自己点検・評価の実施
  • 教員個人による教育研究活動等の自己点検・評価結果の公表
  • 教員の教育研究活動評価システムの構築・実施
<現状の説明>
【4-7】教員の資質向上を図るための体制を整備していること。

教員の教育能力の向上を図るための組織・体制として中心的な役割を担うのは、歯学部FD委員会である。歯学部FD委員会は、歯学部の組織であるとともに、全学のFD委員会の下部組織でもある。部局(歯学部)のFDに関する指針は、全学の「鹿児島大学ファカルティ・ディベロップメントに関する指針」に示されており、部局の責務も併せて規定されている。歯学部のFD活動は、この全学の指針に則りつつ、歯学部独自の課題について各委員会からの要望も考慮して、歯学部FD委員会が主体となって行っている。

【4-8】教員の資質向上を図るために、組織的な研修及び研究を定期的に実施していること。

歯学部FD委員会は、「鹿児島大学ファカルティ・ディベロップメントに関する指針」に基づき、歯学部の各種委員会からの要望を考慮して年間3~6回ほどのFD講演会等を企画・実施している。

歯学部のFD活動の特徴としては、純粋な教育技法に関するFD活動のみならず、2016年4月に発生した熊本地震における歯科救援活動や科学研究費獲得向上のポイント、共用試験歯学系CBT作問など、教育に関わる広範かつ間接的な重要事項に関しても、他の委員会と連携協力しながら講演会等を実施している。

本学では、各部局のFD活動を年度ごとにまとめて報告することが義務付けられており、全部局の報告書を「鹿児島大学FD報告書」としてまとめたものが本学のホームページで公開されている。

また、本学では、年間の合計参加率(1回でもFD活動に参加した教員数で計算)が75%以上となることを部局に求めている。歯学部は、2016年度から2021年度にわたって80%を超えており、2020年度は98%を超えていた、歯学部教員のFD活動に対する意識の高さを示す結果となっている。また、歯学部FD委員会では、講演会等の企画終了後に参加者に対して企画に関する感想と今後希望する企画について自由記述のアンケートを実施し、次回以降の企画の参考としている。

歯学部で行われている授業について、2021年度後期に授業公開と教員による授業参観を実施し、参観者が記入したアンケート結果を授業担当教員にフィードバックしている。

【4-9】専任教員の教育活動、研究活動、組織運営、社会との関係の形成・社会貢献等について、適切に評価していること。

専任教員の基本情報、教育活動、研究活動、組織運営、社会貢献等については、「研究者総覧」として本学のホームページで公開されている。専任教員の諸活動に関する評価については、「鹿児島大学評価実施規則」において規定されている。この規則に基づき「鹿児島大学における構成員の活動状況等の点検・評価実施要項」が定められている。

教員は、教育、研究、社会貢献、国際交流、診療、管理運営の6つの基本項目について毎年自己点検を行い、その自己点検に基づき部局長が3年ごとに構成員評価を行うものと定められている。具体的には、歯学系教員は、「構成員の活動状況等の自己点検・評価シート」及び「昇給評価事項記入シート」に自己の業務比率に応じ応じた自己評価を記載し、歯学系教員については部局長である医歯学総合研究科長、病院歯系教員については病院長に提出して評価を受ける。

2021年度には、直近3カ年(2018~2020年度)の構成員評価が実施された。その結果は、報告書として取りまとめられて学長に報告され、「構成員評価報告書」として本学のホームページ上で公開されている。上記研究者総覧及び研究活動等の業績評価に関連し、教員は、自己の業績について、適宜、研究者情報管理システムDB-Spiralに入力し、内容の更新作業を行うように「研究者情報管理システムの管理・運用に関する要項」で定められている。なお、同システムは、2021年度から外部データーベースresearchmapとの連携が図られている。入力されたデータは、歯学部IR室で集計を行っている。

歯学部独自の教員評価に関連した取組として、歯学部ベストティーチャー賞やベストライター賞、ベストリサーチャー賞を選考し、教員の意欲向上と教育研究活動の活性化を図っている。

歯学部ベストティーチャー賞は、「鹿児島大学ベストティーチャー賞実施要綱」及び「歯学部ベストティーチャー賞選定のための教員授業評価実施要綱」に基づき歯学部FD委員会が歯学部の2年次生から4年次生を対象にアンケートを実施し、各学年の最多得票者を歯学部ベストティーチャーとしている。さらに、歯学部ベストティーチャーの中から1名を選考して歯学部からの推薦者とし、医歯学総合研究科FD委員会と協議の上、「鹿児島大学ベストティーチャー賞」の「歯学部・医歯学総合研究科(歯学系)」カテゴリーの候補者を決定して学長へ推薦する。鹿児島大学ベストティーチャー最優秀賞及びベストティーチャー賞の受賞者には、表彰状のほか、次年度の教育研究費が授与される。

歯学部ベストライター賞は、「鹿児島大学歯学部ベストライター選定に関する申合せ」に基づき歯学部教育委員会の下部組織である臨床教育部会が歯学部の6年次生を対象として臨床実習終了直後にアンケートを実施し、ライター(臨床実習担当教員)の中から選考基準に該当すると考えられる3名(成人系、発達系、外科系各診療科より1名ずつ)を選考する。その3名を受賞候補者として上申し、歯学部長が決定の上、「ベストライター賞」の表彰状が授与される。

歯学部ベストリサーチャー賞は、歯学部研究体制委員会が教授を除く歯学系教員や病院歯系教員などを対象として公募し、調査年にIFが付与された学術誌に掲載された原著論文、総説、症例報告について、著者の順番やIF値を基に点数化して、基準以上のものを表彰するものである。なお、受賞者には表彰状が授与されるほか、受賞者の期末・勤勉手当査定時の参考にされる。

【大項目4の現状に対する点検・評価】

(1)検討及び改善が必要な点
  • ①大学設置基準を満たしており、教員の年齢構成、男女比、自校率などのバランスはとれているが、外国人教員数が十分とはいえない。
  • ②国立大学歯学部の中での科研費科学研究費補助金の獲得件数は決して多くなく、大型予算の獲得数も少ない。その他の外部資金の獲得金額も多くはない。
  • ③教員評価は、自己点検・評価シート及び昇給評価事項記入シートで評価されるが、これは自己申告によるものであり、教員間評価などの客観的実質的な評価と教員へのフィードバックについて検討が必要である。
  • ④毎年、教員の教育能力の向上を目的として、FD活動計画書に基づく組織的な取組みを行っており、その参加率も高い。しかし、不参加が特定の教員に偏っているなど、教育現場への実質的なフィードバックを必ずしも担保できていない。
(2)改善のためのプラン
  • ①外国人教員数については、歯学部人事委員会及び歯学系会議等で継続的に検討する。
  • ②科学研究費補助金を始めとする外部資金の獲得件数や獲得金額の向上については、構成員に対して本学URA(University Research Administration)センターが実施する「科研費申請アドバイザー制度」の積極的活用や本学研究推進部研究協力課が開催する「科学研究費対策学内講演会」への参加などを促す。さらに、歯学部独自の取組みとして、歯学部FD委員会で外部資金獲得のためのFD講演会等の2022年度中の開催を検討する。
  • ③現状の「自己点検・評価シート」及び「昇給評価事項記入シート」を用いた教員評価及び教員へのフィードバック法の問題点を抽出し、より客観性が高く、かつ、構成員の納得が得られるような具体的な評価基準の策定について、2022年度より歯学部企画委員会及び歯学部FD委員会において検討を開始し、2023年度を目途に具体化を目指す。
  • ④FD活動への教員の参加を促す取組みとして、FD講演会を後日オンデマンド視聴できるような取組みを2021年度より開始した。2022年度以降、本方式を定着させていく予定である。一方で、FD活動は、組織の方向性を決めるものであり、その活動の評価は、構成員の参加率だけでなく、組織運営や組織改革への波及効果など、何らかの目標を定めて行う必要がある。2022年度より、歯学部FD委員会及び歯学部企画委員会等において検討を開始する。

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5 自己点検・評価

●項目: 自己点検・評価

評価の視点評価のポイント
5-1 組織的な自己点検・評価に関する体制を整備していること。
  • 組織レベル・個人レベルでの自己点検・評価のための体制構築
  • 歯学教育(学士課程)の質保証の仕組みと全学的な質保証の仕組みの有機的な連関
5-2 教育研究活動について組織的・継続的な自己点検・評価を行っていること。
  • 教員の教育研究活動評価を踏まえた組織的な自己点検・評価の実施
  • 定期的な自己点検・評価の実施
5-3 学外の有識者による第三者評価を受けていること。
  • 機関別認証評価や法人評価等の第三者評価の申請と評価結果の受領
5-4 自己点検・評価及び第三者評価の結果を公表し、社会に対する説明責任を果たしていること。
  • 組織的な自己点検・評価結果の公表
  • 説明責任を果たすための情報公開における工夫
<現状の説明>

本学では、2020年に「鹿児島大学における内部質保証に関する規則」が制定され、内部質保証に係る実施・責任体制が実質的に整えられた。この中で、本学における内部質保証は、全学レベル、部局レベル及び教職員レベルの各レベルでのPDCAサイクルの実施並びに各レベル間での連携・協力・補完関係により継続的に行うものとされている。

毎事業年度及び中期目標期間終了後に受ける国立大学法人評価委員会による業務実績に関する評価や機関別認証評価において指摘された改善事項等について、各役員(理事)の下に置かれ、企画立案を担当する各「室」及び全学の企画・評価委員会が課題等を整理した上で検討を加え、全学の関係委員会、部局等にフィードバックし、調整を経て改善策を策定している。歯学部においては計画の立案・改善策の検討は教授会が担っている。質保証の責任者として歯学部長が指定されている。

【5-1】組織的な自己点検・評価に関する体制を整備していること。

教育研究活動に係る自己評価について学則に規定し、全学及び部局における自己評価の実施方法・体制等については規則・要項を定め、定期的・組織的に自己評価を行っている。

全学としては、大学運営評価の効率化と実質化を図るため、2017年度に自己評価制度の見直しを行うとともに、ITを活用し、教育研究活動等の状況を効率的・効果的に把握・集積する仕組みを整備し、評価結果に応じたフォローアップに継続的に取り組むこととなった。

一方部局として行う自己評価では、歯学部は教育研究水準の向上及び活性化を図るため、教育研究活動等に関する自己点検・評価を行うことを目的として、歯学部企画委員会の下に評価部会を置き、評価作業に関する業務を行ってきたが、法人評価、認証評価、分野別教育評価等の昨今の評価業務量の増大及びその重要性に鑑み2018年に評価部会を廃止し、新たに歯学部自己評価委員会として独立した委員会を設置し、評価体制の整備強化を行った。

さらに本委員会には外部有識者も構成員として参画しており、外部評価の要素も一部取り入れるなど実質的な機能強化が図られている。

また、本自己評価委員会を中心に歯学部教育委員会、歯学部学生委員会、歯学部研究体制委員会をはじめとする他の委員会と連携し、教育研究活動のPDCAサイクルも機能するようになっている。

各委員会の評価と改善結果は歯学部自己評価委員会に報告され、PDCAサイクルの実施状況について評価を受ける。歯学部自己評価委員会は毎年点検報告書をまとめ、各委員会及び全教員に対し公開され、パブリックコメントを受け、修正された後に、WEB上で一般公開される体制となっている。

まず、教育の質保証の重要な項目である教員の評価については、「鹿児島大学における構成員の活動状況等の点検・評価実施要項」が定められ、助教以上の全教員を対象としている。各教員は、定められた点検項目について毎年自己点検を行い、その自己点検結果に基づき部局長は毎年評価を行い、昇給結果に反映している。

教育研究評議会は、歯学部の教育の質評価指標の一つとして、歯科医師国家試験合格率を挙げており、評価を受けている。

【5-2】教育研究活動について組織的・継続的な自己点検・評価を行っていること。

大学の教育研究活動は、文部科学大臣が定める国立大学法人の中期目標・中期計画及び年度計画に沿って実施し、毎事業年度ごとに年度計画の進捗状況について点検評価を行い、業務の実績報告書を作成している。一方、歯学部では、歯学部教授会において全学の年度計画に則った年度計画を立案・実施し、進捗状況に係る中間評価と年度末評価を行っている。

さらに、歯学部では今後の歯学の分野別評価受審に向けた準備と課題の洗い出しを目的に、歯学部自己評価委員会を設置し、2018年度より毎年自己点検・評価を実施している。評価基準として2012~2016年度大学改革推進等補助金「医学・歯学教育認証制度などの実施」事業の下に実施された「歯学教育認証制度等の実施に関する調査研究」で策定された歯学教育認証評価基準最終版を用いた。また、本学では、鹿児島大学監事監査規則に基づき、業務の適正並びに効率的及び効果的な運営を期するとともに、会計経理の適正を確保することを目的とした監事監査も行われており、これに基づく自己点検も実施される。

加えて歯学部では、教育活動の点検・評価の一環として、歯学部教育委員会が学生を対象に教育目標、教育プログラム、学習成果、講義及び実習の満足度、達成度並びに指導方法等について授業科目ごとに授業評価アンケートを実施し、調査結果は歯学部ホームページ上に公表している。授業評価アンケートの集計結果は各分野にフィードバックされ、次年度へ向けた改善について授業改善シートを用いて授業改善が行われている。

 組織評価と並び重要な評価の一つである教員の評価については、「鹿児島大学における構成員の活動状況等の点検・評価実施要項」が定められ、助教以上の全教員を対象としている。各教員は、定められた点検項目について毎年自己点検を行い、その自己点検結果に基づき部局長が3年ごとに評価を行うこととしている。

【5-3】学外の有識者による第三者評価を受けていること。

本学は、学則第3条第2項で「前項の点検及び評価に加え、第三者評価等の多様な評価の結果を、教育研究等の不断の改善・改革に反映させるものとする。」と規定している。

本学の教育研究の活動状況に対する第三者評価としては、毎年本学が提出する中期目標・中期計画に係る年度計画に対する事業年度の業務実績報告書をもとに、国立大学法人評価委員会が中期計画の達成という視点から行う評価と中期目標期間終了後の総合的な評価が挙げられる。その評価結果は文部科学省及び本学のホームページ上で公表されている。

また、学校教育法では、「大学は、前項の措置に加え、当該大学の教育研究等の総合的な状況について、政令で定める期間ごとに、文部科学大臣の認証を受けた者(以下、認証評価機関)による評価(以下、認証評価)を受けるものとする。」と規定しており、本学では、認証評価機関である独立行政法人大学改革支援・学位授与機構による機関別認証評価を2007年度、2014年度及び2021年度に受審し、その評価結果は当該機構及び本学のホームページ上で公表されている。

今後、歯学部が受審する予定の公益財団法人大学基準協会による分野別評価についても、評価結果は同基準協会及び歯学部のホームページ上で公表される予定となっている。

【5-4】自己点検・評価及び第三者評価の結果を公表し、社会に対する説明責任を果たしていること。

歯学部の自己評価書は本学歯学部ホームページ上で公開されている。

また、上記【5-2】及び【5-3】で記述したとおり、教育研究活動に係る自己点検評価及び第三者評価受審に係る評価結果は全て本学及び評価機関のホームページ上で公表されており、社会に対する説明責任は果たされている。

また、学校教育法施行規則に定める教育研究活動等の状況についても、事項ごとに教育情報として本学ホームページ上で公表している。

さらに、鹿児島大学のInstitutional Research(IR)活動の一環として、過去数年にわたる既存の公開されている情報を活用し、その推移・割合をグラフで可視化したデータ集を「Fact Book」としてホームページ上で公表している。

●項目: 結果に基づく教育研究活動の改善・向上

評価の視点評価のポイント
5-5 自己点検・評価及び第三者評価の結果を教育研究活動の改善・向上に結びつけていること。
  • 自己点検・評価及び第三者評価の結果に基づく改善・向上を図るための計画の策定
  • 改善・向上を図るための計画の実行及び具体的な改善事例
<現状の説明>
【5-5】自己点検・評価及び第三者評価の結果を教育研究活動の改善・向上に結びつけていること。

本学は、学則第3条第2項で「前項の点検及び評価に加え、第三者評価等の多様な評価の結果を、教育研究等の不断の改善・改革に反映させるものとする。」と規定している。

本学では、毎事業年度及び中期目標期間終了後に受ける国立大学法人評価委員会による業務実績に関する評価や機関別認証評価において指摘された改善事項等について、各役員(理事)の下に置かれ、企画立案を担当する各「室」及び全学の企画・評価委員会が課題等を整理した上で検討を加え、学部長にフィードバックされる。学部長は副学部長及び関係委員会に指示し、調整を経て改善策を策定している。

改善策は、次年度の全学の年度計画や教育研究活動に反映する仕組みとなっている。策定された全学の年度計画に基づき各部局の年度計画が立案され、全学一体となった計画の策定と実施が担保されるとともに、PDCAサイクルが機能するようなシステムとなっている。例えば、教育委員会は授業科目の評価、学生委員会は学生による教員評価とその結果に基づく改善を実施し、その結果を自己評価委員会に報告する。研究体制委員会は研究活動に対する評価と改善状況を自己評価委員会に報告する。自己評価委員会はこれらの委員会の評価改善が実施されているかを評価し、フィードバックする仕組みとなっている。

歯学部における改善の具体的な事例として、

  • ①全国に先駆けたアウトカム基盤型教育の導入

    2013年度に実施した学部教育に関するアンケート調査結果より、カリキュラム改革の必要性が明らかとなった。そこで歯学部では2015年度にアウトカム基盤型教育のコンセプトを柱とした新たなカリキュラムを導入し、最終到達目標としての学習成果を明確に示し、体系的な教育カリキュラムを構築することにより、社会が求める歯科医療に対応できる人材育成を行っている。

  • ②地域・離島歯科医療実習の充実

    本学の地理的特性を反映した実習(離島歯科医療実習)を全学生に対して実施できていなかったことを踏まえ、2015年度のカリキュラム改革以降、段階的に地域・離島歯科医療実習の充実を図っていった。

  • ③研究活動の活性化

    研究体制委員会における構成員の研究活動調査の結果、学内における研究成果発表の場の不足や、地元歯科医師との学術を通じた交流の場の未整備などが明らかとなったため、2019年に南九州歯学会を設立し、研究活動の活性化を図るとともに、これまで学術大会の開催(3回)及び学会誌(2巻)を発行した。

  • ④社会貢献活動の拡充(市民公開講座、離島巡回診療等の充実と改善)
  • ⑤学内共同研究体制の整備と外部資金獲得支援
  • ⑥国際化の為の大学間連携の推進及び学生交流の実施
  • ⑦学生の学習支援体制の強化

等が挙げられる。

【大項目5の現状に対する点検・評価】

(1)検討及び改善が必要な点
  • ①教育評価結果はフィードバックされ、教育に関するFD活動と併せて、教員個々の教育の質改善に取り組んでいる一方で、2015年度に導入したアウトカム基盤型教育のコンセプトに基づくカリキュラムに対する評価とさらなる改善に向けた作業が必要である。
  • ②研究の個別業績評価は構成員評価として実施し、賞与等を通じて間接的なフォードバックは行っているが、教員個人及び分野への直接的なフィードバックは行われていない。
  • ③全学における教育研究評議会での歯学教育に関する客観的評価指標は現在のところ歯科医師国家試験の合格率のみである。客観的評価指標として質的指標(quality indicator:QI)の策定が必要であるとの議論がなされているが、他大学においてもこのようなQIの導入事例がなく策定に至っていない。
(2)改善のためのプラン
  • ①歯学部教育委員会において、あらかじめ設定しているコンピテンシーに対して各授業科目が適切に対応しているかを年度開始前に確認する。また、学生による卒業時アンケートとともに歯科医師国家試験結果をはじめとした各種情報に基づき、2015年度に導入したアウトカム基盤型教育のコンセプトに基づくカリキュラムに対する評価を行うとともに、改善事項について2022年度以降のカリキュラムに反映させていく。
  • ②研究の個別業績評価の構成員に対するフィードバック方法についてはデリケートな問題も含んでおり、明確な打開策を立案するのは困難である。2022年度に自己評価委員会及び企画委員会により検討を開始し、継続的に方針策定を行っていく。
  • ③評価のための質的指標(quality indicator)を策定する必要がある。この度の歯学教育評価の結果を含め、自己評価委員会においてできるだけ早期に検討を行うとともに段階的導入を進めたい。

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