近年、お口のヒリヒリを訴えて受診する患者さんが増えています。焼けるような痛み(灼熱感)と表現されることもあります。
これには2種類有り、1つはお口の粘膜の原因不明(何の異常や変化も認めない)で生じる痛みで一次性の舌痛、欧米では「口腔灼熱症候群」と言われています。2つめは、何らかの病気により、痛みが生じるもので二次性の舌痛です。

二次性の舌痛をおこす可能性のある病気を示します。

1. 全身的問題

  • 糖尿病
  • 口腔乾燥(シェーグレン症候群などによる唾液分泌の減少、鼻閉による口呼吸)
  • 貧血(鉄欠乏性貧血やビタミンB12、葉酸欠乏による悪性貧血による粘膜障害)
  • 亜鉛欠乏症
  • 脳血管障害
  • 中枢神経障害
  • 薬剤によるもの

2.局所的問題

  • 口腔清掃不良(細菌性、カンジダ性)
  • 悪習癖(舌、唇をかむ)
  • 不良補綴物(補綴物の鋭縁)
  • 口腔乾燥症(習慣による口呼吸)
  • 単純ヘルペスや帯状疱疹(帯状疱疹後神経痛を含む)

舌痛の治療では診断が重要

一次性の舌痛症では原因が解明されていませんので決まった治療法はありません。
対処療法が主な治療法ですが、内服療法、行動認知療法がおこなわれています。
二次性の舌痛症では原因がありますので原因の除去により症状は劇的に改善されます。

口腔カンジダ症ではお口がヒリヒリする(苦味を伴う)

複数の診療機関を受診したが良くならない舌痛を訴える症例では口腔カンジダ症が疑われます。
紅斑性カンジダ症というお口の粘膜が赤くなるものです。お口の粘膜は薄く透明なので毛細血管の色で赤く見えますが、紅斑性口腔カンジダ症は周囲よりわずかに赤いだけですのでよく見なければ見過ごされます(写真a、b)。ヒリヒリするだけではなく苦味を伴うのが特徴です。

カンジダ検査が有効です。

検査には培養法(写真c)と直接検鏡法(写真d)があります。
培養法では最低24時間以上の時間が必要ですので治療開始までの時間がかります。
直接検鏡法では患部を拭いガラスに塗りつけて染めて顕微鏡で検査します。
短時間(約60分)で結果が出るうえに、仮性菌糸を確認してカンジダ症を確定することができます。
口腔外科・ドライマウス外来・お口のヒリヒリ外来では培養法でカンジダ属種を確定(写真c)していますが、直接検鏡法も同時に行い迅速に結果を判定し(写真d)、受診日に治療を開始しています。
ほとんどの舌痛症は二次性であり、特にカンジダによるものが多く、カンジダの除菌で劇的に改善されます。

お口のヒリヒリで困ったときは口腔外科外来を受診してください。

一次性、二次性舌痛をはじめ口腔乾燥は元より、お口の粘膜トラブルを担当しています。
強皮症、シェーグレン症候群、SLE(全身性エリテマトーデス)、関節リウマチなど自己免疫疾患で、口腔乾燥を伴いお口の粘膜トラブルの生じやすい症例も担当しています。

紅斑性口腔カンジダ症

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b

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72歳、女性。紅斑性口腔カンジダ症。
シェーグレン症候群にて管理中にお口のヒリヒリ感と苦味が認められた。
舌背は紅く乳頭が萎縮し平滑になっている(写真a)。
フロリードゲル2%を100mg/dayで14日間用いて治療したところヒリヒリ感は消失し、舌乳頭が出現し平滑舌は改善した(写真b)。

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d

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舌背のぬぐい液からC. albicansが検出された(写真c)。
舌背のぬぐい液を染色して顕微鏡検査したところ、丸い酵母と糸状に伸びた仮性菌糸が認められた(写真d)。

文責:上川善昭

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