口腔癌(こうくうがん)について

口の中にも「がん」ができます。「口に癌ができる」ことをご存じでしょうか。
自覚症状が少なく、単なる口内炎と思っていたという患者さんが多いのです。
また、口内炎として長期に治療を受けていた事例も数多く見受けられます。
それほど口腔癌は認識されていないのです。 

お口の中の病気は内臓のがんと異なり、開口すれば、疾患を直接診察することができるので、口腔癌は早期発見しやすい部位であるはずなのですが、専門病院を訪れる患者さんの半数は進行癌なのです。

鹿児島県は口腔癌死亡率が高い・口腔癌は増えている

口腔がんの80%以上は口腔粘膜から発生する扁平上皮癌です。
厚生労働省の調査によると口腔扁平上皮癌は1975 年の2,100名から2005 年で6,900名に増加、2015 年では7,900名と予想されています。これは癌全体の1~2%にあたります。日本では近年急増する傾向にあり、早期発見・早期治療にむけ是非注意しなければいけない癌です。

さらに、国立がん研究センターの2015年の調査では鹿児島県は口腔・咽頭癌の死亡率が全国平均の約1.5倍であることが示されました。
口腔癌を知っていただき、早期発見・早期治療をすすめる必要があるのです。

口腔癌の種類と症状

口腔扁平上皮癌の60.0%は舌にできる舌癌です。舌癌の殆どは舌縁から舌下面にかけて発生します。ついで歯肉癌、口腔底癌、頬粘膜癌の順で発生します。

口腔癌の種類と症状グラフ

癌は粘膜表面から内部に深く浸潤します。癌が大きくなると、癌細胞が入り込んだ組織は硬くなり、しこりを触れるようになります。潰瘍も口腔癌によく見られます。口内炎も潰瘍なので、癌を口内炎と間違える理由となります。しかし、癌の潰瘍はまるで噴火口様の形で、まったく口内炎と違うのです。

口内炎と癌はこんなに違う!

口内炎と舌がん

口腔癌は進行すると口の機能を奪い、発音、飲み込み、呼吸といった生命や生活の質に直接影響をおよぼします。
また口は顔面の一部ですので外見上の異常も出現します。他臓器の癌と同様に早期発見早期治療が必要な癌なのです。

口腔がんの発見は歯科医師が行います。

歯科医師は常時、口腔内を診察しており、口腔癌を含む口腔疾患の発見者となる機会が多くあります。
口腔癌は早期に発見することが可能ながんなのですが、現在のところ症例の多くが早期癌でなく、進行癌も含まれています。
早期口腔癌の臨床症状は、白斑、紅斑、びらん、潰瘍、腫瘤などです。
また、以下に示すように口腔癌になりやすい状態も存在します。
つまり、口の専門医である歯科医が診察して口腔内の病気を早期発見することが重要なのです。

口腔がんになりやすい状態とは??

口腔がんになりやすい状態

前癌病変と前癌状態

前癌病変とは、正常な組織よりも癌を発生しやすい組織のことをいいます。口腔白板症や紅斑症がこれにふくまれます。
口腔白板症は、口腔粘膜に生じた、白い板状の病気です。これはこすっても除去できないのが特徴です。白板症の癌化率は4.4~17.5%と報告されています。さらに重要なことは、白板症として診断した症例の中に、初期癌が含まれていることです。
紅斑症は鮮紅色でビロード状の斑状病変です。癌化の可能性が非常に高い病気です。一方、前癌状態とは癌発生の危険性が有意に高い一般的状態です。代表的なものが扁平苔癬です。扁平苔癬は角化異常と慢性炎症を伴う難治性疾患で、皮膚と口腔粘膜に症状を示します。好発部位は頬粘膜で、その他、舌、歯肉に見られます。レース状、網状の白色模様と紅斑の混在した様相を示します。
詳しくは口腔粘膜の病気をごらんください。

口腔がんの治療方法と治療成績・早期発見・早期治療が重要です。

口腔扁平上皮癌の治療成績は他の領域のがんに比べると非常に良好で、75~80%の生存率が得られています。
しかし、生存率は腫瘍の進展度に大きく左右され、初期癌では100%に近い生存率が期待できるのに対し、転移を伴う進行癌では60%に低下します。

口腔扁平上皮癌の治療には、

  1. 外科療法
  2. 放射線療法
  3. 化学療法

が主にもちいられます。

良好な治療成績に貢献しているのは外科手術です。しかしながら進行度に応じた拡大切除が必要で、術後、口腔の機能障害に苦しむ結果となってしまいます。
一方で、早期であれば、簡単な切除によって、ほとんど機能障害を残すことなく治癒します。

口腔癌検診におこしください。

2007年4月から施行の癌対策基本法では、がんの予防および早期発見の推進を第一に掲げています。その方針をうけ、各領域のがん検診が各地で開始されています。
しかし現在、行政が認める検診制度は成人歯科検診と事業所歯科検診であり、口腔がん検診については検診内容にふくまれていません。
口腔内の病変を早期に発見するために是非当科に口腔がん検診におこしください。

診療体制

科長の杉浦を中心に、がん治療認定医(口腔外科)2名を含む7名の口腔外科指導医・専門医が診断・治療を行います。術後の経過観察は治療と同様極めて重要ですので、定期的に外来で通院していただきます。 口腔がん検診を含む初診は随時受け付けております。

文責:杉浦 剛

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