12. 矯正治療
歯列矯正
口唇裂・口蓋裂を持つ患者さんは、上あごが成長しにくい、上あごや下あごがずれている、上あごの骨に裂け目がある、裂け目があることで歯が並ぶだけの十分な隙間がない、歯の数が足りない、歯が小さい、歯がねじれているなど、いろいろなことが組み合わさって歯並びや咬み合わせが悪くなっています。口唇裂・口蓋裂を持つ患者さんの12. 矯正治療では、上あごと下あごの大きさを整えることや咬み合わせを整えることによって口元や歯並びの見た目を良くすること、食べ物を良く噛めるようにすること、歯磨きがしやすく虫歯や歯周病にかかりにくくすること、明瞭に発音しやすくすることなどを目的に治療をおこないます。
口唇裂・口蓋裂を持つ患者さんの矯正治療は、一般的な矯正治療に比べ治療期間が長く、早い場合は3・4歳頃から、一般的には前歯が生えかわる6・7歳頃から始まり、14〜20歳頃までかかります。治療開始からあごの成長が落ち着いてくる頃までは上あごと下あごの大きさを整えることや適切に歯が生えかわるように誘導することを主におこないます。あごの成長が落ち着いたあとにマルチブラケット装置を使って歯並びを整えます。また、上あごと下あごのずれが大きいため歯並びを整えることが出来ない場合は、あごの手術を併用して歯並びを整えます( 外科的矯正治療 参照 )。歯並びや咬み合わせが整ったあとも保定装置を用いて歯並びがもとに戻らないように押さえます。ある程度保定装置で押さえて、歯並びが落ち着いてきた頃、保定装置をはずします。しかし、装置をはずすと歯並びが悪くなりやすい人の場合は長く保定装置を使用してもらう場合があります。また、歯並びが落ち着いてきた頃、歯が無いところがある場合には人工の歯を入れたりすることが必要になります。
口唇裂・口蓋裂を持つ患者さんの矯正治療には保険が適用され、自立支援医療(旧 育成医療)の対象となります。
図10−A 歯列矯正
(左:治療前 中:マルチブラケット治療前 右:マルチブラケット治療後)
外科的矯正治療
上あごと下あごのずれが大きく、歯並びを整えることが難しい場合、上あごや下あごの骨を切り、骨を動かして歯並びを整えます。これを外科的矯正治療といいます。
外科的矯正治療をおこなう場合、手術前にマルチブラケット装置を用いて歯を並べます(術前矯正)。このときの歯並びは手術後に咬むことを目的に並べているため、手術が近づくにつれ歯並びのずれが大きくなり、咬みにくくなります。術前矯正が終了したあと、上あごや下あごを切って動かします(顎矯正手術)。顎矯正手術後は切った骨がある程度治るまで上の歯と下の歯をしばり、口が開かないようにします。骨がある程度治ったあと、あごが元の形に戻らないように抑えながらしっかり咬むように歯並びを整えます。歯並びや咬み合わせが整ったあと保定装置を用いて歯並びが元に戻らないように押さえます。ある程度保定装置で押さえて、歯並びが落ち着いてきた頃、保定装置をはずします。しかし、装置をはずすと歯並びが悪くなりやすい人の場合は長く保定装置を使用してもらう場合があります。また、歯並びが落ち着いてきた頃、歯が無いところがある場合には人工の歯を入れたりすることが必要になります。
口唇裂・口蓋裂を持つ患者さんの外科的矯正治療には保険が適用され、自立支援医療(旧 育成医療)の対象となります。
図10−B 外科的矯正治療
(左:治療前 右:治療後)