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10. 口蓋裂と滲出性中耳炎

 滲出性中耳炎は小児に多く見られる耳の病気で、鼓膜の奥(中耳)に液体がたまった状態をいいます。
 耳は外耳・中耳・内耳の3つの部分に分けられ、音は外耳・中耳・内耳の順に伝わります。中耳には音を内耳に伝える鼓膜と3個の耳小骨があり、耳管という管で鼻の奥とつながっています。耳管は物を飲み込んだりすると開き、中耳の圧力と大気の圧力とを等しくする働きがあります。しかし耳管の機能が悪くなると中耳の圧力が低くなり、鼓膜が内側にひっこんだり中耳に滲出液がたまり鼓膜や耳小骨の動きが悪くなったりします。そうして聞こえの悪さを引き起こすことがあります。

 口蓋裂(粘膜下口蓋裂を含め)の子供さんは耳管の機能が悪い場合が多く、滲出性中耳炎にかかり易いと言われています。口蓋裂の子供さんでの滲出性中耳炎発生は1〜8歳までに高頻度に認められ、特に6歳時では80%に達するといわれます。一般に幼児の滲出性中耳炎は年齢とともに80%は自然治癒すると言われていますが、耳管機能不全などを伴うものでは治癒しにくく、また幼少時の中耳炎は発熱などの急性症状が出ない限り気付きにくいこともあり、結果として難聴を引き起こす確率が高くなるのです。

 難聴は社会生活、特にコミュニケーションに不自由が生じてしまいます。言語習得時に難聴になるとことばの遅れを生じ、重大な問題になります。早めの診断・治療が必要です。かといって、必要以上に神経質になる必要はありません。子供さんの聞こえが良いか悪いかを、気をつけておくことが大事です。
 滲出性中耳炎は専門医(耳鼻科医)による聴力検査、鼓膜の動き方を検査するインピーダンス聴力検査、鼓膜の視診により簡単に診断がつけられます。治療は耳管や滲出液に対する処置をしてもらいます。薬物による治療をまずおこない、効果がなければ鼓膜切開や鼓膜チューブ留置をおこないます。これらを繰り返しながら、治癒まで数年を要する場合もあります。

 滲出性中耳炎による難聴は、治療さえきちんとおこなえば聞こえが良くなる病気です。症状が軽いからといって放置せず、症状が重くても根気よく治療をしてください。

図9 耳の模式図

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