8. 口蓋裂の手術
口蓋裂手術の時期と準備
口蓋裂はことばと密接な関係があります。8. 口蓋裂の手術は、通常1歳6か月頃におこないます。この時期は発音を完全に覚える前で、しかもあごの発育がある程度進んだ状態であり、8. 口蓋裂の手術に最適な時期と考えられています。
手術までは、定期的な診察をおこないます。また、口蓋裂の子供さんは中耳炎になりやすいので、耳が汚れやすいなどの前触れがある場合は、耳鼻科で診察していただきます。
手術について
手術は全身麻酔下でおこないます。入院に必要な期間は2週間程度です。入院にはお母さんに付添っていただく必要があります。手術は単に口蓋の裂け目を閉じるだけではなく、発音する時に空気が鼻にもれないように、口蓋の組織を後方に移動し、口蓋の筋肉を正しい位置に修正します(図6)。
図6 8. 口蓋裂の手術(プッシュバック法)
顎発育のための注意
口蓋裂手術では、正常な言語機能を回復するために、十分に長く、しなやかな軟口蓋を作ることが重要ですが、同時に、口蓋に出来た傷あとは顎の発育を障害することが知られています.われわれは、手術の時に口蓋の表面に、骨膜(こつまく)と呼ばれる薄い組織を温存して、侵襲の少ない手術を心がけています。
手術後の注意
手術直後は口蓋を保護するためにプラスチック製のプレートを上あごに付けます。1週間してプレートをはずした直後は流動食をスプーンで流しこむようにして与えてください。手術後2週間は、流動食のほかにごく軟らかい固形物を少しずつ与えても良いですが、ビスケットなどの粉が傷口に残るような食べ物は避けてください。手術後1か月たてば、普通の食事も歯みがきも可能となります。なお、手術直後は傷が硬く、また筋肉の動きが悪くなるため、一時的に食物が鼻からもれることがあります。時間がたてば、軟口蓋の動きが良くなるのと同時にこの鼻もれも少なくなります。また、まれに手術した口蓋の一部に孔があくことがありますが、小さい孔ならば発音には影響せず、上あごの成長とともに自然に閉じていきます。
口蓋裂治療では、その後のことばの治療がとても大切です。ことばの訓練はおおむね術後1か月から開始します。それまでは自宅で訓練することは控えてください。