7. 口唇裂の手術
口唇裂手術の時期と準備
生まれてすぐの赤ちゃんは体も唇も小さいため、少し発達を待った方が手術は確実かつ安全におこなえます。またHOTZ床やNAMの装着により、裂の幅や鼻変形の改善効果が期待できることから、片側性の場合には生後3〜4か月、体重6kgを超えて手術をおこないます。両側性の場合は、正中唇と呼ばれる真ん中の唇が十分に発育している場合には4か月頃に両側同時に手術をおこない、正中唇の発育が悪い場合には短い口唇となるのを避けるために手術を2回に分け、1回目を3か月、2回目を6〜7か月頃におこないます。
手術前の準備としては、1か月に1回程度の割合で全身状態、口唇、口蓋などの局所の診察をおこないます。家庭では、口唇裂・口蓋裂の部分を清潔にしながら、赤ちゃんの体重、哺乳量などを把握しておいてください。口唇裂・口蓋裂の子供さんは、心臓やその他の疾患を合併することもあるようです。合併する疾患が重い場合には、そちらの治療を優先しなければならない場合もあります。
手術について
手術は全身麻酔下でおこないます。入院に必要な期間は2週間程度です。入院にはお母さんに付添っていただく必要があります。
口唇形成術は、単に唇を閉じあわせるだけでなく、唇の筋肉を立て直し、自然に近い唇の形と機能を作ることが目的です。鼻の変形が大きい場合には、同時に大まかな修正をおこなう必要があります。子供さんによって裂の幅や変形の程度は異なりますので、手術前の診察で最も適切な手術時期や方法を決定し、手術後の傷が目立たないように細心の注意を払います(図5)。
図5−A 片側性口唇形成術における口唇の作り方
図5−B 口唇形成術前後の状態(左:術前 右:術後)
手術後の注意
手術後は唇の保護のために口唇プロテクターをつけ、細長い乳首(スポイド乳首)のついた哺乳瓶や母親が指で押してミルクの飲みを補助できる哺乳瓶(ハバーマン型)を用います。抜糸は1週間後頃におこないます。唇の傷は、術後数か月間は赤みを帯びたり、硬くなったりする場合がありますが、いずれ落ちついてきます。
この期間はなるべく手術部を引っ張らないことが、傷あとを目立たなくするために大切です.瘢痕(はんこん)と呼ばれる目立つ傷防止のためのお薬を飲んで頂き、傷あとに貼るテープの交換を家庭でおこなうようお願いしています。また、手術後に口唇の傷跡に直射日光は避けるようにして下さい。
同時に鼻孔の形が整うように、術後約3か月間はリテーナーと呼ばれるシリコン製の鼻栓を装着します。