骨造成によってインプラント治療を可能にする。 インプラント診療
診療の特徴
鹿児島大学口腔顎顔面外科では、歯周病や外傷などで歯を失った方が再び豊かな食生活を楽しむことができるようにインプラント治療を実施しています。インプラント治療は、歯が抜けた歯槽骨に人工歯根を埋め込み、その歯根に新しい歯冠を連結・装着します。したがって、人工歯根をしっかりと支える骨がインプラント治療では必要です。
当科では、歯周病や外傷による重度の骨欠損症例に対しても骨造成術を行うことで、インプラント治療が困難な症例にも対応しています。
診療の内容
インプラント治療は、鹿児島大学インプラント専門外来を受診して行われます。インプラント専門外来では、冠ブリッジ科、義歯補綴科、歯周科、口腔顎顔面外科、口腔外科、歯科放射線科の各専門科によって構成されており、綿密な治療計画などを検討しながらインプラント治療を進めて行きます。
当科では、インプラント治療を安全に・確実に行うために、術前にCT撮影を行いインプラントシミュレーションソフト(SimPlant(R))を用いてインプラント埋入部位の骨の状態を把握し、骨質や骨幅、高さなどを評価して骨造成術の適応を検討しています。骨造成術が必要な患者さんは、インプラント治療埋入前あるいはインプラント埋入時に骨造成術を計画します。また、骨欠損の大きな症例に対して広範囲の骨造成術が必要な場合には、歯科麻酔科と連携して全身麻酔下での治療を行うことも可能です。
骨造成術
GBR (Guided Bone Regeneration) 骨誘導再生法
小規模な骨欠損症例に用いられる方法です。欠損部に自家骨を砕いたものあるいは骨補填材を足して特別な膜で骨周囲を覆い、骨ができるのを待ちます。インプラント埋入前あるいは埋入と同時に行なわれます。
オンレーグラフト
水平的あるいは垂直的な比較的広範囲にわたる骨欠損あるいは骨萎縮症例に用いられる方法です。水平的な骨欠損の場合は頬側に骨を移植し、水平的な骨欠損の場合は歯槽堤の高径を高めることが可能です。移植骨は欠損部位の大きさなどによって口腔内外から採取されます。
■下顎枝からのオンレーグラフト
■オトガイ部からのオンレーグラフト
■腸骨部からのオンレーグラフト
上顎洞底挙上術
上顎臼歯部の垂直的な骨欠損症例に用いられる方法です。上顎臼歯部では上顎洞が存在するためにインプラントを埋入するための垂直的な高さが不足することがあります。そのような場合に上顎洞粘膜を挙上し、できた空隙に骨移植を行います。インプラント埋入前あるいは埋入と同時に行なわれます。
骨延長術
骨延長術は、骨移植術を行わずに骨を増大させる方法です。この方法の特徴は、延長装置によって骨と歯肉を造成し、骨幅や骨の高さを増加させることです。
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唇顎口蓋裂患者の顎裂部自家腸骨海綿骨移植後のインプラント治療
唇顎口蓋裂患児の顎裂部(上顎の歯槽部に骨欠損している部位)では、歯の萌出、移動が期待できないため腸骨を採取し、顎裂部へ骨移植を行います(口唇口蓋裂治療参照)。しかし、側切歯の欠損などで歯の空隙が残る場合は、インプラント治療で審美的・機能的な改善を行います。
骨移植前 骨移植後、インプラント埋入前 インプラント埋入後 インプラント埋入後のレントゲン写真 |
インプラント部門 業績
原著
1.Topographic Analysis of Maxillary Premolars and Molars and Maxillary Sinus using Cone Beam Computed Tomography .
Yoshimine S, Nishihara K, Nozoe E, Yoshimine M, Nakamura N
Implant Dentistry. 21(6):528-535, December 2012.
症例報告・その他
1.上顎歯槽部歯槽骨骨折後の著しい歯槽骨萎縮に対して口蓋法による歯槽骨延長術を施行した1例.
野添悦郎、大河内孝子,石畑清秀,西原一秀,濱野 徹,中村典史
日口外誌55(6): 310-314, 2009.
学会発表
1.骨延長法を併用した歯槽骨造堤後、インプラント治療を行った上顎前歯部歯槽骨骨折の1例
野添悦郎、西原一秀、宮脇昭彦、中村典史、濱野徹、瀬戸口尚志
第8回日本口腔顎顔面外傷学会総会・学術大会 7月22日 2006年 鹿児島
2.アンケート調査によるインプラント治療の現況
西原一秀、野添悦郎、吉嶺真一郎、松山孝司
第38回日本口腔インプラント学会・学術大会 東京都 9.13、14、2008.
3.骨移植による顎堤造成後にインプラントオーバーデンチャーを装着した1例
鎌下祐次、野添悦郎、西原一秀、長岡英一
第27回日本口腔インプラント学会九州地方部会. 2010, 2/27 ? 28, 福岡.
4.日本人における歯科用コーンビームCTを使用した上顎臼歯部と上顎洞の解剖学的分析
-インプラント治療のために-
吉嶺真一郎 、西原一秀、中村康典、野添悦郎
第40回日本口腔インプラント学会学術大会 2010, 9/17 ? 19, 北海道
5.歯科用コーンビームCTを使用した上顎小臼歯部と上顎洞の解剖学的分析
吉嶺真一郎、西原一秀、野添悦郎、中村典史
第41回日本口腔インプラント学会学術大会 2011, 9/16 ? 18, 名古屋
6.当院を受診したインプラント治療に関する偶発症・合併症患者の臨床的検討.
西原一秀、松山孝司、松井竜太郎、野添悦郎、中村典史
第42回公益社団法人日本口腔インプラント学会・学術大会 in 大阪 2012.9.22