トップページ > 9. ことばの発達と治療

9. ことばの発達と治療

ことばの発達

 ことばの獲得は、ご家族にとって、手術のことや上顎の成長やかみ合わせなどとともに、とてもご心配されている課題と思います。口唇口蓋裂のお子さんのことばは、豊かな言語環境で、手術によって、構音器官の形態や鼻咽腔閉鎖機能が整え、年齢に応じた構音(発音)の仕方を覚え、さらに心身発達を育むことの3つのことが調和して育って行きます。口唇口蓋裂のお子さんの「ことば」は、まずは口蓋形成術などの手術で形態を整え、「ことば」の内容である言語発達を習得し、その後、機能を獲得しながら、最後に正しい構音を学習していきます。

鼻咽腔閉鎖機能不全について

 声が過度に鼻にかかるとは、鼻咽腔閉鎖機能に関係があります。鼻咽腔閉鎖機能とは、飲み物や食べ物を摂ったり、会話をしたり、楽器を吹く時、呼気(肺からの空気)や食物が鼻に抜けないように、軟口蓋(上顎の奥の軟らかいところ)などで蓋をする機能のことです。また、この機能は、口蓋の手術の術後すぐに獲得するお子さんもいますが、少しずつゆっくり獲得して行く方もおられます。鼻咽腔閉鎖機能の獲得はとても大事で、この機能の獲得ができるかできないかで、その後のことばの獲得が左右されます。この機能がうまくいかないことを鼻咽腔閉鎖機能不全といいます。近年、鼻咽腔閉鎖機能は、初回の口蓋形成術後、約9割の方が獲得できますが、1割の方が鼻咽腔閉鎖機能の治療が必要と言われています。

図7 鼻咽腔閉鎖機能

構音障害について

 構音障害とは、発音の問題で、使われていることばが正しく構音できず、周りの人々に言いたいことが伝わらない場合のことをいいます。

言語発達の遅れについて

 お喋り始めが少し遅い場合があります。しかし、難聴や発達などに問題がなければ、3才頃までには追いつくと言われています。

言語療法の流れ

 鼻咽腔閉鎖機能、構音障害、ことばの発達および聴力の4つの観点で、言語療法は進んでいきます。口唇口蓋裂児の言語療法は、よりよい社会生活を過ごすことができるよう、言語障害の予防および治療を目的に行います。よって、年齢や発達時期を考慮して、4つのステップに分けて治療を行います。 ことばの治療は、図8(次頁)に示しますような流れで進んで行きます。

1)ステップ1:0才から口蓋形成術まで
 この時期は赤ちゃんの全般的な発達を伸ばす大事な時期です。ご家族の心理面への配慮しながら、ことばの発達の促進、定期的な聴力検査を行い、中耳炎の早期発見などを行います。

2)ステップ2:口蓋形成術後から4歳
 口蓋の手術を受けた後、ことばの基礎を作る大事な時期です。ことばの発達に留意しながら、鼻咽腔閉鎖機能の早期の獲得を目指し、術後1か月を過ぎてから、ラッパなどを吹くことを遊びに取り入れていきます。また、食事の工夫をしながら、構音障害の予防を行っていきます。

3)ステップ3:4歳から就学まで
 ことばの症状がはっきりしてくる時期です。問題がない方は鼻咽腔閉鎖機能の賦活や構音障害の予防を引き続き行います。しかし、構音に問題がみられた方は、この時期からお子さんに対して積極的なことばの練習を行っていきます。また、鼻咽腔閉鎖機能に問題がられた方は、関係科と話し合いながら、スピーチエイドなどの治療を進めて行きます。

4)ステップ4:就学後
 就学後も課題が依然としてみられる方は、引き続き治療を継続します。また、ことばに問題がない方でも、この頃になると、喉の奥の扁桃腺が小さくなり、場合によって、鼻声が出てくる方もおられるので、できれば、中学生か高校生になるころまで、定期的にことばの経過を観察して行きます。


図8 言語療法の流れ

 口蓋裂のお子さんのことばは、適切な時期に適切な治療を行っていけば、正常なことばを獲得することが出来ると言われています。そのためにはご家族の協力がとても大事になってきます。ご一緒に、よりよい環境作りを行っていきたいと願っています。

 

ページトップへ戻る
Copyright(C) 鹿児島大学病院 口唇口蓋裂専門外来 All Rights Reserved.