トップページ > 3. 病気の成り立ちについて

3. 病気の成り立ちについて

 赤ちゃんの口唇と口蓋は妊娠の初期(5週目〜10週目くらい)に出来上がりますが、なんらかの原因で唇の癒合が障害されると口唇裂が生じます。同様に、口蓋裂は左右の突起の癒合が真ん中で妨げられると生じると言われています。我が国において口唇裂・口蓋裂の子供さんは、およそ500人に1人の割合で生まれています。また、その弟妹あるいは本人の子供さんでは同様な異常が発生する頻度が高くなると言われています。しかし、口唇裂・口蓋裂は健康なご両親の間に生まれることが多く、発生原因がいろいろと研究されています。母体の妊娠初期の状態や薬剤、放射線の照射などいろいろな環境的因子、遺伝的要因が考えられていますが、発生原因はまだ明確には分かっていません。

図2 口唇と口蓋の発生
(宮崎正:口腔外科学、先天異常および後天異常、医歯薬出版、東京、2003より)

 ほとんどすべての病気は、その人の生まれながらの体質(遺伝素因)と病原体や生活習慣などの影響(環境因子)の両者が組合わさって起こります。遺伝素因と環境因子のいずれか一方が病気の発症に強く影響しているものもあれば、「がん」などのように両者が複雑に絡み合って生じるものもあります。この遺伝要素は、親譲りの場合もあれば、近年、親から子に遺伝子が受け継がれる時に、少しずつその配列が入れ替わることが明らかになっています.その意義はまだ解明されていませんが、次世代に多様さをもたらす重要な仕組みではないかとも考えられます。
 口唇裂や口蓋裂が起こる原因は、以前は全てが遺伝によると思い込んでいた人も少なくありませんでした。しかしながら、口唇裂や口蓋裂の子供さんの家族や親せきには、同じような異常はないことが多いです。現在では誰でもその可能性、すなわち病気のなりやすさを持っていると考えられています。そして、先に述べたような多くの環境因子がさまざまな形で影響し、発症するのであろうと考えられています。

Copyright(C) 鹿児島大学病院 口唇口蓋裂専門外来 All Rights Reserved.