第10回もみじ会告知ポスター
日 時 : 平成23 年12 月4 日(日)13:00 〜 16:30
場 所 : 鹿児島大学病院内 鶴陵会館
日 程 : 13:00〜 「もみじ会」総会
13:30〜 講 演
1. 「産婦人科の口唇口蓋裂児を出産する母親への対応」
鹿児島大学病院看護部口腔顎顔面センター師長 下田ひろみ 看護師長
2. 「矯正治療って何?」
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科発生発達育成学講座歯科矯正学分野 宮脇正一 教授
15:00〜 茶話会
特別講演「矯正治療って何?」
鹿児島大学病院 矯正歯科 診療科長(教授)兼医歯学総合研究科副研究科長 宮脇 正一
口唇裂・口蓋裂は、約500人に1人と比較的高い割合で見られる一般的によく知られた病気です。元々、胎児の頃(生まれてくる前)は全ての人のくちびるや上あごは離れていて、生まれてくるまでにそれらがひっつきます。口唇裂・口蓋裂は、発症原因がまだよく分かっていませんが、くちびるや上あごの一部がうまくひっつかなかったことによって生じます。したがって、小さい頃にくちびるや上あごをけがして切れた方と同じ状態と考えることもでき、適切な時期に正しい治療を受ければ、全員治ります。手術や矯正治療などを受けること自体はかなり大変なことですが、それを乗り越えて頂ければ、口唇裂・口蓋裂は成人する頃に完治する病気と言えます。矯正治療の方法に関しては、一般の方と異なるところはありません。ただし、治療費に関しては通常、矯正治療費は保険外なのですが、口唇裂・口蓋裂を伴う患者さんは、健康保険(3割負担)が適用され、さらに、鹿児島県では、育成医療(18歳未満)や更生医療(18歳以上)を申請して受理されれば、原則1割負担で治療を受けることができます。
矯正治療は、「矯正治療の流れ」の図で示しているように、成長を利用した治療(4歳頃〜:咬合管理、7〜12歳頃:必要に応じて成長を利用した矯正治療や骨移植)、大人の歯の治療(12歳頃〜:最終的な大人の歯をきれいに並べる矯正治療や手術)およびその後のあと戻りの防止の段階に分けられます。具体的には、口唇裂・口蓋裂の閉鎖手術後に上あごの成長が抑えられている場合、子供の頃に上あごの成長を促進する矯正治療が必要となります。また、歯ぐきや上あごの骨がかけている場合、腰の骨などから骨の一部を欠けている部分に移し(骨移植と呼びます)、歯を正しい位置に生えさせたり、傾いて生えている歯をきれいに並べたりします。骨移植の時期に関しては、一般的には、移植部位に歯を生えさせることができるようであれば、7〜12歳頃の間に骨移植を行います。しかし、骨移植をした部位に歯を移動できない場合、骨が徐々にやせてきますので、特に、歯の移動量が大きい場合や最終的な治療のゴールが分からない場合は、12歳頃以降の大人の歯に生えかわってから、個々の歯につけるブラケット(ボタンのようなもの)とワイヤーからなるマルチブラケット装置をつける直前に骨移植を行います。その後、マルチブラケット装置を用いた最終的な治療により、歯をきれいに並べます。しかし、著しいあごのずれがこの頃まで残っている場合、もう少し年齢が増して、身体の成長がほぼ止まってから、あごの大きさや位置関係を改善する手術も併用する場合があります。そして、きれいに歯が並んだ後、マルチブラケット装置をはずして、後戻りを防ぐための取り外しのできる装置を装着して頂きます。これは長期間使用するのが良いと言われています(特に上の歯につける装置)。
鹿児島大学病院口唇口蓋裂専門外来は、我が国有数の診療施設で、南九州の拠点病院であり、各領域の専門家(歯科の場合、口腔外科、小児歯科、口腔保健科、補綴科、矯正歯科など)による高度なチーム医療が提供できる体制が整っています。今後も私共は、一人一人の患者さんの状態に応じたオーダーメイド医療を提供したいと思っています。
矯正治療は、根気のいる大変な治療ですが、今、一生懸命頑張っていれば、将来、必ず治療して良かったと思う日がくると思います。これからも一緒に頑張りましょう。
最後に、講演や論文に写真を提供して頂きました患者さんのご理解とご協力のお陰で、参加された他の多くの患者・ウんが勇気づけられると共に、この分野の治療が発展しますので、この誌面をお借りして、皆さんに感謝申し上げます。ありがとうございました。