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第1回もみじ会

日 時 : 平成19 年3月18日(日)13:00 〜 15:30
場 所 : 鹿児島大学病院内 鶴陵会館
日 程 : 13:00〜 「もみじ会」総会
    会長あいさつ 南屋敷 尚美
    14:00〜 講 演
    「口唇口蓋裂の治療 〜 親の会発足に向けて 〜」
     鹿児島大学病院 口腔顎顔面外科 中村 典史 教授
    14:30〜 茶話会

    「もみじ会に参加して」 馬場銀次郎一家



会長あいさつ

 この春より、しばらくお休みしていた“もみじ会”を再開するにあたり先生方や皆さんのお手伝いをさせて頂くことになりました南屋敷です。よろしくお願いします。
私も前会長・中馬さんには、大変お世話になり子供の成長過程でのいろいろな悩みやわからない事など相談させてもらいました。その時の恩返しが少しでも出来ればと思い今回引き受けさせて頂きました。医療的なことは教授や先生方へお任せして、同じ口唇口蓋裂の子をもつ親として私の経験が少しでもお役に立つのであればうれしいですどうぞよろしくお願い致します。
ここで私の経験を少しおはなしします。私の娘もこの春中学校2年生になりました。三人兄弟の次女として生まれ、これまでに 口唇、口蓋、ちょう骨移植、口唇の修正・・・と無事に手術を終え、今、矯正治療に頑張っています。
ほとんどの子供さんは生後六ヶ月ぐらいに手術を受けられますが、娘の手術は一歳二ヶ月でようやくすることが出来ました。
生後6ヶ月を過ぎ体重も6kgを超えようやく手術を受けられる状態まで成長がしかし娘は手術前の血液検査で肝機能の数値が正常値よりも低く手術を受けることが出来ませんでした。先生方にも“よくあることだから・・・”と病院を後にしました。それからしばらく通院、外来のたびに血液検査をするものの数値はよくならず、あえなく同病院小児科のお世話になることに、小児科でも外来での治療をするものの、いっこうによくならず結局、小児科へ入院点滴につながれた入院生活が始まりました。この間約8ヶ月“どうして娘だけが手術が出来ないのだろうと、あせりと苛立ちの日々をすごしたことを覚えています。
その時、わたしを励まし続けてくださったのが当時の担当看護婦だった田畑さん(のちの皆さんご存じ田畑婦長さん)をはじめ先生方でした。
その後、発音のことや今後の治療のことを先生方と相談した結果、肝機能の数値については正常値には至っていませんでしたが、小児科の先生方の協力を得て、待ちに待った手術日を迎えることが出来ました。本当に遅い手術でした。
今思えばこの時期こそが娘が望んだ手術日だったのではないかと思います。身長も体重もそして体力も十分に整えた上での手術で、麻酔の回復や術後の経過もそのせいか順調に回復しました。不思議なことにこの手術を終えてからの肝機能の数値は正常値にもどりました。今までの苦労は何だったのだろうかと思うぐらいよくなったのです。それからの手術に関しては問題なくクリアすることができました。
現在は中学でクラブ活動でバトミントン部に入り元気に汗を流しながら、毎日 遅くまで練習に励んでおります。
今回の総会に出席し、月日は流れても子供の成長過程に関する心配事や悩みは変わらないんだなあと思いました。これから私も娘の成長と共に日々学び共に成長していきたいと思います。
今後も先生方の協力を頂きながら総会を予定していきたいと思います。
病院での外来では時間の都合上なかなかゆっくり先生方と話をすることができないかと思います。会場までの交通手段や子供さんがまだ小さくて何かと大変かとは思いますが是非、総会に足を運んでいただき、日頃 疑問に思うことや悩みなどを相談していただきたいと思います。
微力ながら少しでもお役に立てればと思っております。

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口唇口蓋裂の治療 -親の会開催にあたって-
鹿児島大学病院口唇口蓋裂専門外来(口腔顎顔面外科)
中村 典史

 鹿児島、口唇口蓋裂親の会「もみじ会」総会を再開するにあたり、新代表ならびに副代表を快く引き受けていただいた方々には心より感謝する次第です。 
今回の総会では、三村 保先生から、20年以上前の「もみじ会」発足当時の話をしていただき、情報が乏しかった時に、的確な口唇口蓋裂に関する医療情報を提供する場として、「もみじ会が」有効に活用されことを知りました。現在では、むしろ情報が溢れる時代になりましたが、逆に多くの情報の中から真に選ぶものは何かを提供する場として、また、口唇口蓋裂児の子供さんが健やかに育ち、大きく社会に羽ばたいていく環境を広げるために、皆様と伴に「もみじ会」の発展に尽力していきたいと思っています。

1.口唇口蓋裂のチームアプローチの精神

 皆様は、口唇口蓋裂という疾患が様ざまな問題を引きおこすことから、多くの専門知識を持つ医療者が協力しあうこと(チームアプローチ)が重要であることをご存知と思います。このチームアプローチは、1938年にアメリカ、ランカスター口唇口蓋裂クリニックの矯正歯科医クーパー博士が口唇口蓋裂に悩む人々を治療するために包括的医療チームを作ったことに始まります。我が国では、1958年に九州大学口腔外科の藤野 博士が初めてチームアプローチの重要性を紹介され、現在では広く認知されるようになりました。このチームアプローチとは単に外科医、矯正歯科医、(小児)歯科医、言語聴覚士、臨床心理士などが施設に揃っていたらよいと言うものではありません。「チームアプローチとは、口唇口蓋裂患者の治療に情熱と能力をもった専門家が治療の最初からチームを作って、長期治療計画に従って治療を行うものであるが、多岐にわたる障害に立ち向かうには専門集団の有機的連携が重要である。チームのメンバーは互いに独立して、しかも相互に協力し、一つの目的に努力するものであって、チームの中の誰かの追随者であってはならない。」と説明されています。私達口唇口蓋裂専門外来のスタッフはこの精神を受け継ぐ者として、南九州において鹿児島大学病院を中心とした医療施設と社会が協力しあった口唇口蓋裂チーム医療を発展させることが大きな夢であります。
口唇口蓋裂治療のゴールは、口唇口蓋裂児を心身ともに健康な状態で社会へ導くことであります。その意味で、ご家族の皆様も私共と伴に患児の健全な心を育てるチームのメンバーと言えます。これからのお子様の治療について、私共とご家族の皆様が一緒に考えることのできるように、「もみじ会」で多くの情報を皆様へ提供していきたいと思っています。

 
2.口唇口蓋裂の意味
 

 口唇口蓋裂の治療をしていると、なぜ健康な両親から病気を持つ子供が生まれるのですか?という質問をよく受けます。口唇裂や口蓋裂は、赤ちゃんがお母様のおなかにいる胎生6〜8週くらいの時期に口唇や口蓋を作る突起の癒合不全によって起こることが知られており、その頻度は我が国では500〜600人に1人と言われています。この数字は、少子化の進む現在でもほとんど変わりません。
口唇口蓋裂が起こる理由については、過去の研究によって遺伝的要因と環境的要因が合わさった多因子疾患と説明されています。近年、他の疾患の病因が解明されるにつれ、多くの疾患も口唇口蓋裂と同じ多因子が関係していることが分かってきました(図1)。なかでも頻度の高い病気である糖尿病、高血圧、アトピー、がんなども病気のなり易さ(遺伝的要因)と環境的要因が重なって起こると考えられています。そして、遺伝的要因の関係しないものは事故によるケガや火傷などわずかなものということになります。

 何万年も前のヒトが現在のようでなかったように、生き物の形や機能は少しずつ変化しながら、動物はそれぞれ異なる唇や口蓋の形に進化してきました。これからもこの仕組みは永遠に続き、次の世代に少しずつ多様な形や機能を生み、それによって新たな環境に適応する仕組みを有するものと考えられます(図2)。全ての生き物は多かれ少なかれ多様性を生む何らかの仕組みをもっており、それが、多くの病気の遺伝的要因と言われるものと関連があるのではないかと思われます。私は、その意味で全てのヒトは平等に病気へのリスクをもっているのではないかと考えています。
口唇口蓋裂治療で、満足すべき治療を行なうことは、私共の重要な責任と認識していますが、同様に、このような疾患が起こる仕組みを明らかにすることも大切であると考えています。未来の子供たちのためにも、今後、口唇口蓋裂の真の意味を追求することが重要と思います。

  
3.口唇外鼻の幼児期、成人期の手術について

 私は、患者家族の方々より、常々口唇や鼻の手術の話、特に、口唇や鼻の二次修正術の時期や方法、外科矯正手術などについて知りたいと言われてきました。そこで、今回は初回(赤ちゃんの時)と、思春期以降の口唇、鼻の手術について簡単にお話させていただきました。
口唇裂の初回手術で、口唇の手術法はかなり確立されてきたと言えますが、外鼻については、まだ治療法が十分に確立されていません。従来から、早いうちに手術すると鼻の軟骨の成長を障害するなどの理由からあまり積極的な治療は行なわれてきませんでした。しかし、口唇と外鼻は元々一体となって外側へ偏位していることから、一緒に移動させて修正するのが論理的かつ生理的と言えます。そこで、最近では、ホッツ口蓋床(口蓋裂をふさぐ入れ歯)に鼻柱(鼻の中央の柱を)を伸ばす装置をとりつけたナム(Naso-AlveolarMolding Plate図3)という装置を使って、乳児期の外鼻軟骨への侵襲を避けながら、鼻変形を修正する取り組みがなされています。鹿児島大学病院口唇口蓋裂専門外来でも、小児歯科の先生の協力により手術前に鼻の形を整えることに取り組んでいます。

次に、二次的な修正手術は、片側性と両側性では状況がかなり違います。片側性では左右の顔面骨の高さに違いがあるために、鼻柱の付け根や、鼻翼(小鼻)の外側の高さがズレていたり、鼻翼軟骨が折れ曲がって鼻に皺が寄ったりします(図4)。鼻を家に例えれば、斜面に建った家が傾いているようなものと考えたらよいでしょう。一般に、傾いた建物を直すにはまず地面を平に整地しますが、ヒトの顔では簡単なことではありません。小学生の中学年に行なう骨移植は丁度この整地に相当します。成人期の外鼻修正では、家の大黒柱である鼻柱を真っすぐにし、屋根に相当する鼻翼軟骨を左右対称に固定する必要があります。その時、補強に鼻中隔の先端に軟骨を移植する場合も多くあります。さらに、斜面の下側(裂側)の柱が短いので、それを延ばすために、鼻前庭という鼻孔のなかの組織を粘膜移植などで延長しますと、図4右側のような形で直立する家(鼻)が出来ます。

 一方、両側性では、顔面骨は左右対称です。鼻柱のズレはありませんが、顔の正中線上の皮膚などの組織が少ないことから鼻が大きな力で押される形となります。そのために、図5のように、家に例えると大黒柱や両側の柱は短く、屋根も平坦です。そこで、鼻柱を上方に延長し、やはり補強に鼻中隔の先端に軟骨を移植し、鼻翼軟骨を固定して屋根を整えます(図5)。片側性と最も違うのは鼻の正中の皮膚の長さを延長しなければならないことで、鼻孔の縁の皮膚を用いたり、口唇の組織を鼻柱に移動させるなどの方法がありますが、今日多くの施設で様々な方法が開発されています。

4.口唇口蓋裂児の健やかな笑顔を願って

 さて、鹿児島大学病院口唇口蓋裂専門外来では、今年度、口唇裂・口蓋裂治療の手引きを作成中であり、その表紙に用いたロゴマークを下に示しています。赤ちゃんが眠りから醒めたときに、薄らつぶらな瞳の中に入ってくるお父様、お母様を始めとする家族の皆様の温かな笑顔をイメージして作ったものであります。 このような家族や周囲の温かな環境によって口唇口蓋裂児は心穏やかに育ち、素敵な笑顔を育んでいくのであろうと考えます。
「もみじ会」の設立にあたり、私共も皆様とともに、お子様の健やかな笑顔を願って、今後も会の発展に取り組んで参りたいと思います。

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「もみじ会に参加して」 馬場銀次郎一家

 弥生三月の好き日、一家族四人で、もみじ会に参加させていただきました。
中村教授の講演は、とてもわかり易かったです。口唇口蓋裂の子をもって、「何でうちの子が・・・。」と、すぐに自問自答の迷宮に入り込んでしまう自分にとって、バイブル的なお話でした。
また、と・トも不安で心配しているうちのじーちゃんばーちゃんに、この講演を聞かせて、理解してもらうのにも良かったです。人は皆、生まれながら、いろんな病気になる因子を持っているそうです。糖尿病になってしまった人がいるように、口唇口蓋裂の人もいる。そして、たまたま1/500の確率にあたってしまった。というよりも「この子が、家を選んで生まれてきてくれた。」と思ってがんばりましょう。そう、がんばらなっくっちゃ。
でも、何をがんばれば良いのでしょうか?
ミルクが上手に飲めなくて、泣き叫ぶわが子を抱いて、途方にくれました。ようやく手術にこぎつけても、なんでこんな怖い目に遭わせないといけないのか、と落ち込みました。離乳食が鼻から出て、痛がり大泣きする姿に、一緒に泣きました。嫌がるホッツ床を無理に入れて、ゲッポリ吐かせてがっくりしました。でもその度、「がんばれ!がんばれ!!」と心の中で繰り返しました。繰り返し過ぎて最後は何をがんばればいいのか、誰に向かって言っているのかわからなくなりました。
このもみじ会にいらした方々、それぞれ、いろんな思いでがんばってこられたのだと思います。そこで、1つ皆さんに提案。この会は、がんばらない会にしませんか?だって、もう充分がんばってるんだもん。「がんばろうね。」じゃあなっくて「がんばってるねー。」「すごいねー。」て肩をたたきあえる会がいいなあー。と思います。
うちの銀次郎も1歳11ヶ月になりました。6月14日に口蓋の手術を受けて、ようやく がんぶい(うちではホッツ床をこう呼んでいます。)から卒業しました。「がんぶいが無い」と大騒ぎしたのも今となっては、笑い話です。ここに来るまで、ともすれば、不安で押しつぶされそうになる気持ちを、和らげてくれたのは、外来で出会う同じ悩みを抱えたパパやママでした。もちろん、歯学部スタッフの皆さんの暖かい対応があったからこそですが・・・。
悩みは多いけれど、それぞれ個性があって、それぞれにハードルを乗り越えてこられた皆さんの存在こそが、明日への希望です。「もみじ会に行ったら何か勇気が湧いてきた!」「心が軽くなった!」そんな会にしていきましょうね。
最後になりましたが、日々の激務に耐えながら、笑顔でサポートしてくださった歯学部スタッフの皆さんに心からありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

追伸 すべてのママにすべてのパパを代表して一言。こんなすばらしい宝物を生んでくれてありがとうございます。抱かせてもらってありがとうございます。たくさん愛情ありがとうございます。
じーちゃん、ばーちゃんに一言。この年でようやく本当の親のありがたみが、わりかけてきました。わたしたちを生んでくれてありがとうございます。いつも暖かく見守ってくれてありがとうございます。

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