A Retrospective Cohort Study of the Cumulative Survival Rate of Obturator Prostheses for Marsupialization
村上 格 鹿児島大学病院 成人系歯科センター 義歯補綴科 |
学会名: 日本補綴歯科学会 |
受賞年月日: 2020年6月21日 |
概要
病巣が大きな良性腫瘍や顎骨嚢胞には開窓術が行われる.術後は開窓部の閉鎖防止に軟膏ガーゼが填塞されるが,衛生面から頻繁な交換が必要であり患者のQOLを低下させる.本研究は,開窓術後患者のQOL向上のため開窓部を効果的に保持する栓塞子を設計し,その撤去に関連する要因を検討したものである.開窓術後に栓塞子を装着した患者100人を対象に,歯の欠損や開窓部位により3種類の栓塞子を設計し装着した.エンドポイントを栓塞子の撤去とし,これに関連する要因として年齢,性別,残存歯数,原疾患と部位,開窓方向,栓塞子の種類,装着日ならびに撤去日を調査し,3種類の栓塞子の生存率と栓塞子の撤去に関連する要因を統計分析した.その結果,3種類の栓塞子における累積生存率に有意差は認められず,良性腫瘍であること,臼歯部の病巣であることならびに頬側方向からの開窓であることが栓塞子の撤去を遅くするリスク要因として同定された.
【本研究の意義・重要性】
栓塞子が効果的に開窓部を保持し,治療成績はその設計に影響を受けないという結果は,開窓術後患者のQOL向上に寄与でき,生体への侵襲の少ない設計を行うべきであることが示された.また,栓塞子の撤去には,原疾患の種類,病巣の前後的な位置ならびに開窓方向を考慮して決定すべきであり,エビデンスに基づいた開窓術の実施や術後管理の指針となることも示された.