生体材料と生理活性物質を応用した in situ 歯周組織再生アプローチに関する研究
白方 良典 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 顎顔面機能再建学講座 歯周病学分野 |
学会名: 第61回秋季日本歯周病学会学術大会 |
受賞年月日: 2018年10月26日 |
概要
歯周病は人類史上、最も有病率の高い感染症で40歳以上の国民の8割が罹患する生活習慣病です。重篤化すると歯の喪失をきたすため、口腔機能の回復・維持さらに健康寿命の延伸のため破壊された歯周組織の再生や歯の保存が極めて重要と考えられます。
近年、生体材料と生理活性物質の応用に加え、体外からの(幹)細胞移植を併用した組織工学アプローチによる組織・器官再生が盛んに試みられています。ただ現在、細胞採取の侵襲・限られた幹細胞数・分化コントロール手法の確立・実用化に関わるコストや時間等の課題が完全に解決されている訳ではありません。
一方、歯周組織には骨髄由来間葉系幹細胞よりはるかに高い増殖能,多分化能を有するとされる歯根膜幹細胞が欠損周囲に元来存在しています。そこで生体外からの細胞移植を行わず、意図的に骨欠損の形態改変を行い創傷治癒の安定化を図り、生体材料や生理活性物質を戦略的かつ選択的に応用することで最大限に宿主細胞の動員と活性化を促すin situ(欠損その場での)組織再生アプローチの可能性を追求し、一定の歯周組織再生が得られることを報告してきました。
【本研究の意義・重要性】
本邦では2016年より生理活性物質の1つである塩基性線維芽細胞増殖因子が世界初の歯周組織再生医薬品として臨床応用が始まり、その効果が期待されています。しかし骨移植術や遮蔽膜を用いたGTR法、さらに他の生理活性物質も世界中で用いられております。一連の研究結果はこれらの種々の歯周組織再生アプローチの治療指針の確立に向けた学術的エビデンスの一端として、また簡便・低侵襲かつ効率的な生体内完結型の新たな歯周組織再生療法の開発に繋がる点で意義深いものと考えられます。