開窓療法後に適用した栓塞子の予後に関するコホート研究

村上 格 鹿児島大学医学部・歯学部附属病院 義歯補綴科・講師

概要

 良性腫瘍や顎骨嚢胞の病巣が大きい場合,開窓療法が行われ,開窓部の保持のために栓塞子が適用される.しかし,その設計と治療成績の関係についての詳細な検討は無く,開窓療法後に適用する栓塞子は病巣が治癒すれば撤去されるため,栓塞子の設計の違いがその撤去までの期間に影響を与える可能性が考えられた.本研究では,開窓療法後に適用した3種類の設計の栓塞子について後ろ向き調査を行い,栓塞子の撤去をアウトカムとし,設計の違いにより撤去までの期間に差があるか調査するとともに栓塞子の撤去に関連する要因を検討することである.

 本院にて良性腫瘍または顎骨嚢胞の診断のもと開窓療法を受け,術後に栓塞子を装着した患者を対象に,歯牙欠損の有無,病巣の前後的位置ならびに開窓方向によって3種類の栓塞子が適用され,栓塞子の種類,装着期間ならびに栓塞子の撤去に関連する要因をカルテ調査し,生存分析を行った.その結果,3種類の栓塞子間における生存率に有意差は認められず,嚢胞であること,前歯部の病巣ならびに咬合面方向からの開窓が栓塞子の撤去に関係する大きな要因として同定された.

【本研究の意義・重要性】

 栓塞子の設計の違いによる生存率に有意差が認められなかった事より,開窓療法後に適用した栓塞子は,設計の違いにかかわらず開窓部を効果的に保持できること,歯牙欠損がない場合は,レストシート形成など生体への侵襲がない設計を選択すべきであることが示唆された.さらに,栓塞子の装着後は,原疾患の種類,病巣の前後的位置ならびに開窓方向に留意して経過観察すべきであることが示唆された.本研究結果が,今後の栓塞子の設計や調整における一助となれば幸いである.

gakkai20160729

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