クレンチング時の脳賦活部位の左右差についての検討

 〜fMRIを用いた研究〜

永山 邦宏 鹿児島大学医学部・歯学部附属病院矯正歯科・助教

概要

 近年、咀嚼や発音等の顎口腔機能に関連する脳賦活部位が明らかになってきているが、咀嚼機能と脳賦活の左右差との関連を調べた報告はほとんどない。そこで、我々はfunctional magnetic resonance imaging(fMRI)を用いて、クレンチング時の咬合力の左右差と脳賦活部位との関連について検討したので報告する。

 被験者は右利きで個性正常咬合を有する成人男性とし、被験者が随意の噛みしめを可及的に強く行っている際にfMRI撮像を行った。脳賦活部位の抽出はSPM 8で行い、個人解析にはt検定(p<0.001)を、集団解析にはANOVAとF検定(P<0.001)を用いた。また、Dental Prescaleを用いて、各被験者の最大咬合力と左右側における咬合力をそれぞれ算出した。左右差は大きい方から小さい方を減じて求め、群間比較はWilcoxon signed-rank test(P<0.05)を用いた。全被験者の脳賦活部位の集団解析においては、過去の報告と一致して、両側の大脳皮質咀嚼野や前帯状回等の賦活が認められた。しかし、各被験者の個人解析においては、咀嚼野が両側とも賦活していた者(両側賦活群)、片側のみ賦活していた者(片側賦活群)および両側とも賦活がなかった者(賦活なし群)が認められた。また、咀嚼野の賦活の減少に伴い、前頭前野背外側部の賦活の増大が認められ、咬合力の左右差は有意に大きくなっていた。

 これらの結果から、左右側での咬合のバランスが、咀嚼野の賦活に影響を及ぼす可能性が示唆された。また、片側賦活群や賦活なし群で認められた前頭前野背外側部の賦活は、咬合力の偏りによる片側への過度な力を抑制するため、咀嚼野の賦活を調節していた可能性が考えられた。

【本研究の意義・重要性】

 四肢の運動や感覚に関しては反対側の大脳皮質が担っているとされ、顎口腔機能と脳賦活部位についてもその関連が研究されてきているが、咀嚼運動時における左右側の大脳皮質咀嚼野の優位性やその調節のメカニズム等については未だ不明な点が多い。そこで、顎口腔機能とその中枢である脳機能との関連が十分に解明できれば、歯・口腔機能の新たな生理学的意義を提唱するだけでなく、顎関節症やブラキシズム等の顎口腔機能障害の原因の特定や根本療法の開発に繋がると考えられる。

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