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 治療から機能回復までの口腔癌一貫診療



診療の特徴

鹿児島大学口腔顎顔面外科は、南九州地区の最終医療機関として口腔癌治療に長年携わってきました。当科開設以来、治療を行ってきた悪性腫瘍患者は500名以上にのぼります。
 当科における口腔癌の治療は、癌の集約治療とその後の高度な機能回復を目指す一貫治療であり、それぞれにおいて専門分野の医師が協力したチーム医療を実践しています。
 口腔癌の治療を受けられる方の多くは、手術を含めた治療の成功はもとより、術後に上手に喋ることができるだろうか?あるいは、元通り、家族と一緒に食卓を囲むことができるだろうか?といった様々な不安を抱えておられます。口腔は口唇や舌など最も身近に目に見えるところであり、摂食・嚥下(食べて飲み込むこと)、味覚(あじを楽しむこと)、言語機能(お喋り)など、ヒトのQOL(生活の質)にとって、とても重要な働きをしています。口腔癌治療では、疾患の部位や程度によって、多少の差はあれ、複雑な機能障害が余儀なくされることがしばしばあります。そこで、当科では、放射線医らとともに癌を根治的に克服する集約的治療に努めるとともに、歯科補綴医(義歯を作成する)、言語聴覚士、看護師らとともに摂食・嚥下チームを編成し、治療前後の機能回復を促し、患者の皆様が安心して治療が受けられるように、様々な方面からサポートを行っています。


診療の内容

集学的口腔癌治療

口腔癌の治療は、主に、1)確定診断、2)病期判定、3)治療方針の立案と治療、4)機能回復、5)定期的フォローアップの手順でなされます。当科における治療手順について、簡単に説明します。 
 

1)確定診断

大部分の例で、局所麻酔のもとに病変の一部分を切り取って、病理医が顕微鏡で評価して、確定診断を下します。口腔癌のほとんどは、扁平上皮癌(口の粘膜上皮の成分が癌化したもの)です。


上皮内にみられる癌(組織像)

2)病期判定

診断が確定したら、治療を開始する前に癌がどこまで進行しているのか、転移があるかないかの検査が必要です。実際には、x線検査、CT検査、MRI検査、超音波検査、PET-CT検査などが行われます。これらの検査は、癌の進行段階(病期)を評価するために必要な検査です。病期とは、癌の進行具合を示すもので、その程度に応じて治療方針が異なってきます。


3D-CT検査によるリンパ節転移の描出

PET検査によるリンパ節転移の同定

参考)

Stage I 癌の大きさが2cm以下で、頸部リンパ節転移がない。
Stage II 癌の大きさが2cmより大きく4cm以下で、頸部リンパ節転移がない。
Stage III 癌の大きさが4cm以上で、頸部リンパ節転移がないか、患側(癌が存在する側)リンパ節転移が1個で3cm以下である。
Stage IVA 癌が骨、皮膚、深部筋肉などに浸潤したもので頸部リンパ節転移がない、または癌の大きさにかかわらず、患側リンパ節転移1個が3cmを越え6cm以下、または2個以上で6cm以下。反対側にリンパ節転移があり6cm未満である。
Stage IVB 癌の大きさに関わらず、リンパ節転移が6cmを越える。
Stage IVC 癌の大きさやリンパ節転移が有る無しに係らず、遠隔転移がある。

3)治療方針の立案と治療

治療方針は発生部位、病期、組織診断、年齢や全身状態を勘案し、患者さんならびに家族の方と相談して決められます。
 口腔癌の治療法は施設によって異なりますが、当科では手術、放射線治療、および化学療法(抗がん剤による治療)が病期に応じて選択されます。基本的に早期の癌では、手術のみで治療効果が期待できますが、進行した場合には、手術前後に放射線治療や化学療法を組み合わせた治療を行う必要があります。また、癌の中には深部に広がり易い性格をしたものなどがありますので、箇々の生物学的な性状も治療の選択に勘案されることがあります。当院では、毎週木曜日に放射線科医などと「腫瘍カンファレンス」を開き、集学的治療の組み合わせや手術方法、それに伴う治療効果の判定、副作用などを検討し、患者さん個人個人に適した治療が受けられるように努めています。

4)当科における口腔癌生存率

当科の癌治療の成績は、他の専門施設と同様に、腫瘍が小さく頚部のリンパ節転移のないものは通常良好ですが、大きい腫瘍や頚部リンパ節転移のあるものは治癒率が悪くなる傾向にあります。当科における過去30年間の口腔癌の各病期別の5年生存率は stageI:約95%、stageII:約85%、stageIII、IV約:80%です。

5)定期的なフォローアップ

癌が現在最も治療の難しい疾患であることの原因は、治療の後に再発や転移が起こる可能性があることであります。当科においては、外来に専門診療班による「腫瘍再来」を設け、術後も定期的に超音波検査やCT検査などで、早期発見、早期治療を実践しています。

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術前術後の機能回復訓練

口腔癌の機能障害は、小さな癌ではほとんど問題になることはありませんが、舌の癌や上下あごの癌などでは、術後に言語や嚥下機能の低下がみられます。適切な治療や機能回復訓練がなされないと、患者さんは、その後の人生を大きな傷害に苦しみながら過ごすことになります。そこで、当科では、歯科補綴医、言語聴覚士、看護師らとともに摂食・嚥下チームを編成し、治療前後の機能回復を促し、患者の皆様が安心して治療が受けられるように、様々な方面からサポートを行っています。
 具体的には毎週1回、摂食・嚥下チームによる回診を行っています。回診では、術前後の機能評価を行い、手術方法や術後の機能訓練に活かされます。術後は、舌や口蓋の動きや嚥下機能を内視鏡検査、造影X線ビデオ検査などで評価し、円滑な摂食・嚥下機能を回復されるための訓練法が個人個人に設定されます。また、言語機能に関しても、熟練した言語聴覚士が、コンピュータを用いた性格な評価、機能訓練を自薦し、少しでも明瞭な言語機能を回復できるように努めています。 


内視鏡による摂食・嚥下評価

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口腔癌治療中の精神的ケア

口腔癌に限らず、癌を告知された場合の患者さんの精神的苦痛は多大なものがあります。痛み、不安、焦りといった精神的苦痛は一人での闘病生活にはとてもつらいものです。そこで、当科では、担当医、看護師とともに鹿児島大学病院の「緩和ケアチーム」が患者の皆様が安心して治療を受けられるように、精神的にサポートいたします。
 私たちは、良い医療を提供する医療者であるとともに、患者さんを支え、応援する良きサポーターであることに勤めとし、皆様が退院されて、再び家族と今までと同様な楽しい生活に戻られることを喜びとしています。

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 口腔癌部門 業績


 原著

1. Kibe T, Kishida M, Kaimo M, Iiima M, Clen L, Habu M, Miyawaki A, Hijioka H, Nakamura N, Kiyono T, Kishida S : Immortalization and characterization of oral epithelial cell lines without using HPV and SV40 genes. Oral Science International 8 : 20-28, 2011.

 2. Miyawaki A, Ikeda R, Hijioka H, Ishida T, Ushiyama M, Nozoe E, Nakamura N: UV max of FDG-PET correlates with the effects of neoadjuvant chemoradiotherapy for oral squamous carcinoma. Oncology Reports 23 : 1205 - 1212, 2010.

 3. Hijioka H, Seoguchi T, Miyawaki A, Gao H, Ishida T, Komiya S, Nakamura N: Upregulation of Notch pathway molecules in oral squamous cell carcinoma. Int J Oncol 36 : 817 - 822 , 2010.

 4. Ushiyama M, Ikeda R, Yamaguchi H, Miyawaki A, Nitta T, Yamaguchi T, Tajitsu Y, Nishizawa Y, himodozono Y, Hijioka H, Furukawa T, Akiyama S, Nakamura N, Takeda Y, Yamada K: Adverse events of superselective intra-arterial infusion chemoterapy in patients with oral cancer. Jounal of Applied Therapeutic Research 7; 58-64, 2009

 5. Ikeda R, Iwashita K, Sumizawa T, Beppu S, Tabata S, Tajitsu Y, Shimosato Y, Yosida K, Furukawa T, Che X, Yamaguchi T, Ushiyama M, Miyawaki A, Takeda Y, Yamamoto M: Hyperosmotic stress up-regulates the expression of major vault protein in SW620 human colon cancer. Experimental cell research 314:3017-26, 2008.

 6. 牛山美奈、池田龍二、新田哲也、田実祐介、宮脇昭彦、山口辰哉、下堂園権洋、牛之濱風見、松井竜太郎、杉原一正、中村典史、山田勝士 : 口腔癌治療時に汎用される院内製剤アズノール含嗽水の安定性と細菌学的検討.歯薬療法 27:143-150、2008.

 症例報告

1. 山口孝二郎、杉原一正、宮脇昭彦、野添悦郎、中村典史:化学骨悪性線維性組織球腫再発に対するサイバーナイフ治療後の慢性神経痛に桂枝加朮附 (TJ-18)湯が有効であった1症例.痛みと漢方21: 87-90, 2011.

 受賞

1. 石田喬之
「低酸素環境下での口腔扁平上皮癌細胞の上皮間葉移行におけるNotchシグナルの意義」
優秀ポスター発表賞 第56回日本口腔外科学会総会・学術大会 (2001, 10/20-22, 大阪)

 2. 比地岡浩志
「口腔扁平上皮癌におけるNotchシグナルの発現とその意義」
優秀発表賞(優秀論文賞) 第62回日本口腔科学会総会・学術集会 (2008, 4/17-18, 福岡)

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