鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 口腔生化学

 研究概要

当分野では、

① 免疫担当細胞のシグナル伝達機構

② 骨組織のメカニカルストレス受容のメカニズム

③ 歯周疾患の発症・増悪に関する分子生物学的機構

以上を三本の柱として、時にはそれぞれをリンクさせながら独創的な研究を行っている。


 研究紹介

● 免疫担当細胞のシグナル伝達機構

① Toll-like receptor(TLR)シグナル伝達機構
   病原体関連分子パターン(PAMP)レセプターであるTLRの発現調節機構およびその下流シグナル伝達機構について研究している。 特にTLR4の下流シグナル伝達分子として、Cot/Tpl2(MAPキナーゼ上流活性化キナーゼ)、DUSP16(aka MKP-M/MKP7、JNK特異的フォスファターゼ)(Mol Cell Biol, 21: 6999-7009, 2001)、 JIP3(JNKの足場タンパク)(EMBO J, 22, 4455-4464, 2003)等のシグナル分子の生理的意義について解析を進めている。

② 抗原特異的免疫分子機構
   CD4陽性ヘルパーT細胞の抗原刺激後の分化様式(Th1、Th2、Th17、iTreg)は抗原特異的免疫応答の性質を決定する重要な機構であるが、分化様式を規定する細胞内シグナル伝達機構の詳細は不明である。 Th1/Th2分化に関わる新たなシグナル伝達分子として、抗原提示細胞におけるCot/Tpl2分子(J Clin Invest, 114: 857-866, 2004)、T細胞におけるDUSP16(J Biol Chem, 286: 24896-24905, 2011)を同定し、 それぞれの分子メカニズムについて研究を継続している。

③ マスト細胞の病原体認識機構
   I型アレルギーの主体とされるマスト細胞は、実は生体防御の第一線で病原体駆除に働く。マスト細胞に発現するTLRの機能解析を中心に、マスト細胞による病原体認識機構の解析を行っている(Biochem Biophys Res Commun, 402: 1-6, 2010, J Cell Physiol, 213: 126-136, 2007)。


● 骨芽細胞分化に関わるシグナル伝達分子の同定および硬組織の形成・再生機構

 高齢化社会において骨粗鬆症患者の増加など、骨代謝制御機構の解明は急務となっている。骨芽細胞は骨マトリックスの産生細胞であると同時に破骨細胞の分化・活性化制御を行い、骨代謝制御の中心的細胞である。 我々は、JNK(J Bone Miner Res, 24: 398-410, 2009)とAMPK(J Cell Physiol, 221: 740-749, 2009)の2つのキナーゼを新たな骨芽細胞機能の重要な調節分子として同定し、骨疾患における治療標的分子としての可能性について解析を続けている。


● 骨組織のメカニカル・ストレス受容のメカニズム

  骨は古くからメカニカル・ストレスに反応する組織として知られているが、その分子メカニズムは不明な点が多い。当分野では骨芽細胞のメカニカル・ストレス受容の分子メカニズムの解析を行っている(一部は帝人ファーマよりの受託研究として行われていた)。 また、近年“骨免疫学”と称される骨代謝と免疫系の相互関係が注目を集めているが、当分野でも骨代謝に影響を与える免疫系のシグナルについて解明を進めている。また、メカニカル・ストレスのシグナルと免疫シグナルに共通したシグナル経路に着眼した研究を行っている(J Cell Physiol, 211: 392-398, 2007)。


● 歯周疾患の発症・増悪に関する分子生物学的機構

  歯周疾患は細菌感染により引き起こされるが、当分野では免疫シグナル分子のノックアウトマウスに歯周炎を発症させ、歯周疾患の分子生物学的機構を解析している(J Dent Res, 89: 192-197, 2010)。 また、全身疾患と歯周病の関係を解明すべく、2型糖尿病モデルマウスを使った研究も行っている。


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