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Dry mouth and denture plaque microflora in complete denture and palatal obturator prosthesis wears

村上 格 鹿児島大学医学部・歯学部附属病院 義歯補綴科・講師

概要

 本研究は,顎義歯装着患者と全部床義歯装着患者を対象に舌粘膜の水分量を口腔水分計で計測し,口腔乾燥を診断した.滅菌綿棒を用い義歯床粘膜面のデンチャープラ-クを採取し,心内膜炎,日和見感染症および誤嚥性肺炎の起因菌を対象に培養を行い同定と定量を行った.定量された細菌数を合算した総菌数と各菌の検出率を補綴装置の違いならびに口腔乾燥の有無で比較した.その結果,顎義歯からのカンジダ属とブドウ球菌属の検出率は,全部床義歯のそれと比べ有意に高かった.顎義歯装着患者では,口腔乾燥の有無による総菌数に有意差は認められなかったが,口腔乾燥群におけるカンジダ属とブドウ球菌属の検出率は,正常群と比べ有意に高かった.顎義歯装着患者におけるカンジダ属とブドウ球菌属の菌数は舌粘膜の水分量と有意に負の相関を,ナイセリア属の菌数は有意に正の相関を認めた.全部床義歯装着患者と比べ口腔乾燥を有する顎義歯装着患者はカンジダ属とブドウ球菌属が多く検出されることから,感染症予防のうえで義歯の十分な清掃や管理を行う重要性が示唆された.

【本研究の意義・重要性】

 顎義歯装着患者の全身感染症予防の観点から顎義歯装着患者において多く認められる口腔乾燥とデンチャープラークとの関係を調査した本研究により,口腔水分量の低下した口腔乾燥状態では,義歯床粘膜面の総菌数は変化しないが,義歯床粘膜面における細菌叢が変化し,誤嚥性肺炎の起因菌であるカンジダ属やブドウ球菌属などが増加することが明らかになった.これらの結果より,顎義歯装着患者に対する適切な口腔乾燥の診断や対応ならびに顎義歯に対する十分な清掃や管理を行う重要性が示唆された.今後,高齢化の進行に伴い口腔癌罹患患者や口腔乾燥患者がますます増加することが予想されるため,本研究結果が義歯患者のQOL向上や全身感染症予防の一助となれば幸いです.

gakkai20160730

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