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The S-layer of Tannerella forsythia contributes to serum resistance and oral bacterial co-aggregation

下田平 直大 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 顎顔面機能再建学講座 口腔顎顔面補綴学分野・助教

概要

【目的】

歯周病原因細菌の一つである Tannerella forsythia (T. forsythia) は、菌体の最外層にTfsAとTfsBという2つの糖タンパクより構成されるsurface layer (S-layer) が存在しており、その病原性として、歯肉上皮細胞への付着・侵入能や炎症性サイトカイン産生の抑制が報告されていますが、S-layer と宿主免疫系との関係性及び口腔内細菌との共凝集への関連は解明されていません。本研究は、T. forsythia の S-layer との新規の病原性として、宿主免疫力抵抗性と口腔内細菌との共凝集性についての関係性を明らかにする初めての研究となります。

【材料および方法】

T. forsythia S-layerの血清抵抗性への関与及び他の口腔内細菌に対しての共凝集への関与を T. forsythia S-layer 欠損株を用いて証明しました。血清抵抗性に関する検討として、20%以上の非熱処理ウシ血清や40%以上の非熱処理ヒト血清を含む培養液中にて増殖能について検討しました。その結果、S-layer 欠損株は野生株に比べ有意に低い増殖性を認めましたが、非働化した血清を含む培養液中では、S-layer 欠損株と野生株では有意な差を認めませんでした。次に S-layer 欠損株及び野生株を血清処理した際の生死を共焦点レーザー顕微鏡及び電子顕微鏡により確認しました。S-layer 欠損株のウシ血清中の生存率は76%と野生株の97%と比べ低い値を示しました。S-layer 欠損株が、血清に低感受性を示すことから、S-layer が補体の活性化を阻害すると考え、S-layer 欠損株及び野生株について、補体が活性化した際に認められる C3b の菌体表層への沈着を解析しました。その結果、S-layer 欠損株において野生株では認められかった補体因子の C3b の菌体表層における沈着を確認しました。T. forsythia と他の口腔内細菌との共凝集性について、T. forsythia 野生株は Streptococcus sanguinisS. salivariusPorphyromonas gingivalis 及びFusobacterum nucleatum に対する共凝集を認めました。しかし、S-layer 欠損株は S. sanguinisS. salivarius 及び P. gingivalis に対する共凝集を失いました。しかしながら、S-layer欠損株と Fusobacterum nucleatum は、野生株よりも強い共凝集能を認めました。

【結果および考察】

これらの結果から、S-layer は T. forsythia の血清(補体)抵抗性及び共凝集性に関与することが新たに示唆されました。本研究により S-layer の宿主免疫力に対する抵抗性の関与、口腔内細菌と共凝集性を維持することにより、T. forsythia がプラーク形成促進や口腔内定着に関与することによる歯周病発症の解析につながると考えます。

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