• 鹿児島大学HP
  • 交通アクセス
  • 総合入試案内

睡眠時ブラキシズムに対するプロトンポンプ阻害剤の治療効果の検討:
プラセボ対照二重盲検クロスオーバー比較試験

兼松 恭子 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 発生発達成育学講座 歯科矯正学分野

【概要】

 睡眠時ブラキシズム(以下SB)は睡眠中に無意識下で歯ぎしりや噛みしめ等をする運動の総称で、歯の咬耗や破折等の様々な問題を引き起こすが、効果が立証された治療法は未だ無い。我々はこれまでSBと胃食道逆流(GER)の両者に有意な関連性を認め、実験的な食道内酸刺激によってSBが誘発されることを明らかにした。そこで今回、胃食道逆流症の治療薬であるプロトンポンプ阻害剤(以下、PPI)をSB患者に投与し、SBに対するPPIの治療効果を検討することとした。

 まず、SBの研究用診断基準で診断されたSB患者12名(男性7名、女性5名、平均年齢30.3歳)に対しFSSG問診票による消化器症状の評価と内視鏡検査による上部消化管の精査を行った。その後、ラベプラゾール10mg/日(以下、PPI群)またはプラセボ(以下プラセボ群)の経口投与によるランダム化クロスオーバー試験を行った。投薬期間は5日間とし、5日目の夜に咬筋筋電図を含む睡眠ポリグラフ(PSG)検査を行った。PSG検査より、咬筋筋電図のバースト頻度および総活動量、SBエピソードの頻度を求め、2群を比較した。

 術前の消化器症状はFSSGの平均スコアは7.9点で、消化器症状から胃食道逆流症と診断される8点以上のスコアを示すものが5名認められた。内視鏡検査で逆流性食道炎と診断されたものが12名中9名、胃食道逆流と関連する食道裂孔ヘルニアは2名に認められた。PSG検査の結果からPPI群はプラセボ群と比べて、咬筋筋電図のバースト頻度および総活動量が有意に減少し、総じてSBは減少する傾向が認められた。本研究の結果からPPIはSBに対して有意な治療効果を示すことが示唆された。

【本研究の意義・重要性】

 本研究結果は、これまで根本的な治療法が確立されていなかったSBに対して、PPI投与が効果的な治療法の一つであることを証明するもので、本研究により、今後SBに対する治療法の一つとして消化器内科的視点からアプローチしていく一助となると考えられる。

 

pagetop

PCサイト表示