顎骨骨髄炎、薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)、放射線性顎骨壊死(医療従事者・学生さん向け)
疾患について
顎骨骨髄炎は、感染が骨髄まで波及して発症した顎骨内の炎症である。その中でも、薬剤に起因した薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)や頭頚部の放射線治療に起因した放射線性顎骨壊死に遭遇する機会が多い。いったん発生すると時間と共に進行することが多く、疼痛等により患者のQOLの低下を来たし、治療に難渋する事もある。
原因
顎骨骨髄炎は主にう蝕に継発する歯性感染症で、智歯周囲炎や抜歯後感染、外傷後の顎骨の感染等で発症頻度が高い。起因菌は口腔内細菌で、局所の感染から顎骨骨髄の循環不全が生じて酸素供給が欠乏し、発症するとされている。
MRONJは、悪性腫瘍や骨粗しょう症を有する患者が骨吸収抑制薬(ビスホスホネート製剤や抗RANKL抗体製剤)、血管新生阻害薬を使用している際に生じる稀な合併症とされている。
放射線性顎骨壊死は頭頚部の放射線治療における晩期有害事象であり、放射線による細胞傷害によって顎骨に低酸素・低血流の状態が不可逆的に発生し、脆弱な組織に変化し発症する。
MRONJや放射線性顎骨壊死は、抜歯などの侵襲的歯科処置や不適合義歯、口腔衛生不良、歯周病や齲歯などの感染巣を起因とする事が多いが、自然に発生する事もある。
症状
局所の疼痛や歯肉腫脹、排膿、歯肉の瘻孔形成、外歯瘻形成、骨露出、知覚異常、病的骨折を起こし、機能障害(開口障害)や菌血症に繋がることがある。


検査・診断
主に以下の項目を評価する。
画像検査 | パノラマX線:骨吸収、骨硬化像、抜歯窩残存、腐骨形成、歯根膜腔、歯槽硬線 CT:骨融解、皮質骨の断裂、腐骨の程度、骨硬化状態および範囲、骨膜反応の有無 MRI:内部骨髄信号、周囲軟組織の炎症波及範囲 核医学検査:顎骨内の集積 |
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血液検査 | 炎症反応の確認 |
病理組織検査 | 転移性骨腫瘍や顎骨腫瘍との鑑別 |


治療
主に保存治療(局所洗浄、抗菌薬投与)、外科治療(壊死骨+周囲骨切除、顎骨区域切除、など)に分けられる。補助療法(高気圧酸素療法)を追加する事もある。顎骨区域切除を行う場合は、プレートや皮弁による再建術の適応となる事がある。MRONJでは、保存治療と比較し早期の外科治療の方が高い治癒率を示すことが報告されており、外科治療の有効性が示されている。


